2026年6月、中国のAI業界は歴史を塗り換えた。約1兆円、中国AI史上単一ラウンド最大規模の投資誘致だ。[バイドゥ キャプチャー]
ディープシークは今回510億元(約1兆2186億円)規模の外部投資誘致により企業価値は一気に4000億元と評価された。世界的基準でもオープンAIとアンソロピックの一部ラウンドを除けば類例を探し難い。
◇中国主要ビッグテックがディープシークにベッティング
まず投資家の面々が目を引く。創業者梁文鋒が個人資金200億元を投じて最大単一出資者となった。株式を売って現金化するのではなく、自分の資金をさらに投じたのだ。テンセントが約100億元を投資して最大の外部投資家になった。世界最大の電気自動車バッテリー企業CATL(寧徳時代)は50億元を投じた。バッテリー会社がAI企業に50億元を投資したのはAIデータセンターの莫大な電力消費とエネルギー貯蔵ソリューション間の戦略的連係を狙った布石とみられる。政府次元で国家AI産業投資基金は約9億8000万元を出資した。
注目すべき点は取引構造だ。テンセントやCATLなど多くの外部投資家は議決権を得ることができなかった。5年間は株式売却も不可能だ。投資家の後にある有限合弁会社(LP)に対する身元照会も義務化した。唯一の例外は国家AI産業投資基金で、株式を取得して議決権も与えられた。510億元を熱めながらも経営権は少しも渡さなかった設計だ。梁文鋒個人が議決権100%を維持する。
◇ディープシークはなぜ原則を破ったのか
今回の投資誘致の背景は現実的側面が大きい。ディープシークは2025年下半期から核心研究陣が相次いで流出した。R1モデルの核心研究者郭達雅はバイトダンスへ、LLM核心著者王炳宣はテンセントへ、初期メンバーの1人である羅福莉はシャオミAI研究所へそれぞれ移った。競合会社の企業価値が沸き上がりディープシークのストックオプションが魅力を失った。アルゴリズム競争だけでなく人材戦争でも勝ち抜かなければならなかった。
インフラ費用も臨界点に達した。ファーウェイアセンドチップに転換する過程で学習費用が5億ドル(約811億円)まで沸き上がった。競争構図も変わった。智譜AIが香港取引所に上場し時価総額1兆香港ドル(約2兆円)を突破し、ミニマックスの企業価値も1300億香港ドルを超えた。AI技術競争が資本軍備競争に変わった。投資を受けなければ淘汰されるという計算が「3不の原則」をひっくり返した。
技術面でも転換点を迎えている。ディープシークは6月27日の北京大学と共同でDSpark推論加速フレームワークを発表した。V4Flashモデルの推論速度は60~85%、V4Proは57~78%向上した。7月中旬発売予定のV4正式版は100万トークンコンテクストを支援しピーク時間帯API価格を2倍に上げる料金制を導入する。無料で使われてきたディープシークが有料化を準備するという話だ。
ディープシークV4はファーウェイアセンド950PR推論チップで全面駆動が可能だ。基盤コードをエヌビディアCUDAからファーウェイCANNフレームワークに完全に移した。エヌビディアがなくても世界水準のAIモデルを稼働できるということを証明した形だ。ディープシーク級の会社がやり遂げたということは他の中国AI企業に移転マニュアルができたという意味でもある。モデル(ディープシーク)、チップ(ファーウェイアセンド)とソフトウエア(CANN)が初めてひとつの完結した国産チェーンにつながった。中国AIスタックの垂直自立を意味する。
資金が入れば構図が変わる。理想主義は資本の前で現実になる。ディープシークは10兆ウォンを得たが、経営権を守りエヌビディアがなくても3階級のモデルを回すのに成功した。米国の封鎖が長引くほど中国のAIはその圧力を燃料にして自立の速度を速めている。ディープシークは果たして今回の資金調達を通じて中国AIの未来を塗り換えられるだろうか。
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