ワハハグループ(娃哈哈集団)創業者の宗慶後氏(左)と娘の宗馥莉氏。[百度 キャプチャー]
香港高裁は1日、宗慶後氏の「一人娘」であり、ワハハグループの会長でもある宗馥莉氏に対し、「香港HSBC銀行の口座資産を、裁判所の許可なしに引き出したり移動したりしてはならない」と決定した。裁判所はまた、この口座の資金の流れと残高、最近の送金履歴を含むすべての取引記録を原告側に開示するよう命じた。
この事件は、2024年2月の宗慶後氏の死後、婚外子であることが明らかになった米国籍の宗継昌氏、宗婕莉氏、宗継盛氏の兄妹3人が「宗慶後が生前に約束した信託資産を受け取っていない」として、宗馥莉氏を相手取り香港裁判所に訴訟を起こしたことから始まった。
◇婚外子女のための自筆メモと委託書の存在
原告側は、宗慶後氏が2024年1月に自筆で書いたとされるメモと委託書を証拠として提出した。メモには「婚外子女3人のために、HSBC香港口座からそれぞれ7億ドル、総額21億ドルの信託を設立するように」と指示する内容が記されていた。信託の運用原則には「元本は固定収益に投資し、利子のみを子どもたちが使用できるようにする」という条件が付けられていた。
その後に作成された委託書には、宗馥莉氏に資産の代理運用権限を付与し、この信託の設立が宗慶後氏の死後の資産承継の条件として明示されていた。宗馥莉氏が信託設立を完了した場合、それ以外の海外資産はすべて宗馥莉氏の所有とするという文言も含まれていた。宗馥莉氏はこの委託書の受領確認書にも署名したとされる。2024年5月時点で、当該口座には約17億9900万ドルの資産が預けられていた。
◇遺産協議書には「信託設立の責任は宗馥莉氏に」
宗慶後氏が死去した直後の3月、4人の子どもたちは遺産分配に関する協議書を締結した。この文書には、宗慶後氏の遺言を有効と認め、宗馥莉氏に相続手続を進める権限を委任する内容が含まれていた。また、香港HSBC口座の資産をもとに、宗馥莉氏が婚外子女3人のために3つの信託を設立することにも合意していた。
しかし宗馥莉氏は信託の設立を履行しなかった。さらに2024年5月、彼女はその口座から110万ドルを引き出し、ベトナムの工場への支払いに充てたとされる。これに対して、3人の子どもたちは「約束された信託設立の義務を果たしていない」とし、香港高裁に仮処分を申請し、今回それが認められた。
この資産が信託設立に活用されるべきか、それとも宗馥莉氏が単独で相続できるかは、現在杭州市中級人民法院で審理中の本案訴訟の結果によって決まる見通しだ。
非上場企業であるワハハグループの現在の資産規模は約7000億円に達する。そのうち国有持分の割合が46%に達することを考慮すると、宗慶後氏の海外資産に法人資産が入っている場合、横領の可能性もあるとの指摘もある。宗馥莉氏は現在ワハハグループの会長職にあり、今後ワハハの海外資産や支配構造全体に関する追加訴訟に発展する可能性もある。現在杭州市政府は専門チームを編成し、ワハハグループに対して全面的な調査を開始している。
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