中国百度の第6世代ロボタクシー「RT6」。[写真 百度]
ところが出口の20メートルほど手前で、右車線の2台の車の間にすき間ができると、RT6は突然ハンドルを切って割り込んだ。まるで急ぎの用事がある運転手のように、列を悠々と追い越しながら隙を見て「割り込んだ」のだ。後部座席に乗っていた百度関係者と記者たちは驚いて顔を見合わせた。違法ではなかったが、“やんちゃドライバー”の運転だった。百度の関係者は「このような運転をするのは初めて見た。よく通る道なので、状況を見て自己判断したのだろう」と語った。
◇「バカタクシー」、3年で「やんちゃ運転」まで習得
2022年に初めて武漢の道路に投入された当初、あまりにも防御的でのろのろとした走りから「バカタクシー」と呼ばれていたロボタクシーが、わずか数年で目覚ましい進化を遂げたことを示す一幕だった。百度の独自分析によれば、RT6の事故回避能力や安全性は人間の14倍の水準という。さらに今では、法律に違反しない範囲で、より早く目的地に到達するために「やんちゃ運転」まで体得し、その効率性も人間と変わらないレベルに進化している。武漢で出会ったタクシー運転手たちは「もう“バカタクシー”ではない。運転席を見なければロボタクシーと気づかないことも多い」と語った。人口1300万人を超え、複数のトンネルや高架道路が張り巡らされ、信号を守らない自転車・バイク・歩行者も多い武漢で、数年間の走行データを蓄積した成果が実を結んでいるのだ。
中国の自動運転技術の進化スピードは、このように爆発的だ。業界ではすでに、百度がグローバル1位の自動運転企業である米国のウェイモ(Google)を超えたかもしれないとの評価まで出ている。とりわけ武漢はロボタクシーが最も普及した、自動運転の中心都市だ。百度だけで400台余りのロボタクシーを運用している。
◇「“生まれながらの”無人車」を作った百度、韓国でも特許を多数取得
同日、百度の研究・開発拠点である「武漢アポロパーク」と無人バッテリーステーションも訪問した。百度がRT6の試乗体験を許可し、アポロパーク内部を海外メディアに公開したのは今回が初めてだ。2023年10月に総面積5000平方メートル規模で設立されたアポロパークには、管制センター、試験走行場、オフィスなどがあり、1階には第1世代から第6世代(RT6)のロボタクシーやコンセプトカーが展示されていた。
百度は2013年、自動運転事業に参入し、ドイツBMWと提携して第1世代のロボタクシーを生産した。その後、改良を重ね、2022年5月に武漢の一般道路にロボタクシーを投入した。第5世代までは既存の量産車に自動運転部品を取り付けていたため、車体上部にツノのようなものが飛び出た形をしていた。しかし最新の第6世代では滑らかなデザインに変わった。設計段階から百度が主導した、自動運転専用車だからだ。その結果、生産コストも前世代に比べ50%以上削減された。商用化に向けた大きなハードルを越えたといえる。
展示車両の向かいの壁一面には白いタイルが並び、それぞれに自動運転関連の特許が刻まれていた。百度の関係者は「関連特許だけで5600件以上取得しており、これが自動運転分野で先行できる背景になっている」と語った。その「特許の壁」には、韓国語も随所に見られた。百度が韓国で取得した特許だ。共に民主党の金元二(キム・ウォニ)議員室が特許庁から提出を受けた資料によると、百度は過去6年間で韓国で114件の自動運転関連特許を登録している。これは現代自動車グループの自動運転系列会社「42dot(フォーティトゥドット)」の85件より多い数だ。
続いて訪れた無人バッテリーステーションには、10台以上のRT6が並んでいた。スタッフはいたが、自ら動くことはなかった。車両が自動で順番を待ち、順番が来るとステーションに進入し、所定の位置に停まると、床の機械が自動でバッテリーを交換した。待ち列は素早く進み、約460キロメートルを走行可能な満充電バッテリーを装着して出発するまでの所要時間は、わずか4分だった。
◇累積走行距離1億7000万キロメートル、海外進出も視野に
武漢で無人充電やタクシーサービスなどを網羅する自動運転エコシステム構築に成功した百度は、中国および香港など世界15都市で累積1億7000万キロメートル以上の自動運転データを蓄積し、1100万件以上のロボタクシーサービスを提供してきた。2025年1ー3月期だけで、前年同期比75%増の140万件の運行を達成した。今後はデータの蓄積速度もさらに加速すると見込まれている。
さらに中国を越えて、海外市場への関心も高めている。今年3月には、ドバイやアブダビなど中東へのサービス拡張計画を発表した。韓国ではカカオモビリティなどとの協業を検討している。
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