3日、北京で開催された中国戦勝節80周年軍事パレードを観覧する北朝鮮の金正恩国務委員長(右) [平壌朝鮮中央通信=聯合ニュース]
執権後初めて多者外交の舞台にデビューした北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長も勝者のように見えた。習近平は金正恩との首脳会談で非核化に言及しなかった。韓半島(朝鮮半島)の完全な非核化と平和協定締結を同時に推進する「双軌並進」路線を放棄して北朝鮮の核を容認する信号という解釈が出てきた。金正恩の支援を受けたプーチンは事実上、北朝鮮を核保有国と認定してきた。トランプも脈絡なく北朝鮮を「核保有国(nuclear power)」と呼んできた。もう金正恩は非核化どころか核軍縮の見返りとして在韓米軍の撤収を要求するだろう。
ところが中国がロシアのように北朝鮮を核保有国と認めるだろうか。容易ではないはずだ。トランプの米国に代わるグローバルリーダーシップになるために世界に向けて魅力攻勢をかけているからだ。2つの「ならず者国家」と一緒にされる愚かな決定だ。中・ロ・朝3者首脳会談が行われなかった理由でもある。この状況で金正恩に核保有国の月桂冠をかぶせるのは国際規範からの深刻な逸脱だ。
北朝鮮はコメ価格と市場物価が暴騰する経済難に直面している。ロシアをテコに安全保障を得た金正恩は中国の支援で経済を回復させようとしている。軍幹部の代わりに経済官僚を同行させた理由だ。しかし望むほどの経済的支援を得られるだろうか。中国は「血盟」北朝鮮にコメと原油を提供したが、生存に必要な程度に制限した。北朝鮮は過去10年間、貿易の平均93.9%を中国に依存した。それでも経済規模は韓国の40分の1水準の最貧国だ。「安露経中(安保はロシア、経済は中国と密着)」は北朝鮮の希望事項にすぎない。
両国の複雑な葛藤を知るには、中国丹東と新義州(シンウィジュ)をつなぐ新鴨緑江(アムノッカン)大橋に行けばよい。中国は往復4車線、本体の長さ3キロのこの大きな斜張橋を2014年に完工した。ところが北側連結区間の工事が終わらず、まだ未開通状態だ。中国に対する北朝鮮の不信感と恐怖が原因だ。冷戦解体後に完全に孤立した北朝鮮が核開発を手掛けると、中国は同じ国連安保理常任理事国のロシアとともに制裁に加わった。資金源がふさがった北朝鮮は「千年怨讐」として怒りを表した。いつ裏切るか分からない中国に過剰依存するのは危険だという考えを固めた。朝中を一つの国のように結ぶ橋の開通が11年間延長されている内部事情だ。
北朝鮮が足元の火を消すには中国の支援が必要だ。しかし決定的なことは米国との関係正常化だ。朝米が修交すれば体制が保証され、世界の資本と技術が入ってくる。韓国のように良い暮らしがができる。世界とつながった北朝鮮は核に命をかけず国際規範を守る国となる。正常国家の北朝鮮と国境を挟む中国にも良いことだ。
米国と北朝鮮はかつて修交直前まで行った。1998年に北朝鮮が最初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)テポドン1号を発射すると、クリントン大統領は1999年5月にペリー元国防長官を平壌(ピョンヤン)に特使として送った。金正日(キム・ジョンイル)総書記は1年5カ月後の2000年10月に権力序列2位の軍部実力者、趙明禄(チョ・ミョンロク)次帥をワシントンに送った。金正日の親書がクリントンに伝えられた。朝米間の敵対的意図を終えるという共同コミュニケが発表された。すぐにオルブライト国務長官が平壌を訪問した。任期末のクリントンが北朝鮮を訪問しようとしたが、残りの時間が不足してあきらめた。北朝鮮が1年5カ月を無駄に送ったのは理解できない。
北朝鮮問題は高次方程式だ。核だけでなく外交・経済も解いてこそ解決する。中国の役割は制限的だが、朝米修交は決定的なものとなる。米国を誰よりもよく知る韓国は閉鎖国家の北朝鮮の不安と衝動をなだめて非核化と修交を支援することができる。戦争の苦痛を経験してだけに誰よりも切実に平和を望む。「ペースメーカー」を自負して凍結-縮小-廃棄の3段階非核化構想を掲げた李在明大統領は、これを「ピースメーカー」のトランプ、そして習近平に説得しなければいけない。「ならず者国家」を正常国家にして核の脅威から抜け出す道だ。絶対に急いではいけない。韓米同盟を数百倍さらに強め、韓米日協力を強化して米国の信頼を確保することが急務だ。
李夏慶(イ・ハギョン)/論説委員
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