中国が2022年西海(ソヘ、黄海)暫定措置水域(PMZ)に一方的に設置した石油ボーリング設備形態の構造物。[写真 聯合ニュース]
内海は陸地に囲まれて狭い海峡を通じるだけで公海に進出できる海を意味する。一般的に無害通航権(外国船舶が沿岸国の安全を害しない条件で通過できる権利)が認められる領海とは違い、内海は陸地のように無害通航権を保証されない。つまり、中国が西海を内海化するということは中国領土が韓半島(朝鮮半島)に向かって拡大してくるということと同じだ。これが韓国安保にどのような影響を及ぼすかは問うまでもない。
もちろん西海が中国の内海という主張は、国際法上、話にもならないことだ。韓国と中国は2000年漁業協定を締結して西海で両国の排他的経済水域(EEZ)が重なる海域を暫定措置水域(PMZ)に設定し、共同管理することで合意した。PMZでは漁業以外の施設の設置や資源開発などが禁止されている。だが、2018年から中国は養殖施設という名分で鉄骨構造物をいくつか設置して論争を巻き起こした。養殖も漁業だと主張するが、いくらでも軍事用に転用できるプラットフォームだ。
韓国外交部が抗議をしてみたが、中国は聞いたふりすらしない。今年2月、韓国の海洋調査船オンヌリ号が問題の構造物を調査するために接近すると、中国は大型艦艇2隻とゴムボート3隻を動員して物理的に調査を阻止した。さらにゴムボートに乗った中国人は凶器で威嚇までしたという。このような固定構造物を繰り返し設置し、後になって一方的に西海上に中国の主権を宣言しようという下心が透けて見える。
中国はすでに南シナ海に人工島を作って内海化戦略を展開して久しい。中国が南シナ海に一方的に描いた「南海九段線」を地図で見ると、あきれるしかない。中国本土から1000キロ以上離れたインドネシア近海まで自国の領海だと言い張る勢いだ。2016年国際常設仲裁裁判所(PCA)が九段線は無効だと判決したが、中国は徹底的に無視している。国際法は力の論理の前にあまりにも無力だ。中国の西海工程は渤海湾から北京につながる政治・経済要衝地を保護するという国家戦略だ。1~2回やってみてうまくいかなければ止めるという性格でもない。たとえ習近平体制が幕を下ろすとしても後継権力が西海工程を執拗に推し進めるだろう。
日本が独島(トクド、日本名・竹島)領有権を主張するというが、韓米日協力体制が維持される限り、韓国の領土主権が実質的に脅威を受けることはない。反面、西海工程は「実際の状況」であり、徐々に増す脅威だ。独島問題に比べて百倍は深刻だ。
韓国が西海を守るには政権に関係なく長期的に一貫して断固とした態度を見せるべきだ。ひとまず中国が構造物を撤去しないなら、それに対応する位置に我々も類似の施設を設置する必要がある。中国人工島に対抗してベトナムも南シナ海に人工島を多数建設した事例を参考にしよう。また、米国・日本など国際社会と連帯して共同対応に出なければならない。海軍力の強化も必須だ。今回の補正予算で韓国政府が消費クーポンにばら撒く13兆2000億ウォンという資金があれば最新鋭イージス艦「正祖大王」を10隻も建造することができる。
何よりも西海主権を守るという国家的意志が重要だ。
ところが3日、国会が「中国の西海構造物設置糾弾決議案」を通過させる時、汎与党圏で7人も棄権票を入れた。共に民主党の金永培(キム・ヨンベ)・李奇憲( イ・ギホン)・洪起元(ホン・ギウォン)、祖国革新党の申荘植(シン・チャンシク)、進歩党孫率(ソン・ソル)・全鍾徳(チョン・ジョンドク)・尹鐘五(ユン・ジョンオ)議員だ。一般国民でもなく、国会議員がこのような考えであるとは西海主権を心配しないわけにはいかない。
キム・ジョンハ/論説委員
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