2025年5月16日、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビの大統領宮殿カスル・アル・ワタンで開かれたビジネスフォーラムで発言するドナルド・トランプ米大統領。左から3人目はG42の彭暁CEO。[ロイター=聯合ニュース]
ギャノン氏はこの時から、G42の対中関係を調査する一方で、米国が問題視している点をタフヌーン氏と彭暁氏に伝えた。説明とは異なる状況が確認されれば、静かに知らせて是正する機会も与えた。監視する側が、監視結果を監視対象に伝えた。WSJは「その後、G42はデータセンターや従業員を米国側に公開し、1億5000万ドル相当のファーウェイ製機器を撤去した」とし、「外部監査人も起用した」と伝えた。
G42が要求を受け入れた背景には、ギャノン氏の全方位的な働きかけだけでなく、徹底した損得勘定もあった。UAEには資本、電力、用地はあるものの、最先端半導体や世界規模のクラウドネットワークはない。ブラックリスト入りすれば、世界的なAI企業となる構想の実現は難しかった。一方で、米国陣営に加わる見返りも大きかった。マイクロソフト(MS)は2024年4月、ファーウェイ製機器の撤去費用の10倍に当たる15億ドルをG42に投資した。ホワイトハウス当局者は「G42にファーウェイとの関係を断たせたという点で前向きな成果だ」と評価した。
◇米中の間で「スイングステート」となったUAE
その後、G42は米国側へとかじを切った。2024年6月、彭暁氏は当時開発中だった中国企業ディープシークのAI技術に言及し、「G42を米国陣営に取り込まなければ、中国AIが米国の優位性を脅かすことになる」と警告した。その後、彭暁氏を中国の代理人とみる疑念は次第に薄れていった。
7カ月後の昨年1月、ディープシークのAIモデルが公開されると、彭暁氏の警告は現実のものとなった。同月、バイデン政権は、UAEが条件付きでエヌビディアの先端半導体の供給を受けられる枠組みを整えた。第2次トランプ政権の発足後は、その動きがさらに加速した。昨年5月には、アブダビにUAE・米国AIキャンパスを建設する計画が発表された。このキャンパスには、オープンAI、オラクル、エヌビディアなどが参加する「スターゲートUAE」が設けられる。キャンパス全体が完成すれば、米国外で最大のAIハブとなる。
また、米商務省は今月10日、UAEを輸出規制の優遇グループへ格上げした。UAEが米軍の対イラン戦争を支援したことが理由だ。これにより、G42は来年4月6日まで、先端AI半導体について案件ごとの輸出許可を受けることなく供給を受けられるようになった。
WSJは、UAEが米中いずれの側にも傾き得る「地政学的スイングステート」であるため、米国が力を注いだと分析した。UAEは莫大な国富とエネルギー資源を有するうえ、地政学的にも中東、アフリカ、南アジアへAIサービスを提供する拠点として有利な位置にある。UAEを中国側に奪われれば、この地域のAIインフラが中国の技術で埋め尽くされる可能性があるという意味だ。
この過程に関与した元政府高官らは、その後、米企業とUAEを結ぶ役割へと転じた。WSJは「バイデン政権で中東政策を統括したブレット・マクガーク元ホワイトハウス国家安全保障会議(NSC)中東・北アフリカ調整官は、現在、スターゲートUAE参加企業であるシスコの顧問を務めている」とし、「その影響力は大きい」と評価した。
米中AI覇権競争で「コーチ役」となった情報機関…米CIAのUAE作戦、3年の内幕(1)
この記事を読んで…