先月21日午後、ソウル上岩洞の中央日報社屋で中央日報のインタビューに応じた李世乭(イ・セドル)九段は「抽象戦略ゲームの囲碁の教育的価値はAI時代にさらに高まるだろう」と話した。 カン・ジョンヒョン記者
先月21日、ソウル上岩洞(サンアムドン)の中央日報で会った李世乭九段は「(アルファ碁との対局以降)このようにAIに備えないまま過ごした時間が本当に惜しい」と話した。2019年に引退した李九段はその後、囲碁のルールを取り入れたボードゲームを作り、蔚山(ウルサン)科学技術院(UNIST)の特任教授として学生を教えるなど、さまざまな活動を続けている。最近、学生たちからよく受けるこの質問は李九段に10年前のあの日のことを思い出させる。「教授、AI時代にはいったい何をすればいいのですか」。
--最近の学生たちはどのような印象か。
方向性が比較的明確な課題は本当にうまくするが、抽象的な思考能力がかなり落ちるという感じだ。当然だろう。この世代はスマートフォンを握って育ち、幼い時期にAIに接した。何もない状態から長く考えて決定する過程を経験していない。アイロニーだが、このような時であるほど囲碁の価値は高まるという気がする。
--なぜか。
囲碁は決められた答えがない状態で道を作っていく唯一無二の抽象戦略ゲームだ。今の世代には戦略的思考を育てる最高の教育的道具になる。ルールに慣れるまで時間が長くかかり難しい点がある。時代の変化像を見ると、慣れ親しんでいるゲームではない。そうであるだけにさらに必要だ。
--プロ囲碁はアルファ碁が登場して以降、大きく変わっていないのか。
以前にも曺薫鉉(チョ・フンヒョン)、李昌鎬(イ・チャンホ)ら大家の棋風が時代ごとに流行したが、みんな自分の布石を研究した。ところがAIが入ってきて以降、プロ騎士は研究でなくAI棋譜を正答として覚える勉強をし始めた。現在、申真諝(シン・ジンソ)九段が本当に優秀だが、個人的にはプロ囲碁界が大衆に「AIでこれほど人間の思考力が拡張されるのか」という刺激を与えてほしい。
10年前、世界の人々が注目する中でアルファ碁と対局した李九段は連敗の後、第4局で「神の一手」を打った。それまでの3局でアルファ碁のパターンを察した李九段は78手目で、アルファ碁がすでに排除したような手を打った。50秒以内に打たなければいけないアルファ碁は予想外の李九段の一手にバグを起こした。人間がアルファ碁に勝った最初で最後の勝負だった。
--1勝の意味を現在はどう評価しているのか。
78手目は「普通にして勝つのは難しいのでバグを起こしてみよう」と考えての一手だった。このように勝つことに何の意味があるのかと対局が終わってから長く悩んだ。今は当時の自分がその決定をするしかなかった人間的な感情について考えてみたりする。そばにいる家族とこの対局を見守る多くの人たちのために一局でも勝たなければという切迫感、追い込まれた不安感のようなものだ。
--それはどういう意味か。
AIがいくら発展しても真似ることはできない人間だけの領域がそこにある。今はもうAIの完ぺきな棋譜よりも人間が苦悩して置いた一手に込められたストーリーに感動する時代だ。他の産業も同じだ。AIが高度化されるほど、どの業界でもこうした人間ならではの個性と感情が込められたストーリーが光を放つだろう。
--普段AIをよく使うのか。
ボードゲームや講演の資料を作る時、チャットGPTとGeminiをいつも使う。私はこれまでの生活で発表資料などを作ったことがなかった。AIがてきぱきと作成するのを見て「なかったらとても大変だったはず」と思う(笑)。AIを使用しながら感じるのは「浅い知識」の力が徐々にとても大きくなるという点だ。AIに入力する命令語(プロンプト)が重要になっただけに、複数の分野を浅く広く知り、これを組み合わせてAIという道具を効果的に活用する能力が重要になった。
--AIを統制するのが難しくなるという懸念もある。
どうだろうか。私はビッグテックのような少数集団がAIを完ぺきに統制する環境がもっと恐ろしい。AIは人間の判断に介入するほど影響力が大きいため、統制権を握った者が誰かにより、どの技術よりも脅威となりうる。AIが自ら人間を攻撃する理由はない。本当に恐ろしいのはAIなしには何もできなくなる人間の「自発的従属」状態だ。
--人間は何をもって価値を証明するべきなのか。
講演で「思考に意味があればそれが存在だ」という話をしたことがある。技術や市場のトレンドは過去にも絶えず変わってきたし、近視眼的に右往左往するのは消耗的だ。自分の考えや行為に自ら意味を付与して黙々と進むこと自体が人間として価値のある存在の証明だ。
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