プレゼント。ほとんどの人には誕生日や名節にやりとりするものだが、大統領には意味が全く違う。特に他の外国首脳が贈ったプレゼントは単純な好意を超え外交戦略であり両国関係の象徴を意味する。

過去米大統領が受け取ったプレゼントの種類は無尽蔵だ。米国立公文書記録管理局（ＮＡＲＡ）によると、２００８年にジョージ・Ｗ・ブッシュ大統領（当時、以下同）はオランダからインラインスケートを贈られ、２０１１年にオバマ大統領は習近平主席の署名が入った米国の国旗カラーのバスケットボールをプレゼントされた。オバマ大統領はオーストラリアからワニ攻撃保険証書も受け取ったが、もし事故が起きた場合にはミッシェル夫人に５万ドルが支給される条件だった。この証書は国立公文書記録管理局に保管中だ。


異色の動物プレゼントも多い。アイゼンハワー大統領とレーガン大統領は象の赤ちゃんを、ケネディ大統領はソ連のフルシチョフ首相から犬「プシンカ」を贈られた。１９７２年にはニクソン大統領のパット夫人がパンダの絵が入ったシガレットケースを見て「本当にかわいい」と話したところ、中国の周恩来首相がジャイアントパンダ２頭をワシントンの動物園に贈り「パンダ外交」が始まった。


こうしたプレゼントの伝統の始まりは米国建国前まで遡る。米国の初代大統領であるワシントンは就任５年前の１７８４年にスペイン国王カルロス３世からロバを贈られた。これは米国が国のアイデンティティを確立していく時期に両国間の友好関係を確かめる意図だったという。１８８０年にはビクトリア女王が北極探査船ＨＭＳレゾリュート号の木材で作った机を贈った。この机は現在も大統領の執務室で使われている。

このように大統領のプレゼントは「単純な物品を超え、両国間の信頼と友情を表現する象徴であり戦略が込められた外交の手段」（ワシントン・ポスト）であるため透明に扱わなければならない。米連邦法によると、大統領を含む連邦公職者は４８０ドルを超える海外からのプレゼントを報告しなくてはならず、私的に所蔵する場合には税金を払わなければならない。多くの高額なプレゼントは大統領図書館や国立公文書記録管理局に移管される。

最近トランプ大統領がカタール王室から贈られたボーイングＢ７４７－８型は最高額のプレゼントと記録される。航空機の価格は４億ドルに達する。トランプ大統領は退任後この航空機をトランプ大統領図書館に寄贈する予定だ。図書館に寄贈されればトランプ大統領がこれを私的に使うことができる。

ただ今回のプレゼントをめぐり一部では「法的・倫理的問題がある」（ＣＮＮ）という批判が出ている。米軍、国防総省、秘密警護局（ＳＳ）当局者も「この航空機を大統領専用機（エアフォースワン）基準に合わせるための改造作業に数年の時間と数十億ドルが必要とされるだろう。大統領在任中にこの航空機に乗るにはセキュリティ要求事項の大部分を免除しなければならない」とワシントン・ポストに明らかにした。親トランプ派からも「厳格な検討が伴わなくてはならない」（共和党ジョン・チューン上院院内代表）、「政権に大きな汚点」（極右活動家ローラ・ルーマー氏）などの批判が相次いだ。

だがホワイトハウスはわいろ授受禁止法などに違反していないと判断した。トランプ大統領も「馬鹿でなければどうしてプレゼントを断るのか。私でなく米国防総省に贈るプレゼント」としながら議論を一蹴した。