韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領が4日午前、ソウル汝矣島(ヨイド)国会前で開かれた国民開票放送行事で演説している。[写真 共同取材]
しかし今、李氏には勝利を祝う余裕さえない。政権業務引継委員会もなく、今日(4日)就任してすぐに大統領職務を遂行しなければならない。外交・安保と経済が同時に危機を迎えた厳しい状況だ。米国のドナルド・トランプ大統領就任以降、韓国外交は複雑な局面に入った。中国との関係を注目する米国の立場は我々を困惑させる。在韓米軍縮小説まで出てくる中で防衛費分担金増額の圧迫が負担になる。北朝鮮軍がロシアで現代戦の経験を積んで韓米日軍事同盟はさらに緊要になった。韓半島(朝鮮半島)を取り囲む強大国間の高次方程式を解く課題が与えられた。
トランプ発関税衝撃の中で輸出が急減し、内需まで不振の経済もまた、どのように扱っていく考えだろうか。対米交渉戦略から手を離したまま、戒厳以降6カ月を無為に過ごした。大統領選候補はそれぞれ内需振興のために補正予算を約束したが、急増した国家債務が負担だ。先進国の間で主導権争いが激化している人工知能(AI)分野に追いつくという抱負は立派だが、電力供給などインフラ対策は確たるものがない。
何よりも韓国社会が病んでいる最悪の重病は日増しに深刻になる陣営葛藤だ。今回の大統領選挙もネガティブで始まり誹謗戦で終わった。政策公約は低級な攻勢の中に埋もれてしまった。選挙が終わった後、相手への深い憎しみだけが残った。激しい対立の傷を癒やす責務が新しい大統領に与えられた。
前任大統領も就任第一声で統合を強調した。しかし言葉だけだった。どの大統領も「私を支持しなかった人々にも仕える」と念を押したが、結局過激支持層の包囲から抜け出すことができなかった。統合が意志だけでは達成することができないことを物語っている。選挙過程で国民統合を約束した李氏がこのような前轍を踏まないことを期待したい。
李在明政府は1987年以降、最も強力な政府と評価される。立法権と行政権をすべて掌握した。必要な政策を速かに推進することができるという期待と過激支持者に巻きこまれて独善を突き進むという懸念が同時に出ている。「絶対権力は絶対腐敗する」という言葉が外れることを願うばかりだ。李氏が初めて持つ権限を統合に注ぐことを期待する。他の候補に票を与えた半分の有権者にも大切な国民として仕えるなら、新しい大統領の支持基盤もまた広くなる。
統合の意志を立証する最初のボタンは人事だ。まもなく行われる大統領室人事と首相・長官任命が試金石だ。野党と協力政治を成し遂げるには有能ながらも包容的な人物を国政に参加させなければならない。過激支持層と結託してネガティブを主導し、葛藤を助長した人物とは距離を置くべきだ。過去、大統領が統合に失敗した原因も結局は人事のためだ。
韓国社会の慢性的反目と対立を癒やす根本的な処方は憲法改正だ。唐突の戒厳事態や繰り返される大統領弾劾は「87年体制」が限界に直面していることを雄弁に物語っている。大統領に相次いでいる不幸のループを断ち切るためにも帝王的大統領制の終息が切実だ。李氏が改憲推進を約束し、他の候補も改憲意思を明らかにしたことから今回ほど絶好の機会もない。
李氏は前任者がことごとく失敗してきた統合の大統領に挑戦してほしい。それこそが我々が直面した社会葛藤を解消し、外交・安保・経済危機を突破する究極的な解決策になるだろう。
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