中国の戦勝節行事は強烈だった。習近平国家主席はウラジーミル・プーチン大統領、金正恩(キム・ジョンウン)委員長とともに天安門望楼に立った。「北京の3人組」は全世界に向けて挑戦的な意志を示した。戦勝節直前に上海協力機構首脳会議まで開催した中国は、米国の激しい圧力に屈せず、むしろ世界秩序の変化を主導する覚悟を固めた。ロシアはウクライナ戦争を中途半端に終わらせないという決意を強めた。北朝鮮は「ビッグ3」に含まれる核保有国として、非核化は全く念頭にないと断言した 。対日戦勝記念行事ではあったが、実際の狙いはすべて米国に向けられていた。時期の選定も絶妙だった。関税戦争で米国が同盟国と対立している最中に、朝中ロが一つに結束したことを見せつけようとした。
3人のうち、金正恩氏の表情が最も明るく見えた。彼はロシアに武器と兵力を送り、地政学的な格を上げ、その見返りに軍事的支援と外交的支持を得る成果を収めた。中国との関係が疎遠になっていた点が問題だったが、今回の訪問で対中関係も正常化された。北朝鮮はコロナ禍以後、対中貿易が大きく増えると予想したが、昨年の朝中貿易の規模は2019年の78%にすぎなかった。朝ロ接近を警戒した中国が国連安保理制裁を比較的厳格に適用したためだ。しかしこれもまもなく解決すると信じている。とりわけ経済・貿易協力を深めようという要請に中国が応じるなら、中国発の経済協力とロシア産軍事技術を結合し、ついに「核・経済並進」という長年の夢を実現できると期待している。さらに世界秩序が多極化すれば、中ロ軸の強国となり、もはや米国や韓国と核をめぐって交渉する必要はないと考えている。しかし世界秩序が「北京の3人組」の夢見る方向に流れていくだろうか。これは米国の対応次第でもあるが、ロシアと北朝鮮内部の経済状況にも大きく左右される。
ウクライナ戦争が長期化するほど、ロシア経済はより困難になる。おととしと昨年はそれぞれ4.1%、4.3%を記録したロシアの成長率は、今年は1%前後へと急落する見通しだ。2023~2024年の成長率が高かったのは、これまで国富基金に積み上げていた資金を財源に、膨大な拡張的財政政策を展開したためだ。だが2021年末に国民総所得比6.5%に達していた国富基金の流動資産は、いまや1.9%に減った。これでは1年分の財政赤字を埋めることさえ難しい。現在、ロシアの政策金利は18%にもなる。労働市場の人手不足でインフレ圧力が強まり、ロシア中央銀行は金利を引き上げざるを得なかった。しかし高金利は軍需産業に関わらない部門への投資を阻害し、成長率低下という悪循環を招く。国富基金の流動資産が枯渇すれば、ロシア政府はその都度、石油やガスを売って戦費を賄わざるを得ない状況に陥る。だが世界の原油価格が60ドル以下に落ちれば、その資金も入らない。戦争が長期化すれば、経済力の強い国が勝つ確率が高くなる。果たしてウクライナを支える欧州よりロシア経済が強いといえるだろうか。
昨年と今年、北朝鮮住民の生活水準は悪化したはずだ。韓国銀行は昨年の北朝鮮成長率を3.7%と推定した。しかしこれは戦争特需による重化学工業の高成長が反映されたもので、住民福祉の変化とは別物の可能性がある。コロナ禍以前、北朝鮮の4人家族の月平均所得は約30万ウォン(約3万円)だった。この所得の70%以上が市場活動から得られていた。ところが北朝鮮政権は、市場が資本主義精神を拡散させ、韓国の文物を流通させる経路になっていると判断し、市場活動を制限しようとしている。2023年末には市場活動の代わりに公式職場で働くようにし、月3000ウォン程度だった公式給与を4万~5万ウォンに引き上げた。だがその結果、1ドル=8000ウォンだった市場の為替レートは3万ウォンをはるかに超えた。コメ1キロの市場価格も5000ウォンから1万4000ウォンに上昇した。市場収入がなくなり公式給与だけを受け取る家計では、ドル換算の月収が2019年の38ドルからいまは2ドル以下に減ったのだ。中国が経済的に支援したとしても、このような政策をとる限り、北朝鮮経済が根本的に改善することは難しい。経済なしに核だけで政権を安定させることはできない。
李在明(イ・ジェミョン)大統領はドナルド・トランプ大統領との首脳会談で「ペースメーカー」役を自任した。だがいまは「ピースメーカー」よりも「ペースメーカー」としての役割が重要だ。韓半島(朝鮮半島)の平和のために北朝鮮だけを見つめて走っていた時代は終わった。これからは外交の空間を広げ、協力の質を深め、時間を制する「三次元戦略」が必要だ。時間軸の核心はタイミングだ。「北京の3人組」の連帯がほころぶその時こそ、韓半島の平和への本格的なレースに臨むべき時だ。彼らの連帯は不変の定数ではなく、経済状況によって揺れる変数だ。いまは歩く時でも、ましてや走る時でもない。立体的戦略で大きな平和を準備する「静中動」の時間だ。
