◇茶番劇でイランに最小限の名分提供

トランプ大統領が停戦合意を発表する前にイランはカタールとイラクの米軍基地２カ所にミサイル攻撃を加えた。米国がイランの核施設に対する電撃的な爆撃をしてから２日ぶりだ。


ただこの日のミサイル攻撃は茶番劇に近かった。イランはミサイル攻撃に先立ち外交ルートを通じ米国とカタールに攻撃予定をあらかじめ知らせ、米軍は砲撃が予告されたカタールの空軍基地にいた戦闘機などをあらかじめ別の場所に移した。攻撃直前に撮影された衛星写真でもこの基地はすでに空っぽだったことが確認できる。


イランは米国側の備えが終わってから１４発の弾道ミサイルを発射し、すでにその情報を知っていた米軍は基地周辺に向かった１発を除いた１３発を正確に迎撃した。

イランが発射した１４発のミサイルは米軍がＢ２ステルス爆撃機で投下したＧＢＵ５７バンカーバスターの数と同じ．イスラムの刑罰原則である「目には目を、歯には歯を」という同害報復に基づいて同じレベルで報復を加えたという最小限の名分を立てるための措置とみられる。

◇トランプ大統領「攻撃計画通知したイランに感謝」

トランプ大統領はイランの攻撃終了後「イランが攻撃計画を事前に通知し人命被害が出ないようにしたことに感謝する」と投稿した。停戦合意を引き出す過程でイランの体面を立てるための報復攻撃を容認するという事前協議がなされた可能性が大きい。

外交消息筋は「米軍が駐留する中東諸国のうちカタールとイラクは代表的な親米国。イランが中東の複数の基地のうちこの２カ所を攻撃地点に選んだこと自体が停戦協定前に相互の名分を確保するための協議があったことを意味する」と話した。

こうした過程を経た停戦案を仲裁するには自らイランの報復攻撃の標的になることを甘受したカタールが水面下で役割をしたという。

◇トランプ大統領「強権」で縫合…不安要素は持続

しかし停戦が最終成立しても火種が完全に消えたわけではない。今回の合意がバンカーバスターで核施設を直接攻撃したトランプ大統領の強権に続き、戦争の長期化が負担になる米国、イスラエル、イランの３カ国すべての損益計算が合致したためだ。

イスラエルが戦争の名分としたイランの核開発が完全に廃棄されたのかに対してはだれも確信できない。実際に一部ではイランが攻撃に先立ち通常と異なるトラックの動きを根拠にイランが濃縮ウランをあらかじめ持ち出していたという見方も出ている。

もしイランが核兵器開発を再開する動きを見せた場合、中東の火種はいつでも復活する可能性がある。それでも米国とイスラエルの立場ではイランの核心核施設を破壊するのに成功し少なくともイランの核兵器開発速度を遅らせる成果を上げたという評価を受ける。

実際にバンス米副大統領はこの日フォックスニュースとのインタビューで「濃縮ウランを持ち出した可能性」に対する質問に答えなかった。ただし「われわれの目標は濃縮燃料を核兵器に転換できる能力をなくすことだった。イランが実際に６０％の濃縮ウランを持っていても（核兵器に必要な）９０％以上に濃縮し核兵器に転換する能力はない」と強調した。


トランプ大統領の「賭け」が通じた…イスラエルとイランが条件付き停戦に突入（１）