米中がスイスのジュネーブでの関税交渉に劇的に合意した状況で中国の怪しい動きが続いている。北京にブラジルのルラ大統領ら中南米の要人を呼び、「米国の裏庭」を攻略するような姿を見せたためだ。

中国の習近平国家主席は１３日に北京で開かれた「中国・中南米カリブ海諸国共同体フォーラム」の閣僚級会合開会式での基調演説を通じ中南米と中国のつながりを強調した。その上で「関税戦争と貿易戦争に勝者はいない。いじめはかえって自身を孤立させるだけ」としながら米国を猛非難した。習主席はまた、今後３年間毎年フォーラム加盟国の政党幹部３００人を招待するともした。


この日の習主席の演説で目を引いたのは、トランプ米大統領が第２次政権発足後に返還要求を公言しているパナマ運河と関連したものだった。習主席は１９６４年に中国全域で起きたパナマ支持群衆デモを取り上げ反米世論に燃料を投じて火を付けた。習主席は「中国各地で大規模群集デモが繰り広げられ（米国からの）パナマ人民の運河主権回収に声援を送った」と話した。


習主席が言及したデモは１９６４年１月に中国全域で繰り広げられた反米デモをいう。パナマの学生らが自国の国旗掲揚運動を広げ、毛沢東主席は彼らを支持する文を人民日報に掲載した。毛主席は「中国人民はパナマ人民の側に立って米国の侵略に反対する。米帝国主義は世界人民の邪悪な敵」としながら群衆デモをあおった。その後天安門広場と天津など全国各地で１００万人規模のデモが続いた。

今回が初めてではない。習主席は２０１８年１２月のパナマ国賓訪問に先立ち送った寄稿文でも「１６００万人が中国全域で行進と集会を開き、その世代の中国人に忘れることのできない記憶となった」とした。

パナマ運河は米中が衝突する地点でもある。トランプ政権の圧力でパナマが香港系企業のハチソンに対しパナマ運河の２つの港湾の運営権を取り消してだ。その後ハチソンはパナマを含む海外港湾４３カ所を米投資会社ブラックロックに売却しようとしたが、中国当局が介入し本契約が先送りされている。

この日の開会式にはルラ大統領、コロンビアのペトロ大統領、チリのボリッチ大統領の３カ国首脳も参加した。

中国の苗得雨外務次官補は１１日の会見で「南米とカリブ海人民は自分たちの庭を建設すべきで、どこかの国の裏庭に転落してはならない」として米国を牽制した。国営新華社通信は１３日の時評で「チリ産チェリーの９０％以上が中国で販売されており、エクアドルで売れる自動車の１００台中３７台が中国製」としながら中国の経済的影響力を誇示した。