米国政治学会(APSA)会長を務めるイ・テグ(米国名テク・リー)ハーバード大客員教授 [写真 ハーバード大]
これに先立ちイ会長はIPSAソウル総会閉幕日の16日、禹元植(ウ・ウォンシク)国会議長が出席したラウンドテーブルで「民主主義崩壊とポピュリズムジレンマ」をテーマに演説した。イ会長はトランプ米大統領の統治方式を「競争的権威主義」(competitive authoritarianism、外形は民主主義でも実質的には権威主義的な歪曲現象)と診断し、「市民の抵抗運動で大統領を2度弾劾した韓国の事例が競争的な権威主義を克服する誠実なポピュリズム(good populism)になる可能性がある」と話した。
馬山(マサン)出身のイ会長は幼児期に親とともに移住した米国で育った代表的な韓国系政治学者だ。2002年からUSバークレー大ロースクール政治学科教授で在職し、2022年にハーバード大客員教授に任用された。人種・民族政治、アイデンティティと不平等、世論と政治的形態、熟考・参加民主主義に関する研究にまい進してきたイ会長は昨年9月から米国政治学会長を務めている。以下は一問一答。
--トランプ大統領の「競争的権威主義」統治方式の作動の背景は。
韓国と米国は最小限の基準でともに民主国家だが、それぞれ異なる形態と歴史的経路を通じて現在に至った。韓国は1980年代後半まで権威主義国家だった歴史があり、有権者が国家権力の乱用、言論統制、政治的反対者に対する弾圧などにはるかに敏感に反応する。しかし米国は最近そのような経験がない。前回の大統領選挙で有権者がトランプ大統領のカリスマ、深刻なインフレへの懸念、現政権に対する反感ムードに容易に巻き込まれる理由だ。トランプ支持者の多数が現在彼が見せている権威主義的統治方式の速度と強度に驚いているはずだ。
--民主主義先導国の米国が民主主義の危機に直面している理由は。
長期的な経済的変化が有権者の間の怒りと挫折感を強めた。これにより政治・経済・社会制度全般に対する不信感が蔓延している。特にこうした怒りと挫折の責任を少数民族や移民者に転嫁しようという傾向が強まった。こうした傾向は結局、陰謀説や虚偽・歪曲情報の需要につながる。
--米国も政治的な両極化現象から自由でないようだ。
政治的両極化は国別に固有の要因がある。米国の場合、プライマリー(予備選挙)制度が理念的に極端な候補を選出する可能性を高める。またラテン系・アジア系・アフリカ系など少数人種の数が増え、政治的な影響力が強まり、これに脅威を感じた共和党政治家がしだいに極端な政策を採択する一種の非対称的両極化(asymmetric polarization)が表れた。
イ会長は最近、言論・科学者・司法府・大学など民主主義認識機関に向けた攻撃現象を懸念しながら「こうした攻撃は虚偽情報が氾濫する今日の民主主義の本質的価値である真実に背を向ける結果を招く」と指摘した。
--政治的両極化の解決策は。
理念の両極化が深化した民主国家の共通点は、中道層・無党層が消えていることだ。この人たちが政党と政府は自分たちの要求を満たせないと考えて失望している。結局、政府が住居費・教育費・医療サービスなど市民の基本的要求に応じる政策で信頼を回復することが最も確実な方法だ。虚偽・歪曲情報はこうした両極化と言論・学界・司法府に対する攻撃をあおる。メタ、X(旧ツイッター)、ユーチューブなど利潤を追求する巨大プラットホーム企業に対する包括的な規制システムを用意することが出発点となる可能性がある。
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