李在明大統領は29日午前、ソウル竜山大統領室庁舎で国務会議を開いた。この日の国務会議は李大統領の指示で1時間20分ほどKTVで生中継された。 [写真 大統領室写真記者団]
李大統領は「ポスコE&Cという会社で今年に入って5件目(実際は4件目)の労災死亡事故が発生したと聞いた」と指摘した。前日、ポスコE&Cが施工する慶南の咸陽(ハムヤン)蔚山(ウルサン)高速道路宜寧(ウィリョン)IC工事現場で60代の労働者が穿孔機に挟まって死亡した事件を取り上げたのだ。ポスコE&Cの事業場では1月と4月にも計3件の墜落・崩壊事故が発生し、計3人が死亡している。
李大統領は「同じ場所で同じ事故が発生して死亡するのは十分に予想できること」とし「予想できることを予防せず事故が発生するのは結局、死を容認することだ。きつく言えば法律的用語で『未必の故意による殺人』ではないのか」と述べた。
李大統領と国務委員は1時間半ほど労災対策討論をした。李大統領が診断した労災の原因は「お金」(企業の費用削減)であり、解決策も「お金」(経済的不利益)だった。
李大統領は「産業の安全に関する基準をすべて法に定めている。例えば、閉鎖空間に入る時には必ず何をするべきかが定められているが、これを守らないため事故が発生する」とし「守らなかった理由はほとんどが費用のため」と指摘した。
鄭成湖(チョン・ソンホ)法務部長官が23人の死者が出たアリセル工場火災事故について「代表に懲役20年が求刑された」と報告すると、李大統領は「(死亡者1人あたり刑量が)交通事故の処理と比べてそれほど厳しくない」と指摘した。李大統領は「刑事処罰は決定的な手段にならないようだ」とし「同じ現場で、同じ原因で、同じように事故が発生するのは故意に近いが、『懲罰賠償』導入を考慮してみる必要がある」と述べた。
◆大統領の叱責から7時間後…ポスコE&C「すべての現場作業を中断」
懲罰的損害賠償制とは、特定の不法行為に対して実際の損害額を超過する賠償額を科す制度をいう。李大統領は金栄訓(キム・ヨンフン)雇用労働部長官に「労災事故が減らなければ本当に職を賭けるべき」と話し、金長官は「そのようにする」と答えた。
労災発生企業に対する金融規制にも話は及んだ。金秉煥(キム・ビョンファン)金融委員長が上場企業のESG(環境・社会・ガバナンス)評価時に重大災害発生履歴を厳格に反映する案を報告すると、李大統領は「労災死亡事故が繰り返され、常習的に発生するのなら、最初からそれを(ESG評価を)何度か公示し、株価が暴落するようにする」と話した。
この日の李大統領の発言をめぐり、政界と財界ではさまざまな解釈が出てきた。与党の関係者は「李大統領は城南(ソンナム)市長、京畿道(キョンギド)知事当時からこのような方法を使った」とし「強力な処罰を予告することで問題を解決する方法」と説明した。
逆に財界では「企業取り締まり」との見方が出てきた。特に黄色い封筒法や商法改正をめぐり企業が不満を提起した直後という時点に注目した。財界関係者は「企業の立場ではいつ自分たちが標的になるか恐れる雰囲気」とし「李在明政権の発足後、ある程度は予想していた部分」と話した。李大統領が指定したポスコE&Cのチョン・ヒミン代表取締役はこの日午後5時ごろ、仁川(インチョン)松島(ソンド)社屋で謝罪の記者会見を開き、「すべての現場で直ちに作業を中断した。安全が確実に確認されるまでは作業を無期限中止することにした」と述べた。
この日の国務会議では、相互関税猶予期限(来月1日)を控えて韓米通商交渉が難航しているにもかかわらず、関連イシューは一度も言及されなかった。政界では、李大統領の労災関連発言は通商交渉から関心をそらすためという見方も出てきたが、大統領室の関係者は「大統領が直接言及しないのも戦略的判断」とし「最終段階に必要なら直接言及するはず」と伝えた。
一方、李大統領は国務会議に初めて出席した安圭佰(アン・ギュベク)国防部長官に向け「(国防日報が)国防部長官が述べた就任の辞を編集し、内乱への言及はすべて抜いたと聞いた」とし「紀綱を正さなければいけないようだ。深刻だ」と話した。
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