9日(現地時間)、ネパールの首都カトマンズの政府庁舎シンハ・ダルバール宮殿がデモ隊の放火で炎に包まれている。今回のデモで20人余りが死亡し、500人以上が負傷した。[写真 EPA=聯合ニュース]
9日(現地時間)、現地メディアと海外メディアが伝えたネパールの首都カトマンズの様子は火の海そのものだった。デモ隊は政府と議会が集まるシンハ・ダルバール宮殿に乱入し、火を放った。窓は粉々に砕け、建物の外壁は反政府メッセージの落書きで覆われた。デモ隊の一部が警察の銃器を奪い、街に銃声が響いた。警察はデモ隊に催涙弾と放水砲で応じた。この日までに少なくとも22人が死亡し、500人以上が負傷した。
デモ隊の放火で、ジャラ・ナート・カナール前首相の夫人が自宅で重度の火傷を負って死亡した。別の元首相や閣僚たちもデモ隊に引きずり出され暴行を受けた。ラム・チャンドラ・ポーデル大統領は軍用ヘリに乗って軍事訓練センターへ緊急避難した。
デモを主導しているのは20代だ。若者たちが街頭に出た背景には、ネパール版「金の箸とスプーン」(裕福な家庭環境)を持つ「ネポキッズ(nepokids)」への怒りがある。高位公務員や政治家の子女を指すネポキッズは、身内びいきを意味する英語「ネポティズム(nepotism)」と「キッズ(子女)」の合成語だ。米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は「ネパールのデモ隊が裕福なネポキッズに激怒した」とし「エリート子女たちの特権生活を映した動画や写真に若者たちが憤った」と説明した。
これに先立ち、ソーシャルメディア(SNS)ではネポキッズをハッシュタグにしてエリート子女を批判する投稿が拡散していた。X(旧ツイッター)に投稿されたある映像には、ネパールの政治家の子女と推定される人物が派手な服を着て豪華な休暇を楽しむ姿が収められていた。続いて、家を失い飢える庶民の姿が登場する。エリート層の子女たちは親のおかげで贅沢三昧だが、川辺の「ザフカ(ザリガニ・フナ・カエル)」と呼ばれる庶民は食べていくのも苦労しているということだ。ルイ・ヴィトン、カルティエなど2万6000ドル(約383万円)相当の高級ブランドの箱でクリスマスツリーを作った閣僚の息子、高級レストランで食事した後にメルセデス・ベンツの乗用車の前でポーズを取っている元判事の息子を批判する映像も数十万回再生された。
根本的な原因は雇用だ。ネパール統計庁によれば、昨年の失業率は12.6%だった。ネパールの若者たちは職を求めてインド、マレーシアなど周辺国に出て行っている。
それにもかかわらず、ネパール政府は最悪の政策を打ち出し、デモ隊の怒りに油を注いだ。インスタグラムやフェイスブック、Xなど26のSNSへの接続を完全に遮断したのだ。激怒したデモ隊は最高裁と検察庁に火を放ち、事件記録の書類を燃やした。混乱の中で刑務所から収監者900人余りが脱獄した。デモに参加したサバナ・ブダトキ氏は「SNS禁止は導火線にすぎず、本当の理由は政府の腐敗にある」とBBCに語った。
ネパール政府は翌日すぐにSNS禁止を解除した。シャルマ・オリ首相が流血事態の責任を取って辞任したが、事態を沈静化させるには及ばなかった。軍は9日夜から都心に兵力を投入し、戒厳令を敷いた。NYTは「近いうちに国家非常事態が宣言されると予想される」と報じた。
デモ隊は30代政治家でカトマンズの市長であるバレンドラ・シャー氏を次期首相として支持している。シャー氏は1990年生まれで、政界入りする前は腐敗と不平等を批判する歌詞で名を馳せたラッパー出身だ。シャー氏はフェイスブックで「この国は皆さん(デモ隊)の手にかかっている。家に戻ってほしい」と呼びかけた。
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