【コラム】冷めたが成熟したアジアの米国債愛
これまで米国債の需要は景気変動の中でも比較的安定的だった。米連邦準備制度理事会(FRB)の独立性議論、米国の財政赤字拡大、地政学的緊張の高まりにも市場はこれを体制を揺るがす変数とみるより、管理可能なリスク、すなわち「テールリスク」と受け止めている。
インフレの懸念は安定的で、財政負担が大きくなったのに国債価格が崩壊することはなかった。代わりに長期金利が短期金利よりもさらに上がる方式で調整された。危機のたびに国債に資金が集まる流れも続いている。要するに高い流動性、大規模取引にも揺らがない市場構造、危機の際に資金を守る防衛的性格という米国債の強みはアジアの投資家に依然として有効だ。
こうした回復力は意外ではない。米国と他の国の間の金利差は依然として魅力的でドル高も続いている。米国自体が不確実性の中心にある時さえ米国債は安全資産の役割をしてきた。こうした環境ではアジアの国債需要が短期間に急激に減る可能性は大きくない。FRBが緩和に転じても長期金利は大きく上がらないだろう。
ただし長期的には変化が避けられない。中国と新興アジアを中心に外貨準備高増加速度が鈍化し、米国債を追加で買う余力は以前より減った。アジアの莫大な既存保有量は依然として市場の緩衝装置の役割をするが、新たに入ってくる買収資金が減れば長期物に対する支持力は弱まるほかない。
アジアの資金が大挙本国に戻るという懸念は誇張された。過去を見れば資金回帰は海外の環境悪化よりは国内の強力な投資機会や危機が触発してきた。いまのアジアにそのような決定的契機は明確でない。域内金融市場はまだ大規模資金を吸収するほど深くなく、輸出企業のドル選好もやはり資金Uターンを制限する。
現実的な変化は急激な離脱ではなく段階的な分散投資だ。これは時間が経つほど米国債、特に長期物に対する追加需要を減らし長期金利に要求される補償を高めるだろう。アジアは米国債市場を離れるのではない。ただ無条件な買収者から、より選別的に市場を支える存在に変わっているのだ。
ルイーズ・ルー/エコノミスト(オックスフォード・エコノミクス)
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