中国系米国人のアリサ・リウ(左写真)はフィギュアスケート女子シングルで、米国系中国人の谷愛凌(アイリーン・グー、右写真)はフリースタイルスキー女子ハーフパイプでそれぞれ金メダルを獲得した。国家主義という巨大な枠組みの中で批判にさらされてきた2人の選手は、米中対立の犠牲者でもある。[AP・新華=聯合ニュース]
アリサ・リウは中国人の父を持つオークランド生まれで、谷愛凌は中国人の母を持つサンフランシスコ出身の選手だ。2人とも米国の豊かなインフラの中で育った「米国生まれの天才」たちである。しかし表彰台で、リウは星条旗を身にまとい、米国女子フィギュアに24年ぶりの金メダルをもたらしたことを喜んだ。一方、谷愛凌は五星紅旗を体に巻き、中国の五輪での存在感を高めた。この点が両者の決定的な違いだ。
アリサ・リウの金メダルは単なる優勝以上の意味を持つ。2022年北京大会後、「幸せではない」としてバーンアウトを訴え引退を宣言した彼女が、2年ぶりに復帰して成し遂げた再起の勝利だからだ。米NBCは「自分を解き放ったことで、むしろ最大の舞台で自由になれた」と評価した。
とりわけ、アリサ・リウの父が天安門事件後に亡命した反体制派の人物である点は、米国の保守陣営を刺激した。「娘が中国情報機関の標的になった」とする父の過去の発言が改めて注目され、リウは「共産主義を拒み自由を選んだ勝者」の象徴として扱われるようになった。
一方、谷愛凌は今大会のハーフパイプ金メダルでフリースタイル史上最多メダル(金3・銀3)という大記録を打ち立てたが、米国内の視線は極めて冷ややかだ。年間2300万ドル(約35億円)を稼ぐ「広告の女王」の歩みに対し、米国の保守政界は「米国システムの恩恵を受けながら敵側に回った」として激しく非難している。
J・D・バンス副大統領も事実上谷愛凌を念頭に、「自らを米国人と規定する人だけを応援する」と述べ、国籍をめぐる論争に火をつけた。ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が、中国代表として出場する見返りに巨額の報酬を受け取ったとの疑惑を提起し、谷愛凌は「資本に魂を売った裏切り者」というレッテルを貼られることになった。
こうした構図はソーシャルメディアを通じてさらに過激化している。「アリサ・リウのようになれ(Be like Alysa Liu)」という文句は、アリサ・リウを「忠誠の模範」として持ち上げると同時に、谷愛凌を「裏切りの象徴」として位置づける道具となった。これに対し中国のネットユーザーは、アリサ・リウに向けて「父を利用した政治的道具」だとし、容姿を揶揄する表現を含む露骨な非難を浴びせている。
ある米国の社会学教授はNBCのインタビューで、「誰が『良いアジア人』で、誰が『悪いアジア人』なのかという根深い人種的・政治的問いが、2人の選手に向けられている」と分析した。巨大な国家主義の枠組みの前で、個人のアイデンティティが揺さぶられている。
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