サウジアラビアのラス・アル・ハイマ産業団地にある淡水化プラント複合施設の全景。[写真 ダール・エンジニアリング公式サイト キャプチャー]
国連大学水・環境・健康研究所(UNU INWEH、国連傘下機関)が今年初めに発表した報告書「Global Water Bankruptcy(世界の水破産)」によると、全世界の水関連の紛争は2010年の20件から2024年には400件以上に急増した。水の価値は高騰している。世界自然保護基金(WWF)は「現在、水と淡水生態系の価値は58兆ドル(約9120兆円)で、全世界のGDPの約60%を占めるが、その比重は高まり続けている」と明らかにした。先端技術に国家の命運がかかる時代に、最も基本的な資源である水が戦略・安保上の変数へと格上げされたのだ。
◇水紛争の背景には気候危機
紛争が増えた背景には、気候危機による水不足がある。氷河が溶け、深刻な干ばつと豪雨が交互に発生することが増え、世界人口の75%が水不足に苦しんでいる。チリツィ・マルワラ国連事務次長は「水不足が移住や紛争の主な原因」と説明する。
水が不足している地域では、水がそのまま武器となる。イランが湾岸諸国の淡水化施設をターゲットにしたのも、この地域の人口の80%が水ストレスを抱えるほど水資源が貴重だからだ。特に湾岸協力会議(GCC)6カ国は、全世界の海水淡水化容量の約60%を占める。クウェートは飲料水の90%、オマーンは86%、サウジアラビアは70%を淡水化施設に頼っている。米中央情報局(CIA)は1980年代から、こうしたインフラへの攻撃を指摘してきた。気候変動で地下水の水質が悪化し、淡水インフラへの依存度が高まる中で、「水戦争が数百万人の生活基盤を即座に脅かすだろう」(ニューヨーク・タイムズ)という警告まで出ている。
一方、イランは川やダムが多く、相対的に淡水化インフラへの依存度が低い。6年間続いた極度の干ばつで反政府デモまで経験したイランが、水の戦略的価値を誰よりも熟知しているという点も「蛇口」を脅かす要因となった。3月にイランとバーレーンがそれぞれ淡水化施設の一部に攻撃を受けたが、バーレーンの方がより大きな恐怖に震えたのはこのためだ。今回の戦争をすぐ隣で見守っているトルコ(トゥルキエ)のレジェップ・タイップ・エルドアン大統領は先月の演説で、「次の戦争は『水戦争』になるだろう」と公然と懸念を示した。
◇地政学的不安定性が増し紛争を刺激
世界各地で地政学的な不安定性が増していることも、関連する紛争を刺激している。強大国が周辺国を圧迫する道具として水資源を活用しているからだ。中国が東南アジアの母なる川であるメコン川の上流にダムを大量に建設し、これらの国々を揺さぶるような形だ。タイやベトナムなどは国力で相手にならず、下流に位置しているため、なす術もなくやられるしかない構造だ。
最近では長年の宿敵であるインドとパキスタンが衝突した。先月24日、パキスタンはインドが水資源を武器化しているとして、国連安全保障理事会(安保理)に介入を要請した。「インドが水に関する強圧的な措置を控えるよう促す」としながらだ。
発端は昨年4月だった。インド・カシミール地方でパキスタンのイスラム極端主義者による銃器テロで26人が死亡すると、インド政府はヒマラヤを源流として自国北部を通りパキスタンへ流れるチェナブ川(インダス川の支流)の航路を遮断した。その後もダムに水を貯めたり大量放流したりする方法でパキスタンを圧迫した。パキスタン側は、水資源を公正に分配することにした「インダス川条約」に違反していると批判したが、人口・経済・軍事力などで圧倒的に国力が強いインドが上流を抑えて揺さぶると、国際社会に助けを求めた。
フォーリン・ポリシー(Foreign Policy、FP)は「カシミール紛争以降、両国関係が悪化し、インドが水を共有資源ではなく『戦略資産』と認識するようになった」とし、「水力発電を名目に水資源を地政学的な道具にしている」と指摘した。
水だと思って甘く見るな…石油より恐ろしい「ウォーター・ウォー」(2)
この記事を読んで…