25日、ソウルのハナ銀行偽変造対応センターで関係者がウォンとドルを整理している。[写真 ニュース1]
こうした慣性が作動したのだろうか。戒厳事態の混乱が少しずつ鎮まった今年上半期以降、当局者の表情からは明確に緊張感が消えていった。為替相場が依然として1ドル=1400ウォン水準を一進一退する状況でだ。経常収支黒字が続く状況の上に変動性も徐々になくなり大きい危機が起きる可能性は小さいというのが理由だった。ここに堂々とは話せないが、輸出にも役に立つのにあえて手を付ける必要があるかという本音もあった。「1400ウォン台はニューノーマル」という話が出た背景だ。
だが10月以降に異常兆候が現れ始めた。ドル安にもウォンの価値がさらに下がりドルが上がる異例の現象が起きた。自然に購買力を基準とした為替相場も金融危機以降で最低水準まで落ち込んだ。ついに戒厳事態当時の水準を超え1500ウォン水準を脅かすと雰囲気ががらっと変わった。外為当局の足の甲にも火が落ちた。
ひとまず韓国銀行が腕をまくった。11月に金利を据え置いたのに続き、利下げ基調も引っ込めた。不安な住宅価格とともに為替相場への集中が重要な理由だった。李昌鏞(イ・チャンヨン)総裁は「(為替相場の動きが)外為市場の不安を作り出すほどではない」としながらも、「一方向に傾いたため為替相場により物価が大きく上がる可能性が懸念される」とした。急騰した為替相場が2~3カ月の時差を置いて物価に本格的な影響を及ぼすことを考慮すれば、少なくとも来年上半期までは利下げを期待するのは難しいというのが市場の見方だ。為替相場不安が通貨政策の手足を縛ってしまった格好だ。
ボールは政府に渡った。具潤哲(ク・ユンチョル)経済副首相は主要輸出企業を招集して事実上ドルを放出してほしいというメッセージを出した。続けて外為市場の大口投資家である国民年金と協議体を作って為替相場管理に出る意向も示唆した。ドルが上がるのは外為市場でドルの供給より需要が多いという意味だ。供給者は輸出企業だが稼いだドルを市場に出さずにいるというのが政府の判断だ。ここに個人投資家と国民年金の海外株式投資で大きく増えたドル需要も少し抑えなくてはならないという論理だ。
1500ウォン水準を防衛しようとすればこうした対症療法も必要だろう。だがいち早くマクロ経済安定にもう少し神経を使っていたらこの程度で騒ぎ立てることもなかったはずだったろうという心残りが大きい。企業がドルを貯め、個人投資家と国民年金が海外投資を増やしたのはこの1日や2日で起きたことではないためだ。
その上ウォン安ドル高の利点はますます弱まり副作用は大きくなっている状況だ。これまである程度のウォン安ドル高政策が共感を得たのは韓国経済に好循環構造が作動したためだ。企業は稼いだドルを国内に入れ工場を建てて投資をした。雇用を得た労働者が消費を増やせばそのお金で自営業者が暮らした。ところがこの構造がこの数年間で急速に崩れた。米国を中心にした保護貿易主義に海外投資を増やさなければならない企業としてはあえて国外で稼いだ資金を国内に持ってくる必要がない。たとえ短期で運用するにしても金利が高い海外に置く方が収益性が良かった。ここに対米投資を大きく拡大することにした韓米関税交渉の結果が決定打となった。企業としてではドル需要がさらに増えたという話だ。このため輸出好況でも雇用はあまり増えず、物価だけ上がって内需はさらに縮小する。
個人投資家と国民年金の海外投資が増えたのもやはり同じだ。成長性や安定性で国内より海外が良いと判断した結果だ。潜在成長率を下回る低成長が固定化している上に、景気浮揚用財政赤字拡大に今後ウォンの価値も下がるだけとみているのだ。
結局状況を取り戻す根本処方はこうした偏りを作った「期待の偏向」を正すということになるほかない。放漫な財政取り締まりに出るなどマクロ経済を安定させる対策とともに輸出増加が国内投資につながる好循環の輪を復元する対策が推進されなければならない。構造化されたドル高が「近隣窮乏化」ではなく「自国民窮乏化」に帰結される前にだ。
チョ・ミングン/経済産業部局長
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