中国ヒューマノイドロボット産業が実験室を抜け出し、「職業学校」で実用技術を習得する段階に転換している。

北京市石景山区にあるヒューマノイドロボット訓練場。身長1．66メートルのヒューマノイドロボットがバーチャルリアリティ（VR）装備とモーションキャプチャーシステムを利用し、倉庫作業、資材分類、製品包装など実務技術を習得している。


「夸父（Kuavo）」という名称のロボットは学習速度が速い。夸父は空き箱の返還、資材の分類、製品の計量・包装・ボックス作業など実務課題で95％以上の作業成功率を見せている。


中国情報通信研究院が発表した研究報告書によると、2045年からは1億台を超えるヒューマノイドロボットが各産業現場に投入され、約10兆元（約210兆円）規模の市場を形成すると予想される。

しかし予測不可能な日常環境にロボットを配置するにはまだデータが不足する。こうした問題を解消するため、中国ロボット製造業者は自動車工場、物流倉庫、高齢者療養施設、さらに演劇学校にまで自社のロボットを「インターンシップ」形態で投入している。

北京市石景山区ヒューマノイドロボットデータ訓練センターのプロジェクト責任者は「ロボットはさまざまな環境で反復訓練を通じて知能を得る。子どもが歩行を絶えず練習しなければいけないのと同じ」と説明した。

1万平方メートルを超える施設は年間600万件以上のデータ入力が可能だ。産業、家庭、ヘルスケア、5G応用など16種類の複雑なシナリオを再現するここは中国最大規模であり、最も総合的で現実的なテスト環境の一つに挙げられる。

ロボット開発者はここ訓練センターで蓄積される膨大なデータを活用してアルゴリズムを精巧化し、認知システムを改善して意思決定能力を向上させる。

この訓練センターは今後、蘇州・済南・合肥・鄭州など他の都市の施設と連係する計画だ。この場合、月間データ生成能力が5000時間となる見込みだ。

実際、中国主要都市の間ではヒューマノイドロボットを次世代経済成長の核心動力にするための競争が激しい。

上海のロボットスタートアップの智元ロボット（AgiBot）では、数百人のデータ収集要員がVRヘッドセットを着用してコントローラーを手に持ちながらロボットに服をたたむ動作、食卓を片づける動作、茶を入れる動作、レジ業務などを直接教える。該当施設の規模は4000平方メートルにのぼる。

7月には四川省綿陽市にもロボット訓練場が設立された。地域レベルで競争力があるエンボディドAIロボット クラスターを作るという戦略の一環だ。

9月には広東省仏山市でマルチモーダルエンボディドAIロボット訓練場である中国科学院紫東太初エンボディドAI革新センターが運営に入った。中国科学院は年内に湖北省武漢にも新しいロボット訓練場を設立する計画だ。

一方、宇樹テック（Unitree Robotics）は最近、自社ロボット学習アーキテクチャーをオープンソース化すると発表した。

宇樹テックはヒューマノイドロボットが現実で試行錯誤をせず学習できるAIエンジンを保有している。これは1枚のスナップ写真と数種類の予定された動作だけで結果をリアルタイムでシミュレーションして制御できる技術で、ロボット訓練分野に新しい方向を提示する。