北朝鮮映画『対決の昼と夜』の場面 [NKNEWS]
『対決の昼と夜』は反体制勢力と暗殺を共謀する外国情報機関を登場させている。海外工作、企業偽装、標的暗殺という要素はモサドのイメージと重なる。映画は竜川駅爆発事故を単なる事故や内部陰謀のレベルを越えてモサドが介入した「最高尊厳暗殺計画」に拡張している。なぜ北朝鮮は今こうした演出を選択したのだろうか。
北朝鮮が映画を通して呼び起こしたものは、過去の一つの事件でなく、その後に蓄積されてきた脅威認識の歴史だ。竜川駅爆発事故をシリアの科学者を除去するためのモサドの工作と解釈した瞬間からモサドは単なる外国情報機関でなく、必要ならいつでも指導部を精密打撃できる実体的な脅威となったはずだ。竜川は開始点だった。
その後、中東で繰り返されたイスラエルの標的除去作戦はその認識を現実に固定させた。2007年のシリア核施設空襲、北朝鮮と関連した軍事協力責任者の暗殺、ミサイル科学者の除去とつながった一連の作戦は、モサドの実行力を北朝鮮に刻印させた。その認識は最近も再確認された。2024年にレバノンとシリア全域でヒズボラが使用していた数千個のポケベルと無線機が同時に爆発した事件は竜川駅の爆発を連想させた。
昨年7月、金正恩はモサドの事例に言及しながら指揮部の除去を想定した対応戦略強化を指示した。公式的には韓半島(朝鮮半島)有事に対応した軍事措置だったが、裏には「自分が次の標的になる」という個人的な不安が強まっている可能性が高い。
◆過剰な演出、むしろ恐怖を表す
こうした認識は映画で明確に表れている。映画の表面的なメッセージは命を捧げて金正恩を死守しようというものだ。実際、映画の上映以降、金正恩委員長の警護がさらに強化されたという状況も伝えられている。しかし過剰な演出は逆説的に金正恩が感じる不安と恐怖がそれだけ高まっていることを反映する信号でもある。
ここまでは竜川駅爆発事故をモサドの工作と仮定した情報専門家の想像に基盤を置く。ここに「闇の帝王」と呼ばれたモサドのダガン長官から表彰を受けるほど現場で抜群だった後輩Aの記憶を重ねてみる。
モサドの海外工作は現場活動チームと支援チームに分かれる。現場チームは閉鎖的な高リスク国家では要員の直接浸透を最小化し、現地の不満勢力や少数民族、国境地帯協力者ら現地人を活用する。支援チームは隣接国に留まりながら通信連絡、現地協力者との連結、危機対応を担当する。モサドの海外工作の原則だ。
2004年4月、モサド工作チームが韓国に入国した。名目は産業研修生として滞在中の外国人テロ容疑者の動向の確認だ。支援をしたAはすぐに異常を感じた。すべてに徹底的だった彼らが会議中に席を随時外した。テロ容疑者と関係がないユダヤ自治州と随時衛星通信をした。ユダヤ自治州は北朝鮮の伐木作業者が数多くいるハバロフスクとウラジオストクの間の地域だ。モサドチームはその後、束草(ソクチョ)港を通じてウラジオストクに移動し、「現地で活動中の同僚と合流する予定だ」と話した。時点を合わせてみると、竜川駅事故の1週間前に入国し、事故の3日後に出国したということだ。偶然の一致だろうか。金正恩の映画が当時に抱いた疑問を呼び起こす。
チャン・ソクグァン/国家情報研究会事務総長
【コラム】金正恩、暗殺の恐怖で眠れず…22年前の「竜川駅爆発」ミステリー(1)
この記事を読んで…