韓国の尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領と金建希(キム・ゴンヒ)夫人が2022年6月29日(現地時間)、スペイン・マドリード市内のホテルで開かれた在外同胞との夕食懇談会に出席している。[写真 大統領室写真記者団、ネックレス写真はヴァンクリーフ&アーペルのホームページ]
このネックレスは、金建希氏が2022年6月29日にスペイン・マドリードで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議の際、在外同胞との夕食会の時に着用したものだ。当時、正規品の市場価格は約6200万ウォン(約664万円)にのぼり、国内では尹錫悦(ユン・ソクヨル)前大統領の財産申告漏れ疑惑が持ち上がっていた。
29日、韓国法曹界によると、特検チームはヴァンクリーフ&アーペルの店舗で鑑定を受けた結果、該当のネックレスが模造品であると結論付けたという。正規品にあるべき固有のシリアル番号もなかったという。金建希氏側も、ネックレスが押収された際、「尹前大統領が当選する前に購入した模造品だ」と主張した。現行の商標法上、偽ブランド品を購入した者は処罰できない。
特検チームは、押収物が模造品であったとはいえ、過去3年間にいわゆる「正規品とのすり替え」、すなわち証拠隠滅が行われた可能性があると見て捜査している。兄のキム・ジヌ氏が正規品を別の場所に隠し、模造品をハンさんの家に置いたという疑いだ。特検チームはキム・ジヌ氏の親族から「12月3日の非常戒厳以降、キム・ジヌ氏がネックレスなどをハンさんの家に移動させた」との証言を得た。前日、特検チームに出頭したキム氏は、家の内装工事のためネックレスを義母宅に移したと主張したという。
このネックレスを巡る疑惑は2022年8月に初めて提起された。公職者倫理法では、1品あたり500万ウォンを超える宝飾品は申告するよう規定されているが、尹前大統領は大統領選期間や就任後にネックレスを申告していなかったためだ。共に民主党は、財産申告漏れを理由に、尹前大統領を公職選挙法上の虚偽事実公表の疑いで告発した。当時、金建希氏側は「現地で借りたものなので財産申告漏れには該当しない」と説明した。しかし、今年5月、金建希氏側は検察に対する書面陳述で「模造品である」と主張を変えた。
このネックレスは別の請託疑惑事件ともつながっている。元統一教会世界本部長・ユン氏(48)が、コンジン法師ことチョン・ソンベ氏(64)に「金建希氏に貸すのではなく使ってもらえ」と言ってネックレスを渡したという疑惑がある。特検チームは、統一教会側がこのネックレスと、2000万ウォン相当のシャネルのバッグ2個などを金建希氏への請託用の贈り物として渡し、カンボジアでの政府開発援助(ODA)など統一教会側の懸案事業に関して請託を行ったのではないかと疑っている。
共に民主党のキム・ヒョンジョン院内報道官は29日、「NATO首脳会議に韓国を代表して出席しながら、偽物のネックレスを借りて着用したという主張にはあきれるばかりだ」とコメントした。さらに「罪を免れるためにうそをつき、韓国の品格まで貶めた行為も含め、より重く処罰されるべきだ」と主張した。
また、ハンさんの自宅からは数十億ウォン台で取引される李禹煥(イ・ウファン)画伯の『From Point』シリーズの1点と正規鑑定書も押収された。このシリーズは李氏が1970年代初めから発表してきた作品で、2012年には1点がオークションで24億ウォンで落札され、2021年には22億ウォンで売れたこともある。特検チームは国庫損失の容疑に加え、贈収賄容疑も記載された捜索・押収令状を裁判所から発付を受け、この絵画を押収した。特検チームは、この絵が金建希氏への賄賂だった可能性があるとみて、作品がハンさんの家に保管されることになった経緯などを確認している。金建希氏の家族側は、この作品は金建希氏の所有物ではないとの立場を示している。
一方、「殉職海兵隊」特検チーム(特別検察官イ・ミョンヒョン)は、趙太庸(チョ・テヨン)前国家安保室長を職権乱用の容疑で被疑者として呼び、取り調べを行った。
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