E-7の代わりに導入が推進されるE-2Dアドバンスドホークアイ早期統制機 [写真 米海軍]
<1>米空軍、E-7早期警戒機を放棄して海軍早期警戒機で代替か
トランプ政権の2026会計年度国防予算案で、老朽化したE-3センチュリー早期警戒管制機(AEW&C)の代替機としてE-7ウェッジテイルの導入を準備している米空軍の計画が変更する可能性が高まった。米国防総省の予算案によると、E-3の代替機としてE-7ではなく米海軍が運用するE-2Dアドバンスドホークアイが提案されている。E-7は韓国空軍が運用中の「ピースアイ(Peace Eye)」と同じ機種だ。
E-2D導入の提案は、米空軍早期統制機の現在と未来に対する公聴会で、アラスカ州のリサ・モコウスキー議員(共和党)がアラスカ上空でロシアと中国の脅威に対応するのかと尋ねたことで知られた。
米空軍はロシアと中国の対空防御システムの発展でE-3、そして未来の航空機基盤システムの生存性を憂慮し、宇宙基盤監視体系への移転を準備しながら中間の格差を埋める用途としてE-7の導入を準備してきた。米空軍はボーイングと交渉してきたが、長い遅延の末、2024年8月、2028会計年度に初めて試製機2機を供給する26億ドル規模の契約を締結した。E-7の予想以上に高い価格と日程の遅延は、米国防総省が新しい代案を考慮した理由とみられる。
ヘグセス国防長官はE-7は遅い開発で費用がさらに増え「過度に高級化」した装備であり、この格差を埋めて今後の宇宙基盤ISR(情報・監視・偵察)に転換することががすべての挑戦を考慮すると最も効果的な方法の一つだと答弁した。前日に下院予算委員会で開かれた別の公聴会でヘグセス長官はE-7を現代の戦場で生存できない能力の例示として言及し、従来のプラットホームをさらに支援して現代化する広範囲な計画に言及した。
米国防総省は2026会計年度に米海軍用として5機のE-2Dを備えた部隊の予算に150億ドルを配分し、ここには追加のE-2D購買のための14億ドルも含まれている。しかし米空軍がE-2Dを導入することにしても、いくつか問題が残っている。2024年基準で米空軍が保有するE-3は16機で、はるかに小さな機体のE-2Dに変えることが可能かという能力差の懸念が提起されている。
E-3はもちろんE-7より小さいE-2Dは優秀な性能を備えるが、5人の乗務員で空母作戦環境内で運営されるよう最適化している。伝統的なAEW&Cを超え、非常に複雑な作業およびその他作業を遂行する人員が制限されることを意味する。またE-2はE-3およびE-7より航続距離が短く、速度ははるかに遅い。これは移動時間が長くなり、この航空機は現在軍が遂行する対空任務に必要なジェット機中心作戦に合わないことを意味する。
ロッキードマーティンのE-2D AN/APY-9レーダーは優れた性能を誇るが、他の多くの先端データ融合および中継システムは海軍固有のものだ。こうしたシステムは除去されたり、米空軍中心の作戦では使用されないとみられる。ほかのシステムがこれに代える可能性もあるが、統合および現場に適用するには費用と時間がかかるとみられる。
<2>米議会、武器開発拡大を目標に二重用途の工場設立を要求
2026会計年度の国防費を審議している米下院で、米国防総省が中国のグローバル製造業支配力という急速成長する脅威に対抗するため、武器の生産を迅速に拡大できるように設計された「ニ重用途(dual-use)工場ネットワーク」を構築すべきという報告書を採択した。提案者により「民間予備製造ネットワーク(CRMN)」と呼ばれる、商業用と国防用工場を結合したネットワークは、戦時人工知能(AI)道具を活用して武器を迅速に開発することができる。
報告書は、工場が平時には商業用製品を生産し、戦時には「製品転換時に資本支出なく」武器生産に迅速に転換できると説明している。資本支出は企業が物理的資産を取得、アップグレードおよび維持補修するのに使われる資金を意味する。すなわち、CRMNは「同じ日に同じ装備」を活用して人工知能基盤の金属積層製造技術を通じて潜水艦・船舶・弾薬・地上車両・航空機・宇宙船などの構造部品を生産できる能力を備えることになる。
報告書は中国のシステム迅速配備および拡大能力は米国防衛獲得システムの硬直性を浮き彫りにし、このため米国は時間と予算内でシステムを供給するのに困難があると説明した。そして米国の軍事優位を維持するために商業用AI基盤積層製造工場の導入を直ちに加速させるべきだと指摘した。
報告書は米陸軍、空軍および防衛全体の研究・開発・試験・評価アカウントから131億7000万ドル以上をCRMN設立に使用するよう提案したが、海軍に別に言及することはなかった。ヘグセス国防長官に対し、予算通過後30日以内に議会国防委員会に報告書を提出してブリーフィングを行うよう指示した。ブリーフィングには2026会計年度に最初の工場に対する資格付与方法も含めなければならない。
CRMNの概念は今年1月にネイサン・ミラー・ダイバージェントインダストリー最高経営責任者が議員らに紹介した。ミラー氏は上院軍事委で「毎年税金で数十億ドルの武器を購入するが、これは戦時だけに使用される。工場が武器という点を明確に理解するべきであり、維持補修や戦争のために追加の工場が必要な場合、その能力をいま購入しなければいけない」と述べた。
ミラー氏は「この機会逃せば、中国がグローバル小型ドローン市場とその他の多くの市場を蚕食したのと同じように4年以内にこの市場を完全に蚕食する可能性が非常に高い。我々はみんなその潜在的な悲劇的未来を避けるために注いだ努力で評価されるだろう」と強調した。
米国防総省がこの報告書によって二重用途工場を選定する場合、米国内の防衛産業生産能力は従来の主契約企業(プライム)に依存した慣行から抜け出し、幅広い生産基盤を用意できるとみられる。しかしいかなる品目が該当するかに関する明確な規定がなく、混乱も予想される。
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