シャオミの社員は今年の販売目標を年初の３０万台から３５万台に増やしたと誇らしげに話した。スーパーファクトリーの最大生産能力である１時間当たり４０台を２４時間３６５日稼動しなければ生産できない数だ。いまでも生産ラインでは７６秒当たり１台が出庫されると付け加えた。

シャオミは３月に女子大生３人が犠牲になった事故の衝撃を、６月２６日のスポーツ用多目的車（ＳＵＶ）モデル「ＹＵ７」の発売成功により克服した。記者がシャオミのＥＶアプリケーションで基本仕様２５万３５００元のモデルを注文すると、１年後の５７～６０週間後の引き渡しが案内されるほど人気が爆発している。スーパーファクトリーは抽選に当選した熱烈ファン層の顧客を対象に１日５００人、月１万人を招いてシャオミのファン心理を高めている。


シャオミＥＶの開始にも米国の圧力があった。２０２１年１月にシャオミは米国防総省の「中国軍事会社」リストに含まれた。５月にリストから除外されたが、いつでもチップとシステム供給が中断に追い込まれる恐れがあると懸念した雷会長はＥＶに目を向けた。雷会長が直接６人で研究チームを構成し、１０都市を訪問して専門家２００人にインタビューした。だれもが反対したが、雷会長が理事会に報告した結論は違った。「スマートＥＶは大勢だ。ＥＶは勝者独占できるものであり、世界５位以内入れればグループは生き残れる」。理事会は激論の末に雷会長が直接チームを率いるという条件で支持した。


雷会長はスポーツセダンで勝負した。テスラのモデルＳ、ポルシェの「タイカン」と似ているという批判にも彼の賭けは的中した。ＳＵ７の開発に３４００人のエンジニアを投じた。現在エンジニアの規模は５０００～６０００人。大々的なリストラと離合集散を控えた中国の電気自動車市場で雷会長は技術で生き残るという覚悟だ。中国経済紙の財新は「シャオミの市場価値が今後『アップル＋テスラ』の１０分の１水準になるだろう」と楽観した。

スーパーファクトリーで確認したシャオミの革新は驚くほどだった。「大陸の失敗」とこき下ろされていた格安携帯電話メーカーの姿は痕跡をなくして久しかった。英エコノミストは２１日、「この１０年間に数十億ドルを投じながら独自のＥＶ製造をあきらめたアップルの偉業をシャオミがやり遂げた」と評価した。

シャオミはいまや中国を超えて世界市場を狙っている。すでに世界３位に上り詰めたスマートフォン収益の半分はインドとインドネシアなどグローバルサウスから生み出されている。今後数年の間に海外で１万カ所に電気自動車販売店をオープンする計画だ。新しい事業も準備中だ。独自のヒューマノイド「サイバーワン」を開発した。５月には独自開発した３ナノメートルチップも公開した。

１６日に北京の記者会見場で会ったジェンスン・フアンＣＥＯはこのように話した。「私も雷軍のファンだ。シャオミは驚くほどだ。スマートフォンから自動車までその間にあるすべてのものを作り出した奇跡のような会社だ」。


「大陸の失敗」シャオミの工場に人はいなくても…７６秒に１台電気自動車生産（１）