寃罪を晴らしてミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピック(五輪)への挑戦機会を回復させた韓国フィギュアのイ・ヘイン選手。五輪舞台で有終の美を飾ると覚悟を新たにしている。チャン・ジニョン記者
韓国フィギュアスケートのイ・ヘイン選手〔20・高麗(コリョ)大〕と20日、会った。1週間前の13日、大韓スケート連盟はイ・ヘインに下した選手資格停止懲戒を取り消した。
イ・ヘインは一時「キム・ヨナの後継者」と呼ばれた。これに釣り合う実力も見せていた。2023年2月、四大陸選手権で優勝した。韓国女子選手ではキム・ヨナ(34)以来のことだった。1カ月後の世界選手権大会では銀メダルを獲得した。これもキム・ヨナ以来初めてだった。
昨年5月、フィギュア韓国代表チームはイタリアに転地訓練に発った。イ・ヘインはこの訓練の途中、宿舎で未成年の後輩男性にセクハラ行為をしたという疑惑をかけられた。氷上連盟は昨年6月、イ・ヘインを資格停止3年という重い懲戒処分に処した。イ・ヘインは2年前からその後輩と恋人関係で、セクハラではないと主張した。恋愛の事実を秘密にしようとしたが、事件は本人の意志に反して大きくなるばかりだった。大韓体育会スポーツ公正委員会はイ・ヘインの話を聞こうとしなかった。イ・ヘインは悔しさを晴らそうと法廷攻防を行い、最終的に寃罪を晴らした。
イ・ヘインは「9歳の時に始めたフィギュアをこれ以上できなくなるかもしれないという思いに絶望もし、泣いてばかりいた。根拠のない誤解を受けた時は衝撃も受けた」と振り返った。母親は「ヘインが運動する時もこんなことはなかったのに、家で何度も突然倒れた」と伝えた。ファンが立ち上がって「氷上連盟の不十分な調査でイ・ヘインがセクハラ犯に仕立てあげられた」と言って、国会前でトラックデモを行った。イ・ヘインは「私を黙黙と信じてくれたファンのおかげで耐えることができた。(懲戒は)無効として処理され、これからは心の片方に埋めておいて前だけ見て進みたいと思う」と話した。
氷上連盟の懲戒効力を停止させてほしいという理解人の仮処分申請を昨年11月裁判所が認容した。裁判所の決定で選手資格を回復したイ・ヘインは3月に世界選手権に出場した。ショートプログラムで7位に入ったが、フリーでは10位で振るわなかった。それでも韓国選手で最も高い9位を記録した。イ・ヘインの活躍のおかげで韓国は来年2月に開かれるミラノ・コルティナダンペッツォ冬季オリンピック(五輪)フィギュア女子シングルに2人の選手を出場させることができることになった。代表選抜戦は今年末に開かれ、イ・ヘインも出場権に挑戦する。
選手資格を獲得したイ・ヘインは世界選手権を準備した昨年12月、後輩を教える才能寄付も行った。イ・ヘインは「(後輩を通じて)初心を取り戻した」と話した。これまでプレゼントとして受け取り、特に大切にしていた人形を嬰児院にも寄付した。受け取ることを当然と思っていた彼女にとって、周囲の支えを改めて気づくことができた1年だった。特に彼女の潔白主張を信じて後援を続け、あるいは新たに後援し始めたスポーツ用品会社と病院に対する感謝の気持ちが大きかった。
イ・ヘインは「逆説的に痛かったけれど成熟できた時間」と話した。続いて「2022年北京冬季五輪金メダル後に引退したアリサ・リュウ(20・米国)が復帰し、今回の世界選手権で優勝した」とし「ブランクがあったはずなのに技量はさらに向上していた」と話した。「ブランク」という言葉のところでイ・ヘインの声に力が入った。過去1年間の精神的苦労と今後の覚悟が声ににじみ出ていた。
イ・ヘインは「前回(北京冬季五輪)には出場権を自分の手で確保したのに代表選抜戦で3位にとどまり五輪に行けなかった」とし「ミラノ・コルティナダンペッツォ冬季五輪には必ず出場して2023年世界選手権大会の時のように高い点数(225.47点)を獲得したい」と決意を新たにした。
イ・ヘインは2025~26シーズンのショートプログラムの曲に『マイ・ウェイ』を選んだ。フランク・シナトラの原曲ではなく、英国のあるオーディション番組で挑戦して夢をかなえた無名歌手のカバー曲バージョンだ。イ・ヘインは「このように多くの困難はあったが、『私は克服してここにいる』という意味を込めた選曲」と説明した。
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