欧州で唯一の大気圏外ミサイル迎撃システム、ドイツ保有の「アロー3」 [写真 ドイツ国防省]
(1)欧州、大気圏外弾道ミサイル迎撃システムの開発に着手
オランダのデスティヌスなど欧州の防衛産業界が、大気圏外で弾道ミサイルを直接衝突(Hit-to-kill)方式で迎撃する次世代迎撃システム「ブリクセンEXO」の開発に着手した。EXOは大気圏外を意味する英語の「Exo-atmospheric」に由来する。ブリクセンEXOは、米ミサイル防衛局(MDA)の分類基準に基づき、射程1000~3000キロの準中距離弾道ミサイル(MRBM)や、射程3000~5500キロの中距離弾道ミサイル(IRBM)を迎撃できるよう設計される。
今回の事業はウクライナ戦争を契機に浮き彫りとなった欧州のミサイル防衛の空白を埋めるためのものであり、米国への依存度を減らして独自の上層防衛能力を確保するための戦略的転換点になると評価されている。この事業にはエアバス・ディフェンス・アンド・スペース、MBDAドイツ、タレス、サフラン・エレクトロニクス&ディフェンス、そしてオランダの新興防衛企業デスティヌスが参加する。各社は「ブリクセンEXOコンソーシアム」の結成に向けた意向書(LOI)を締結していて、2027年に宇宙環境での迎撃体試験を実施することを目標に開発を推進する。
ブリクセンEXOは爆発性の弾頭の代わりに運動エネルギーによって目標物を破壊する「ヒット・トゥ・キル(直接衝突方式)」を採用した。ロシアが実戦配備を進めている中距離弾道ミサイル「オレシュニク(Oreshnik)」のように分離型弾頭や機動型再突入体(MaRV)を使用する最新の脅威までも対応対象に設定した。
今回の事業は単なる兵器開発を越えて「欧州の戦略的自立」を象徴している。これまで欧州諸国はパトリオットやSM-3など米国製ミサイル防衛システムに大きく依存してきたが、ウクライナ戦争以降、長距離弾道ミサイルの脅威が急増したことで、独自の「上層防衛網」を構築する必要性が高まった。ブリクセンEXOはNATO(北大西洋条約機構)統合防空・ミサイル防衛システム(IAMD)および欧州スカイシールド・イニシアチブ(ESSI)と完全な相互運用性を持つように設計され、従来の防空システムを補完する役割を果たす予定だ。
コンソーシアムを主導するデスティヌスが宇宙飛行体と迎撃体の開発を担い、従来の大手防衛企業がレーダーやシーカー、迎撃ミサイルなどの核心技術を分担する構造も注目される。これは欧州が大手企業と防衛スタートアップを結びつけ、次世代の防衛産業生態系を構築しようとする新たな協力モデルを示している。
もちろん、まだ資金調達や量産計画は確定していないものの、ブリクセンEXOは「欧州初の独自宇宙基盤の上層弾道ミサイル迎撃システム」という点で大きな意味を持つ。ロシアの高度化するミサイル脅威と、米国の防衛費負担増要求が重なる中、今回の事業は欧州の防衛産業が「戦略的自律性」を実質的な兵器システムとして具現化するための最初の試験になるとみられる。
(2)欧州9カ国とウクライナ、弾道ミサイル防衛同盟
欧州がこれまで依存してきた米国製パトリオット弾道ミサイル防衛システムから脱却し、独自の防衛能力の確保に乗り出した。英国政府によると、英国、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、スペインの欧州9カ国とウクライナは7月13日(現地時間)、仏パリで「統合弾道ミサイル防衛連合」創設に向けた共同宣言に署名した。今回の連合はロシアの弾道ミサイルの脅威に対抗するための共同研究・開発および運用システムの構築を目標とし、欧州の防衛産業における「戦略的自律性」を強化する新たな里程標になると評価されている。
同連合の核心事業はFP-7.x「フレイヤ」迎撃システムの開発だ。フレイヤはウクライナのファイアポイント社が戦場で蓄積した実戦経験に基づいて設計した新たな弾道ミサイル迎撃システムだ。従来の米国製パトリオットよりも安価でありながら大量生産が可能という点が大きな特徴だ。開発目標は、わずか12カ月以内に試作機(プロトタイプ)の飛行試験を実施することであり、ウクライナの緊急な作戦要求を反映して開発スピードを大幅に引き上げた。迎撃ミサイルの価格についても従来のパトリオットPAC-3 MSEより大幅に抑え、経済性を確保するのが目標だ。
今回の連合が注目されている理由は、ウクライナが単なる支援対象ではなく共同開発の核心的なパートナーという点だ。ロシアの「イスカンデル」や「キンジャール」「オレシニク」など多様な弾道ミサイル攻撃を数年間にわたり実戦で経験してきたウクライナは、世界で最も多くの実際の迎撃データを保有している。参加国はこうした戦場での経験を欧州の防衛企業の技術力と結びつけて新たな迎撃システムを共同開発し、将来的には欧州全域で運用可能な統合防御網へと発展させていくという構想だ。共同宣言には、共通作戦要求(ORD)作成、技術作業班構成、産業協力拡大、段階的戦力化日程などの内容も盛り込まれた。
今回の発表は、先日公開された宇宙基盤の迎撃システム「ブリクセンEXO」の開発計画とも関連している。フレイヤが相対的に低コストの終末段階または上層迎撃システムを担うのに対し、ブリクセンEXOは大気圏外で直接衝突方式により弾道ミサイルを撃墜する、より上位概念の防衛システムだ。これは、欧州が単一の兵器システムではなく、多層防衛システムを独自に構築する方向へと戦略を転換していることを示している。
一方、トランプ米大統領はトルコのアンカラで開催されたNATO(北大西洋条約機構)首脳会議で、ウクライナのゼレンスキー大統領に対し、パトリオットミサイルの独自生産に関する許可を出すと約束した。しかしこの内容は製造元のロッキード・マーティン社にも通知されず、ミサイルシステムを構成するボーイング社など他の米国企業との関係も考慮されていなかった。米国の国防専門メディア「ディフェンスニュース」は、複数の理由からウクライナが実際にミサイルを製造するまでには数年を要するという見方を示した。
【ミリタリーブリーフィング】「米国の影から抜け出そう」…独自の防空網を構築する欧州(2)
この記事を読んで…