韓国海洋警察の故イ・ジェソク警長が11日、仁川霊興島(インチョン・ヨンフンド)の干潟で孤立した中国人70代男性に救命胴衣を脱いで渡している様子。[写真 仁川海洋警察署]
海洋警察庁が確保した11日事故当時のドローンパトロール業者の映像記録によると、イ警長はこの日午前2時54分に救助を要請した70代の中国人Aさんと会った。足を負傷して動くのが難しいというAさんを背負おうとして失敗したイ警長は、自分が着ていた救命胴衣を脱いでAさんに渡した。しかしその8分後の午前3時2分、腰まで来ていた水はあっという間に顎の下まで迫った。
さらに8分が経過した午前3時10分、イ警長は頭だけを出した状態で危うげに海に漂っていた。イ警長の最後の姿がドローンに捉えられたのは午前3時27分。Aさんに出会ってから33分が経過した時点だった。両手に無線機とランタンをしっかり握り、足を動かしながら必死に耐えていたイ警長の位置は、この時点を最後に記録されなくなった。
30分以上にわたって救助の「ゴールデンタイム」があったが、海洋警察の初動対応は不十分だった。イ警長が所属する仁川(インチョン)海洋警察署霊興(ヨンフン)派出所の無線録音記録によると、11日ドローンパトロール業者の通報を受け、単独で現場に出動したイ警長は午前2時16分にドローン映像を確認し、「コッ島に一人でいる要救助者が上着を脱いでいる」と最初の無線を送った。2時42分ごろ、追加人員投入が必要かとの質問に「水位が上昇してきて必要だとは思うが、とりあえず私が一度入ってみる」と答えた。
これに対し担当チーム長は「署(仁川海洋警察署)に報告して、(寝ている)○○を起こして一緒に対応しよう。どう思う」と尋ねたが、要救助者に会いに行くというイ警長の言葉に、特段の後続措置は取らなかった。イ警長は2時56分には「要救助者は足を切って動けないと言うので、救命胴衣を脱いで差し上げて離脱できるようにする。水は腰ぐらいまで上昇してきている」と伝えたが、この時も後続の措置はなかった。
その後17分が経った午前3時14分になってようやく派出所の職員が故人の名前を呼びながら「通話可能なら、交信可能ならいつでも連絡しろ」と無線した。霊興派出所の他の職員たちは、当日午前3時9分ごろに「水位がかなり上昇している」というドローン業者の支援人員要請を受けてからようやく現場に移動したことが分かった。
イ警長は結局海で行方不明となり、午前9時41分ごろ、甕津郡(オンジングン)霊興面のコッ島付近の海上で心停止状態で発見され、病院に搬送されたが死亡が確認された。海洋警察庁の訓令である「派出所および出張所運営規則」には「パトロール車にはやむを得ない場合を除き2人以上が乗車することを原則とする」と明記されているが、守られなかった。
上級機関への遅延報告の疑いも提起された。仁川海洋警察署と中部地方海洋警察庁がイ警長の失踪を認識したのは午前3時30分ごろだった。イ警長が現場に出てから80分後に上級機関の状況室への報告が行われたのだ。海洋警察関係者は「報告を受けた上級機関は午前3時32分に永宗島(ヨンジョンド)にあったヘリに出動指示を出した。離陸には早くても20分以上かかるため、3時55分ごろにヘリが飛び立ち、7分で現場に到着した。当初なぜ状況報告が遅れたのかなどを調査している」と説明した。
海洋警察庁は「関連する疑惑や疑問に対して客観的で正確な調査が行われるよう、外部専門家6人で昨日真相調査団を構成した」とし「今後2週間活動する調査団が、関連疑惑を一点の疑問もなく明白に調査できるよう積極的に支援する予定だ」と明らかにした。
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