9月9月、中国昆明市のAI教科書店の店員がAI翻訳機を使って記者と会話している。パク・ヒョンジュン記者
4999~5999元(約11万~13万円)から9999元、さらには1万1999元といった高価な商品まで幅広くそろっていた。中国語・数学・英語・科学・化学・政治・歴史・地理・生物など、ほとんどすべての教科分野の学習をサポートしているという。人口700万人の昆明市の1人あたり所得は約1万3000ドル(約198万円)水準。つまり、子どものためにAI教科書を1台買うだけでも相当な出費を強いられる、ということだ。
50代前後と見える店員が「何かお手伝いできますか」と尋ねてきたが、私が韓国人だと分かると、小さな機械を手に取って持ってきた。リアルタイムAI翻訳機だった。話すと前面のディスプレイに、韓国語から中国語へ自動翻訳された文字が表示された。
「AI教科書はよく売れますか?」
「月に何台かは売れます」
「使用者の年齢帯は?」
「子どもから高校生までさまざまです」
「リアルタイムAI翻訳機についても気になります。何か国語に対応していますか?」
「中国語を含めて85か国語に通訳できます」
AI教科書の効果については賛否が分かれている。日本は正式な教科書としての導入を推進している一方で、いくつかの国では紙の教科書に戻ったという。店員が使っていたリアルタイム翻訳機も、通訳の質がとても良いとは言い難かった。AI通訳もそれほど高度な技術ではない。それでも驚かされたのは、AI技術が中国の日常生活の隅々にまで浸透しているという点だ。代表的な開発後進地域とされる西部の人々でさえ、AI技術とともに生活している。
かつて英国で蒸気機関の発明など科学技術の革新が爆発的に起こり産業革命が始まったのは、当時の英国では貴族・中間層・労働者などすべての階層の人々が科学技術の知識を広く享受していたからだ。対して当時の先進国フランスでは、高度な科学技術が一部の知識層にとどまり、産業革命に結びつかなかったと歴史家は分析する。社会の底辺にまで流れ込んだ科学技術こそが経済成長の原動力だということだ。
中国現地のAI技術は、その普及範囲と深さの点で韓国を上回っている。「ディープシーク(DeepSeek)・ショック」はこうした日常の土台から生まれたものだ。韓国とは異なり、中国ではAIに対する政界や労働界のイデオロギー的な反発も存在しない。後世の歴史家はこの時代をどのように名づけるだろうか。「中国発AI革命」と呼ばれる可能性も高いのではないか。
パク・ヒョンジュン/国際部記者
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