中国内モンゴル地域のレアアース鉱山。[写真 ロイター=聯合ニュース]
アップルがレアアースの採掘・加工企業であるMPマテリアルズとレアアース磁石の納品契約を結んだとウォール・ストリート・ジャーナルなどが15日に報道した。
アップルにレアアース磁石を納品することになったMPマテリアルズは事実上国営企業も同然だ。最近米国防総省が4億ドル(約595億円)相当の優先株を取得し大株主になったためだ。MPマテリアルズは米国で唯一のレアアース鉱山であるカリフォルニア州のマウンテンパス鉱山を保有している。
レアアースは米国のアキレス腱だ。トランプ政権は今年勢い良く米中貿易戦争に入ったが、中国がレアアース輸出規制に入ると足かせをかけられ勝機を逃した。世界のレアアース市場の90%を掌握した中国は4月からレアアース磁石購入者に軍事的用途と関連ない所に使われるという証明書の提出を義務づけた。このため5月にはスポーツ用多目的車(SUV)を作るフォードのシカゴ工場が1週間稼働を停止したりもした。
F35ステルス戦闘機など米国の先端武器もやはり生産に支障が出ることが予想され、米国は結局予告した関税を撤回し、半導体設計ソフトウエアと石油化学製品原料のエタンなどを中国に輸出することにした。中国がレアアース輸出を撤回する見返りだった。米国はエヌビディアの人工知能(AI)半導体「H20」チップの中国への輸出も許可した。
米国にレアアースがないわけではない。ネオジムなど17種類のレアアース資源が地下に埋蔵されており、一時は世界的なレアアース採堀地に挙げられたりもした。しかし採掘と加工作業にかかる費用面で中国に太刀打ちできず、2000年代に入り米国のレアアース関連企業は競争に押されて1社2社と消えていった。
米国のレアアース崛起の代表走者に浮上したMPマテリアルズの成長は開発途上国の企業の成長史のような印象まで与える。ヘッジファンド会社出身のジェームズ・リティンスキー氏は2017年に捨てられていたマウンテンパス鉱山を買い取ってレアアース事業に参入した。社員8人の賃金支払いにも苦労したこの会社は中国のレアアース会社の投資を受けてレアアース磁石製造に入ることができた。その後独自の処理施設を作り米国防総省の1億ドルの補助金を得て事業が本軌道に乗った。
しかし2022年に中国の過剰生産によりレアアースの国際価格が急落し、西側の鉱山企業が没落してMPマテリアルズもやはり厳しい状況に置かれた。MPマテリアルズの株価は最高値の5分の1まで落ち込んだ。
その渦中にもMPマテリアルズはレアアース採掘と加工から脱却しレアアース磁石製造企業に生まれ変わるため世界から専門家を採用し生産設備を調えた。この過程で中国企業で働いた専門家と中国の生産装備をあえて排除したという。中国の牽制を懸念してだ。
こうした努力の末にMPマテリアルズは現在テキサス州のレアアース磁石生産量を以前の3倍に増やし、追加工場を建設する予定だ。アップルに供給するためにカリフォルニア州にレアアースのリサイクルラインも作る方針だ。
しかしまだ課題も残っている。レアアースの追加確保が必要で、大規模な新規施設を作っても運営に困難が予想される。ウォール・ストリート・ジャーナルは「この会社の旅程は米国の製造企業が産業を復興するのに直面する障害物をよく示している」とした。
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