パリ五輪の男子100メートル銅メダリスト、米国のフレッド・カーリー。今月、米国で開催される「エンハンストゲームズ」に出場する。薬物を使用して出場してもよい「ドーピング五輪」だ。[AP=聯合ニュース]
エンハンストゲームズは「人間の限界を突破する新たなグローバルスポーツ」と定義づけ、「完璧な管理の下、科学とイノベーションを通じて競技力を増強させ、伝統的なスポーツに挑戦する」と主張した。アスリートの卓越性に対する報酬、科学的イノベーション、人間の可能性への挑戦などがスローガンだ。
2012年ロンドン夏季オリンピック(五輪)の男子競泳100メートル自由形銀メダルなど五輪メダルを3つ獲得したオーストラリアのジェームズ・マグヌッセン、2024年パリ五輪の男子競泳50メートル自由形で銀メダルを獲得したベン・プラウド(英国)、2020年東京五輪の男子陸上100メートル銀メダリストのフレッド・カーリー(米国)など出場選手は約40人にのぼる。観客は招待された2500人だけが入場できる。主催者側は出場手当と世界記録達成時の賞金100万ドル(約1億6000万円)で世界トップクラスの選手を誘惑した。選手への報酬総額は2500万ドル。
選手らは今年2月から16週間、アブダビに集まってキャンプを行い、病院の健診を通して「増強処方」を受けた。世界反ドーピング機関(WADA)は徹底的に禁止しているがエンハンストゲームズでは許される薬物が各自に提供されたのだ。英BBCは彼らがどのような薬物を服用したかは不明だが、テストステロン、ステロイド、覚醒剤などが含まれているはずと報じた。主催者側は「米食品医薬品局(FDA)の承認を受けた薬物であり、厳格な医療監督のもとで投与・管理している」と強調した。
国際オリンピック委員会(IOC)とWADAは昨年「非道徳的かつ危険であり、無責任だ」とエンハンストゲームズを強く批判した。世界陸上連盟のセバスチャン・コー会長は「大会参加者は愚か者だ」とし、出場者への処分を予告した。世界水泳連盟は会員の大会参加を禁止した。エンハンストゲームズはこの措置に対して訴訟を起こしたが、米連邦裁判所は競技団体側の手を挙げた。
公正な肉体的競争のために国際スポーツ界は数十年間にわたり薬物との戦争を続けてきた。公正性を損なう薬物使用はスポーツの存在意義を根底から揺るがすと見なされてきた。しかしエンハンストゲームズ支持勢力はドーピングとの戦争は費用がかかるだけで効果がなく、ドーピングを隠蔽するための様々な試みがむしろ選手の健康をさらに悪化させていると反論する。管理された方法で薬物を容認する方が望ましいという主張だ。
エンハンストゲームズがバイオ産業はもちろん人類の進歩に寄与するという主張もある。エンハンストゲームズを後援するある企業は個人向けサプリメントを発売し、「ホルモン補充療法とペプチドを活用することで健康増進と減量に効果がある」と宣伝した。
エンハンストゲームズの共同創設者であるドイツ人投資家クリスティアン・アンガーマイヤー氏は「エンハンストゲームズを見ると、消費者はそれを自分たちの生活にも取り入れることになるだろう」と話した。テック企業パランティアの創設者で効率を極限まで重視する億万長者のピーター・ティール氏、ドナルド・トランプ大統領の長男ドナルド・トランプ・ジュニア氏らも後援者だ。
薬物服用後に肉体が大きくバルクアップした動画をSNSに投稿して話題となったマグヌッセン氏は「副作用の兆候はない」と伝えた。マグヌッセン氏は「週に30時間トレーニングをすることは身体能力を向上させるが、健康には良くない。身体能力を極限まで高めるのもそれと同じではないか」と抗弁した。
韓国体育大学のキム・ホンシク教授は「エンハンストゲームズに賛同したくはない。しかしこの大会を非難する根拠を見つけるのも難しい。人間の欲望や資本の追求により、こうした流れはさらに爆発的に拡大する可能性がある」とし「IOCが危機として受け止めるのも無理はない」と話した。
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