北朝鮮が建軍節(人民軍創建日)75周年にあたる2023年2月8日、平壌(ピョンヤン)の金日成(キム・イルソン)広場で開かれた閲兵式で公開した大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17型」の様子。[写真 朝鮮中央通信、聯合ニュース]
北朝鮮の最初の閲兵式は1948年、平壌駅広場で開かれた。北朝鮮正規軍創設を記念する閲兵式では、歩兵・砲兵など2万人余りの兵力や戦車などの装備が閲兵部隊を構成した。金日成の執権時期の閲兵式は主に8・15光復(解放)を記念する行事として行われた。
韓国戦争(朝鮮戦争)以後、閲兵式の場所は平壌駅広場から金日成広場へと移った。休戦直後に打ち出された金日成の首都建設構想に基づき、平壌市中区域に金日成広場が1954年8月に完成したためだ。
閲兵式に大きな関心を示さなかった金日成とは違い、金正日は閲兵式に自分なりのスタイルを反映させ、体制宣伝の道具として積極的に活用した。行進隊列の先頭にパルチザン(抗日遊撃隊)や韓国戦争の老兵を立て、北朝鮮軍の起源に関する叙事を込めたのも金正日執権期のことだった。
2011年12月18日、金正日の突然の死去によって最高指導者の座に就いた金正恩氏は、翌年4月15日、金日成生誕100周年の閲兵式を初めて肉声演説を行う舞台に選んだ。隠遁型指導者と呼ばれた父・金正日と差別化を図ると同時に、国父・金日成への郷愁を喚起し、「若き指導者」の不足するリーダーシップを補う戦略として閲兵式を利用したのだ。
閲兵式はまた、北朝鮮軍の軍事力を含蓄的に誇示する代表的な手段でもある。閲兵部隊を通じて軍の士気や威容はもちろん、最新兵器までをも内外に示すことができるからだ。実際、北朝鮮は大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星(ファソン)17・18型」や潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星(プッグクソン)5ㅅ(シオッ)」、「北朝鮮版イスカンデル」と呼ばれる短距離戦術ミサイル(NK-23)の拡大型、核魚雷「ヘイル(津波)」などを閲兵式で初めて公開した。
一部からは、北朝鮮の閲兵式に武器販売を念頭に置いた経済的布石もあるとの分析が出ている。新米国安全保障センター(CNAS)のジェイソン・バートレット研究員は2021年8月、米外交専門誌『ザ・ディプロマット(The Diplomat)』への寄稿文で、「北朝鮮の閲兵式放送は米国の敵対国に対して武器カタログを提供するのと同じだ」と指摘した。北朝鮮の最新武器情報を、米国の敵対国のような潜在的な海外購入者に伝える窓口の役割を果たす場合もあるというのがその理由だ。
このように金正恩氏は、自身のメッセージを国内外に発信する機会として閲兵式を利用してきた。そして閲兵式で初公開された武器は、例外なく韓半島(朝鮮半島)の緊張レベルを高める脅威手段となった。9月3日、中国北京で開かれた「中国人民抗日戦争および世界反ファシスト戦争勝利80周年」行事で中国の習近平国家主席、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領と並んで天安門城楼に立ち存在感を誇示した金正恩氏が、有利な戦略的環境を背景に進める今回の閲兵式が、いつもに増して注目されるのはこのためだ。
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