武漢市にある自動運転車メーカー「極景智能」の生産施設内部の様子。出荷を目前に控えた無人配送車がずらりと並んでいる。同社は無人配送車だけでなく、冷凍車・清掃車・散水車などの特殊目的車両も生産している。ユン・ジョンミン記者
3つ目は、歴史があり細かく張り巡らされた自動車供給網である。中国三大自動車ブランドの一つである東風汽車の本社や、東風ホンダとルノーなどの生産拠点が集中していて、武漢は「中国のデトロイト」とも呼ばれる。実際、市内のあちこちに世界中の自動車ブランドの店舗が並ぶ「自動車通り」があり、産業団地には自動車関連企業がひしめいている。任氏は「自動車企業が多いため関連データも豊富で、関連産業である第5世代通信やアルゴリズム企業も多い。また地域内の理工系人材も多く採用できるため、理論と実務経験が“ミックス”した状況が実現している」と語った。
最後に、市民の高い受容性も背景にある。政府計画に積極的に協力するという中国特有の事情もあるが、コロナ禍によって都市が完全に停止したという苦い経験の影響も無視できない。失墜した都市経済と地位を再び取り戻すためにも、自動運転技術を積極的に受け入れ、育てるべきだという切迫感が生まれた。あるタクシー運転手は「都市も自宅も完全に封鎖された記憶が生々しい。経済的にも甚大な打撃を受けた。少し不便でも新しい産業を育てなければ危機は乗り越えられないという考えが強い」と語った。
◇人口・環境がほぼ同じのソウル、完全無人タクシーは「ゼロ」
一方、人口と経済規模の両方で武漢〔昨年基準:約1300万人、403兆ウォン(約42兆円)〕と大きな差がないソウル(約960万人、472兆ウォン)では、現在3台のロボタクシーが安全要員を同乗させた状態で運行しているのみだ。完全無人のロボタクシーは1台もなく、運転席を空けた状態で試験区域を走っている車は1台にすぎない。複雑な道路環境、経済力やインフラの整備レベル、グローバル先端自動車メーカー(現代自動車)とIT大手企業、優れた大学を有している点など、共通点は多いが、自動運転を受け入れる速さと深さは天と地の差だ。自動運転業界の関係者は「韓国は技術的に100点満点に近づかなければならないという考えで規制してきた。しかし60点でも安全に運行でき、実際に走りながら間違いを修正してこそ最終的に100点になれる。中国はそれを実行したが、韓国はできなかった」と話した。
AIロボタクシー400台が走る中国武漢、人口がほぼ同じのソウルにはゼロ(1)
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