テスラの中国・上海工場で作られた「モデル3」が出庫を待っている。[写真 ロイター=聯合ニュース]
自動車とバッテリー(二次電池)企業間の「同盟」の境界が崩れている。価格・性能・関税などを考慮して少しでも有利であれば国籍を問わない戦略だ。電気自動車需要が停滞する局面の中で激しくなる生き残り競争の断面だ。
バッテリー業界によると、テスラは中国販売用中型電気自動車「モデル3」にLGエナジーソリューションが作ったNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)バッテリーを搭載することにした。
テスラは既にモデル3のうち「ロングレンジ」と「パフォーマンス」の上位2モデルにLGエナジーソリューションのNCMバッテリー、後輪駆動(RWD)モデルには中国CATLのLFP(リン酸鉄リチウム)バッテリーを使ってきた。
しかし9月に発売予定の新型RWDモデルにはLGエナジーソリューションのバッテリーを搭載する。LFPより走行距離が長い韓国製NCMで現地企業との差別化を狙ったのだ。「愛国消費」の傾向が強い中国市場だが、韓国製バッテリーの採用が拡大する様相だ。
これに対し韓国の電気自動車市場では中国製バッテリー採択が増加している。起亜は年内に韓国で発売予定の準中型電気自動車「EV5」にCATLのNCMバッテリーを使うことにした。CATLのバッテリーが現代自動車「コナ・エレクトリック」、起亜「レイEV」など小型モデルを超え準中型にまで搭載されるのは初めてだ。起亜は6月に発売した初の電気目的基盤車両(PBV)「PV5」にもCATLのNCMバッテリーを採用した。価格だけでなく技術力も認めた形だ。「低価格=中国、高性能=韓国」の公式が崩れているという分析が出ている。瑞靖(ソジョン)大学スマート自動車学科のパク・チョルワン教授は「競争が激しくなるほどバッテリーの国籍を問わない傾向が強まるだろう」と話した。
韓国のバッテリー業界は先月31日に妥結した韓米関税交渉に突破口を求めている。大統領室の金容範(キム・ヨンボム)政策室長は「造船のほか、半導体、原発、二次電池、バイオなど競争力のある分野に2000億ドル規模の対米投資ファンドを作り、韓国企業が戦略的パートナーとして参加する可能性が大きい」と話した。
関税交渉直後の3日、韓国貿易保険公社はLG化学が推進する米国の正極材工場新設に10億ドル規模の金融保証を支援すると明らかにした。関税交渉後初めての投資保証事例だ。
米国が対中バッテリー包囲網を狭めていることにも注目する。米国は中国製エネルギー貯蔵装置(ESS)バッテリーに41%の関税を課しているが、来年からは関税率を58%に引き上げる計画だ。ここに中国製部品・原料の使用、中国企業との技術提携、中国資本への投資などが確認されれば補助金を支給しないなど全方向からの圧迫に乗り出している。5月基準で米国の中国製バッテリー輸入量は前年同期比30%減少した。韓国のバッテリー企業が間接的な利益を狙う部分だ。
ただ半導体と同じように米国が課す「品目別関税」は依然として変数だ。バッテリーの米国現地生産を増やしても原材料の相当量を中国などから輸入して完成品を作る構造だからだ。韓国貿易協会は▽米国政府の品目別関税調査手続きに積極的に参加する事前対応▽関税賦課時の例外手続き活用など事後対応▽米国現地化と供給網多角化戦略並行――などを解決策として提示した。
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