労働新聞は金正恩国務委員長が昨年12月29日に葛麻海岸観光地区で竣工したさまざまなホテルとサービス施設を見て回ったと報道した。[写真 ニュース1]
米国の北朝鮮専門メディア「38ノース」は19日、前日に元山の葛麻(カルマ)海岸観光地区一帯を撮影した衛星写真を分析した。衛星写真によると、海岸線に沿って砂浜にビーチベッドのように見えるビーチ用品などが一定間隔で並べられた姿が確認できる。
続けて38ノースは「リゾート各所で進められていた工事は終わったとみられる。特に多様な色のスライダーが設置されたウォーターパークが目に付く」という分析を出した。ただメディアは「臨時ステージや宣伝スローガンが書かれた扁額、レッドカーペットなどオープン行事を準備する動向はまだ見られない」と伝えた。
金委員長は昨年末の労働党全員会議直後の12月29日にここを訪れ、ホテルをはじめとするリゾート関連施設を視察し、今年6月にオープンして本格的に運営すると予告した。当初北朝鮮は2014年に元山明沙十里(ミョンサシムニ)一帯を観光特区に指定し、金剛山(クムガンサン)観光地区・馬息嶺(マシンニョン)スキー場と連係した複合観光団地として開発を始めた。2019年4月15日の太陽節(金日成主席誕生日)の完工を目標にしたが、制裁と新型コロナウイルス遮断に向けた国境封鎖の影響で資材需給が難しくなり完工が遅れた。
北朝鮮は新しいリゾートが入る元山が金委員長の故郷であるだけに、北朝鮮の代表的な観光地にして外貨稼ぎとともに宣伝効果まで狙うものとみられる。一説によると金委員長は元山の招待所で生まれた。1960年代に日本からの帰国船が到着したところが元山で、日本出身である金委員長の母の高英姫(コ・ヨンヒ)はかつて北朝鮮の核心階層の間で「元山宅(元山生まれの夫人の意)」と呼ばれたという。
新リゾート完工と合わせて北朝鮮は海外観光客誘致に力を入れている。北朝鮮の国営旅行会社である朝鮮国際旅行会社のチャン・ヒョンイル課長は18日、内閣機関紙の民主朝鮮に掲載されたインタビューで、「海外観光客は東海の名勝明沙十里に巨大な海岸観光地区が日増しにさらに華麗に広がっていることに驚きを示し、今後観光が進められれば訪ねる意向をみせている」と主張した。その上で「観光客を迎えるために▽案内解説文更新▽特色ある観光資源発掘▽観光日程更新▽世界的な観光傾向分析などの準備事業を進めている」と付け加えた。
北朝鮮は金日成(キム・イルソン)主席の抗日革命活動根拠地であり金正日(キム・ジョンイル)国防委員長の出生地だと主張する白頭山(ペクトゥサン)に近い三池淵(サムジヨン)でも観光インフラ構築に努めている。三池淵には2016年11月に金委員長の指示で造成された国際観光団地がある。中国国境と近い利点を生かし中国人観光客誘致を狙った。
だが2019年12月に施設が完工した直後にコロナ禍に見舞われまともに運営できなかった。北朝鮮は昨年7月からこの地域に複合型山岳観光地区、四季山岳観光地、白頭山(ペクトゥサン)観光文化地区を開発している。
このように元山葛麻海岸観光地区をはじめとする北朝鮮の観光地を外貨稼ぎの窓口とするには外国人観光客誘致がカギというのが専門家らの指摘だ。北朝鮮は友好国である中国とロシアを中心に観光客誘致に出るとみられるが、意味ある規模の集客が可能かは未知数だ。まず北朝鮮国内の交通・物流インフラが劣悪でアクセス性が落ち、長期間の酷寒期に続く厳しい寒さなども伏兵だ。
韓国統一研究院のチョン・ユソク研究委員は「外貨稼ぎに向け対北朝鮮制裁の弱点に食い込む戦略だが結局観光客誘致が問題。ロシアとウクライナの戦争後の状況に備えて外貨稼ぎ窓口を多角化しようとする戦略とみられる」と話した。
この記事を読んで…