2023年上半期に開かれた党中央委員会第8期第7回全員会議拡大会議で発言する北朝鮮の金正恩国務委員長 [ニュース1]
◆連日「穀類増産闘争」…背景には中国産米の流入減少
労働新聞は15日1面に「2年間に全国的に約46万町歩の灌漑工事が終わり、約1万町歩の畑が水田に還元復旧した」とし、農村現代化事業の成果を浮き彫りにした。こうした「穀類増産闘争」強化基調は今月に入って続いている。11日には「新しい農村が次々と生じている」(1面)などと田植えの記事を前面に掲載した。これはコメ価格暴騰による民心悪化を憂慮した北朝鮮当局がそれだけコメの生産成果を促しているという意味と解釈される。
北朝鮮当局が糧穀管理法の糧政法などを改正(2022年)し、コメの販売を国家が主導するよう構造転換を進めながら、コメの生産量と価格の動向は金正恩委員長のリーダーシップとも直結する問題に浮上した。専門家らは、市場でコメ価格が上がった根本的な原因はこうした国家主導経済の無理な推進にあり、この過程で昨年は中国からのコメ輸入量まで大きく減り、急激な価格上昇につながったとみている。
統一部によると、北朝鮮の中国米輸入量は昨年約5万トンだった。前年度の23年(約28万トン)の5分の1水準に急減した。
国連食糧農業機関(FAO)が推算した北朝鮮の穀物不足分は毎年80万ー100万トンだ。これを考慮しても減少したコメの輸入量(23万トン)は少なくない。2023年の北朝鮮のコメ生産量は韓国の36%水準の177万トンだった。
中国米の輸入量が大きく減ったのは、まず北朝鮮当局が2022年2月の最高人民会議で復元を宣言した「国家唯一貿易制度」の影響が作用した可能性が高い。これは中央政府が国家貿易のすべての部門を細かく統制する制度だ。従来は企業所など下部単位で自主的に中国産穀物を個別に輸入したりしていたが、これを徹底的に掌握したことで流入量が減少した可能性がある。
また、北朝鮮軍のロシア派兵以降に本格化した中国の北朝鮮向け対応も影響を及ぼしたとみられる。中国海関総署よると、朝中貿易額は2023年の22億9500万ドルから24年には21億8000万ドル(約3180億円)に減少した。北朝鮮軍のロシア派兵以降、中国は北朝鮮の制裁迂回など不法行為を黙認しない「合法的圧力」を強化しながら、穀物だけでなく全体の貿易量が減ったということだ。
◆ロシア効果で持ちこたえるも長期持続は難しい
現在、北朝鮮が派兵に対する反対給付でロシアから小麦粉など穀物を受けているため、1990年代の苦難の行軍のような食糧危機がすぐに発生する可能性は低いというのが、専門家らの見方だ。しかし根本的に産業構造の互換性が落ちるロシアとの協力だけでは、国際社会の制裁網に包囲されて酸素呼吸器を付けている程度の北朝鮮経済に活力を吹き込むには限界がある。
最近表出している朝中間の関係回復の動きもこれと無関係でないと考えられる。金正恩委員長が習近平主席との関係改善のために先に動けば、これは無理がある地方建設、ロシア支援のための軍需物資生産強行で表れた為替レート、物価不安定を解決する側面が大きいというのが、専門家らの観測だ。
特に金正恩委員長は今年10月の北朝鮮労働党創建80周年記念日、来年初めの第9回党大会のような大型イベントを控え、穀類増産闘争と地方工場建設など経済成果に執着している。金正恩委員長が住民の生活と直結した食料、各種消費財の生産を円滑にするために結局、中国にまた近づくしかないと判断すれば、朝中間に電撃的な解氷イベントが生じる可能性も排除できない。
ただ、国家情報院は先月の国会情報委員会での報告で「(北朝鮮が)ロシア-ウクライナ戦の終戦に備えてリスクヘッジ(危険回避)レベルで中国との関係改善を図っているが、中国側の対応は持続しているため停滞状態にあるとみている」と分析した。
すでに血盟に生まれ変わった朝ロ関係を考慮すると、「ロシア効果」の影響はしばらく続くという見方もある。慶南大のイム・ウルチュル北朝鮮学科教授は「公式貿易であれ密売であれ中国市場から入る輸入量は北の経済にすぐに影響を与える」とし「ただ、現在はロシアとの関係改善、小麦粉など代替食品の需要増加などのため、コメ価格の暴騰で以前ほど北が中国に依存する要因は減少したとみられる」と説明した。
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