20日(現地時間)、ウクライナ・ザポリージャ州でウクライナ軍第44砲兵旅団所属の兵士が2S22ボフダナ自走砲をロシア軍に向けて発射している。[写真 AP=聯合ニュース]
ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は20日(現地時間)、「ロシアを除いて(ウクライナの)安全保障を真剣に議論するのは無意味だ」とし「ロシア抜きで議論された集団的安全保障案には同意しない」と強調した。この日北大西洋条約機構(NATO)加盟国の軍首脳部がウクライナ安全保障策を協議したことへの反発だった。
ラブロフ外相はさらに「(ロシアと)中国、米国、英国、フランスといった国々がウクライナに対する安全保障を対等な立場で議論する場合にのみ受け入れる」と強調した。ウクライナ安全保障の最大の目的はロシアによる再侵攻の防止だ。その議論にロシア自身が参加すると主張するのは、欧州やウクライナにとって到底受け入れ難い要求だ。
ラブロフ外相の発言は、トランプ大統領が明らかにしたロシア側の立場と食い違っている。トランプ大統領は今月15日に行われたロシアのウラジーミル・プーチン大統領とのアラスカ首脳会談後、ロシアが欧州主導のウクライナ安全保障を受け入れることにしたと述べていた。
フィナンシャル・タイムズ(FT)は「ラブロフ氏の発言は、ロシアが今後のウクライナ安全保障を確立しようとするあらゆる努力に事実上『拒否権』を行使するということ」とし「米国の和平仲介の努力に冷や水を浴びせた」と評した。米政治メディア「ポリティコ(Politico)」も「ウクライナに対するロシアの強硬姿勢は少しも緩和されていない」と解説した。
一方、ロシアを交渉の場に引き込まなくてはならない米国は、安全保障において自らの役割を極力減らそうとしている。ポリティコによると、米国のエルブリッジ・コルビー国防次官(政策担当)は19日、欧州軍首脳部との会合で「米国はウクライナ支援に最小限の役割しか果たさない」と通告した。この会合にはダン・ケイン米統合参謀本部議長や英国、フランス、ドイツ、フィンランドの軍首脳が出席した。
ポリティコは「(コルビー氏が)会合に出席したということそのものが、欧州が米国の安保支援を確保することがより困難になることを意味している」と分析した。米国防政策の設計における実力者と評価されるコルビー次官は、常々欧州の安保タダ乗り論を主張し、ロシアの脅威を防ぐには欧州が役割を果たすべきだと強調してきた。同じ日、J・D・バンス副大統領もFOXニュースで「欧州が(ウクライナ安全保障の)負担の最も大きく重要な部分を担うべきだ」と述べた。
こうした発言は、米国がトランプ大統領が約束したウクライナ安全保障策から徐々に後退していることを示している。トランプ大統領は18日、「米軍をウクライナに派兵する準備がある」と発言したが、翌日には立場を変え「航空支援の提供には前向きだ」と述べるにとどまった。NATO所属のある外交官はポリティコに対して「現場でそれ(安全保障)を実現する主体は欧州だという現実が明らかになってきている」とし「米国はいかなることも完全には約束していない」と語った。
ホワイトハウスが米国・ロシア・ウクライナによる3か国首脳会談をハンガリー・ブダペストで開催しようとしていることも、ウクライナの不安を掻き立てている。ホワイトハウスは開催地の最有力候補としてブダペストを挙げ、シークレットサービス(SS)が関連準備を進めていると伝えられている。
しかしブダペストは、ウクライナにとって苦い記憶の地だ。ウクライナは旧ソ連崩壊後の1994年、「ブダペスト覚書」に署名した。そこには、ソ連から引き継いだ核兵器を放棄する代わりに領土主権を保障するという約束が盛り込まれていた。米国・英国・ロシアが共同署名し、中国とフランスもその後、ウクライナの安全を保障するという別途の覚書を結んでいた。
しかし、この覚書は紙切れ同然だった。署名国のロシアは2022年2月にウクライナへ侵攻し、米国など他国の支援はごく限定的だった。米シンクタンク「民主主義防衛財団(FDD)」のクリフォード・メイ研究員はラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE/RL)に対して「ブダペスト覚書は文字通り紙切れ同然の価値しかなかった」とし「今回のウクライナに対する安全保障もブダペスト覚書と同じことになりかねない」と懸念を示した。
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