ラインメタルのアーミン・パッペルガーCEOが先月1日、ドイツのヴェーツェに新しく建設されたF-35戦闘機部品工場を訪れた。 [ロイター=聯合ニュース]
ブルームバーグ・ビジネスウィークは5日、「ロシアの秘密戦争とドイツCEOに対する暗殺謀議」と題した記事で、パッペルガー氏に向けう脅威の背景にロシアのウクライナ侵攻による欧州の劇的変化があると分析した。パッペルガー氏に向かった身辺の脅威は昨年4月の放火事件で実体が表れた。放火犯は当時、ドイツのヘルマンスブルクにあるパッペルガー氏の自宅に火をつけて逃走した。留守中だったパッペルガー氏は無事だった。
パッペルガー氏が要注意対象に浮上したのはパッペルガー体制下のラインメタルの破竹の勢いと関係がある。パッペルガー氏とラインメタルのジェットコースターのような過去を見ると「新たな局面」の本質が分かるというのがブルームバーグの診断だ。
ブルームバーグによればパッペルガー氏が品質管理エンジニアとしてラインメタルに入社したのは1990年で、防衛産業が欧州で冷遇されていた時期だった。ドイツはベルリンの壁の崩壊以降、国防予算を大幅に削減し、防衛産業はナチス時代の汚名の影のように見なされた。当時、ラインメタルは防衛産業よりも自動車関連事業に集中する欧州によく見られる企業だった。
チャンスは2011年、パッペルガー氏が取締役会に合流した翌年に訪れた。取締役会はロシアのモスクワ東側に大規模な陸軍訓練場を建設するのに1億2000万ユーロ(約206億円)を投入することにした。
2013年にパッペルガー氏はCEOに昇進したが、ロシア事業は難関にぶつかった。2014年にロシアがクリミア半島を強制合併すると、ラインメタルはロシアの助力者になるのかという欧州社会の非難を浴びた。結局、ラインメタルはロシアの訓練場を放棄し、2014年に防衛産業部門で900万ユーロの営業損失を出した。
ラインメタルが反転を摸索できたのは、ロシアがウクライナを侵攻した後、2022年2月にショルツ独首相が「時代転換」を宣言しながらだ。ドイツが1000億ユーロ規模の新たな国防予算を編成すると、パッペルガー氏はスペインの弾薬製造企業エクスパルを買収するなど攻撃的な投資を続けた。
パッペルガー氏は戦争中のウクライナにも手を伸ばした。2024年3月にラインメタルは弾薬、軍用車両、火薬および対空武器を生産する4カ所の工場をウクライナに建設すると公式発表した。トランプ政権2期目以降、米国への安保依存度を減らそうとする欧州の再武装政策もラインメタルに好材料だ。ラインメタルの株価はロシア・ウクライナ戦争以降18倍以上も上昇し、時価総額は約810億ユーロと欧州防衛産業企業の中で最も高いと、ブルームバーグは伝えた。2024年に98億ユーロだった年間売上高は2027年までに200億ユーロに増やすのが目標だ。
ラインメタルの好調はロシアの立場では正反対の意味を持つ。自分たちの戦争で新たな局面を迎えたパッペルガー氏とラインメタルは厄介な存在になるしかない。実際、プーチン政権は公然とラインメタルを攻撃対象に挙げてきた。ロシア大統領府のペスコフ報道官は2024年10月、ウクライナ内のラインメタル施設に対し「正当な攻撃目標」と発言した事例が代表的な例だ。
パッペルガー氏とラインメタルがロシアの公敵となった決定的なきっかけはラインメタルのウクライナ内工場設立計画だったとみられる。この発表の直後、米情報機関はロシア総偵察局(GRU)が代理人を雇用してパッペルガー氏の暗殺計画を立てているとドイツ側に知らせた。
一部ではロシアがパッペルガー氏の暗殺を通じてハイブリッド戦争の実際の恐怖を植え付けようとしているとの見方もある。軍事的な対応まではしない、あいまいな挑発で、欧州を分裂させてウクライナ支援をためらわせるという意味だ。ロシアとしては、新たな局面の象徴であるパッペルガー氏を密かに除去するのはこうした目標達成に効果的だと判断する可能性がある。
昨年7月に独ライプツィヒと英バーミンガムのDHL物流センターで発生した小包発火事件も似た脈絡で解釈できる。大きな事故にはならなかったが、こうした挑発が続けば正規戦に劣らない恐怖感が形成されるということだ。メルツ独首相が最近「我々はすでにロシアの攻撃を受けている」と述べるほど、すでに欧州はロシアのハイブリッド戦争を体感しているというのがブルームバーグの評価だ。
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