ドナルド・トランプ米大統領とイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、9月29日(現地時間)ホワイトハウスの国賓晩餐会場で共同記者会見を終えた後、会場を後にしている。[AFP=聯合ニュース]
イスラエルとパレスチナの武装勢力ハマスは、2023年10月に始まったガザ戦争以降、これまで2度にわたって合意に達してきた。だが、具体的な履行段階に入ると内外の障害にぶつかって頓挫し、合意文書は紙くずとなった。2023年11月の第1次停戦合意の際には、一時的な停戦とイスラエル人質・パレスチナ人収監者の交換で両者が一致したが、それまでだった。兵力撤収などの議題は交渉のテーブルにさえ上らず、双方はすぐさま砲弾を撃ち合った。
イスラエルとハマスは今年1月にも第2次停戦合意に到達した。しかし、ハマス内部の混乱と、イスラエル強硬派による停戦反対のため膠着状態が続き、今年5月からはイスラエル軍が逆にガザ地区占領作戦に乗り出し、攻勢を強めた。
イスラエルとハマスが10月8日(現地時間)に合意したドナルド・トランプ米大統領の仲裁案は、これで3回目の合意文書だ。前回までの合意と異なり、アラブ諸国が仲介者として幅広く参加し、人質送還と収監者釈放をめぐる「パッケージディール(包括的な合意)」は、イスラエル・ハマス双方が受け入れ可能な範囲で調整された。トランプ大統領自身も、今回の仲裁案を提示するにあたって、これまでのようにベンヤミン・ネタニヤフ首相の側に一方的に立つことはしなかった。イスラエルが先月、主要仲介国カタールでの停戦協議に参加していたハマス関係者を暗殺しようとした際には、「ネタニヤフ首相にカタールへ謝罪するよう圧力をかけた」(ポリティコ)という。仲介過程にはカタール、エジプト、トルコなどを大きく関与させることで、合意の実効性を高めた。トランプ大統領が「ガザ地区だけでなく中東全体に平和が訪れるだろう」と語ったのも、一定の根拠があってのことだ。
しかし、悪魔は細部に宿る。第2段階に入れば、ハマスの武装解除、パレスチナ暫定政府の樹立、イスラエル軍の完全撤退に関する詳細な内容を調整し、実行に移さなければならない。ハマスの解体やイスラエル軍の完全撤退をめぐっては、ハマス側・イスラエル側の双方に内部反発がある。「パレスチナの自決および国家地位への信頼できる道筋」と曖昧に表現されたパレスチナ国家建設についても、イスラエルとパレスチナ人の間には越えがたい溝が存在する。イスラエルはパレスチナ国家の樹立に反対している。
今後、中東諸国が新たな力学関係をどう受け止めるかも焦点となる。要人暗殺やポケベル爆破作戦など大胆な戦争遂行能力を通じ、イスラエルは地域の覇権国家に近づいた一方で、イランやその支援を受けたハマス・ヒズボラなど域内の武装勢力は力を失った。イスラエル紙エルサレム・ポストは「ガザは終わりではなく出発点だ」とし、「イスラエルは地域の安全保障を形づくる主体となるのかどうか、決断を迫られている」と報じた。
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