キム・ビョンヨン/ソウル大学碩座教授・経済学
3人のうち、金正恩氏の表情が最も明るく見えた。彼はロシアに武器と兵力を送り、地政学的な格を上げ、その見返りに軍事的支援と外交的支持を得る成果を収めた。中国との関係が疎遠になっていた点が問題だったが、今回の訪問で対中関係も正常化された。北朝鮮はコロナ禍以後、対中貿易が大きく増えると予想したが、昨年の朝中貿易の規模は2019年の78%にすぎなかった。朝ロ接近を警戒した中国が国連安保理制裁を比較的厳格に適用したためだ。しかしこれもまもなく解決すると信じている。とりわけ経済・貿易協力を深めようという要請に中国が応じるなら、中国発の経済協力とロシア産軍事技術を結合し、ついに「核・経済並進」という長年の夢を実現できると期待している。さらに世界秩序が多極化すれば、中ロ軸の強国となり、もはや米国や韓国と核をめぐって交渉する必要はないと考えている。しかし世界秩序が「北京の3人組」の夢見る方向に流れていくだろうか。これは米国の対応次第でもあるが、ロシアと北朝鮮内部の経済状況にも大きく左右される。
ウクライナ戦争が長期化するほど、ロシア経済はより困難になる。おととしと昨年はそれぞれ4.1%、4.3%を記録したロシアの成長率は、今年は1%前後へと急落する見通しだ。2023~2024年の成長率が高かったのは、これまで国富基金に積み上げていた資金を財源に、膨大な拡張的財政政策を展開したためだ。だが2021年末に国民総所得比6.5%に達していた国富基金の流動資産は、いまや1.9%に減った。これでは1年分の財政赤字を埋めることさえ難しい。現在、ロシアの政策金利は18%にもなる。労働市場の人手不足でインフレ圧力が強まり、ロシア中央銀行は金利を引き上げざるを得なかった。しかし高金利は軍需産業に関わらない部門への投資を阻害し、成長率低下という悪循環を招く。国富基金の流動資産が枯渇すれば、ロシア政府はその都度、石油やガスを売って戦費を賄わざるを得ない状況に陥る。だが世界の原油価格が60ドル以下に落ちれば、その資金も入らない。戦争が長期化すれば、経済力の強い国が勝つ確率が高くなる。果たしてウクライナを支える欧州よりロシア経済が強いといえるだろうか。
昨年と今年、北朝鮮住民の生活水準は悪化したはずだ。韓国銀行は昨年の北朝鮮成長率を3.7%と推定した。しかしこれは戦争特需による重化学工業の高成長が反映されたもので、住民福祉の変化とは別物の可能性がある。コロナ禍以前、北朝鮮の4人家族の月平均所得は約30万ウォン(約3万円)だった。この所得の70%以上が市場活動から得られていた。ところが北朝鮮政権は、市場が資本主義精神を拡散させ、韓国の文物を流通させる経路になっていると判断し、市場活動を制限しようとしている。2023年末には市場活動の代わりに公式職場で働くようにし、月3000ウォン程度だった公式給与を4万~5万ウォンに引き上げた。だがその結果、1ドル=8000ウォンだった市場の為替レートは3万ウォンをはるかに超えた。コメ1キロの市場価格も5000ウォンから1万4000ウォンに上昇した。市場収入がなくなり公式給与だけを受け取る家計では、ドル換算の月収が2019年の38ドルからいまは2ドル以下に減ったのだ。中国が経済的に支援したとしても、このような政策をとる限り、北朝鮮経済が根本的に改善することは難しい。経済なしに核だけで政権を安定させることはできない。
李在明(イ・ジェミョン)大統領はドナルド・トランプ大統領との首脳会談で「ペースメーカー」役を自任した。だがいまは「ピースメーカー」よりも「ペースメーカー」としての役割が重要だ。韓半島(朝鮮半島)の平和のために北朝鮮だけを見つめて走っていた時代は終わった。これからは外交の空間を広げ、協力の質を深め、時間を制する「三次元戦略」が必要だ。時間軸の核心はタイミングだ。「北京の3人組」の連帯がほころぶその時こそ、韓半島の平和への本格的なレースに臨むべき時だ。彼らの連帯は不変の定数ではなく、経済状況によって揺れる変数だ。いまは歩く時でも、ましてや走る時でもない。立体的戦略で大きな平和を準備する「静中動」の時間だ。
キム・ビョンヨン/ソウル大学碩座教授・経済学
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