しかし予想を上回る大幅な引き下げの背景には両国の衝突が続けば米中とも回復が困難な経済的打撃を受けるだろうという共通の危機感が作用したと分析される。ベッセント長官もこの日「米中は今回の交渉を通じて共通の利害関係があるという結論を下した。どちらもデカップリング（脱同調化）を望まない」と話した。

今回の合意は両国企業を一息つかせるとみられる。米国では米中貿易戦争が続く場合「近くスーパーの陳列台が空になるだろう」というウォルマートなど米４大流通企業最高経営責任者（ＣＥＯ）の警告が出てきた。これに対し多くの米企業が米中両国の関税率引き下げ合意を待ち望んだ。米国の輸入業者は今回の合意について「輸入コスト急騰を回避し、経済全体に肯定的な影響を及ぼすだろう」と歓迎していると米ＮＢＣニュースは伝えた。


中国としては、中国の工場に対する対米輸出注文が急激に減少し景気低迷に対する懸念が圧力として作用したものとみられる。専門家らは米中貿易戦争により中国経済はすでに高い失業率、低迷する消費支出など経済的打撃を受けたと指摘した。


中国のフェンタニル関連の態度変化も今回の合意に影響を及ぼしたとみられる。ＵＳＴＲのグリア代表はこの日の記者会見でフェンタニル問題と関連し「現在としては変わったことはない」としながらも「とても肯定的な道にあり非常に建設的な対話をしている」と話した。ベッセント長官は「フェンタニル製造に使われる化学成分の秘密取引を取り締まってほしいという米国の要求に対しても両国が実質的な議論を進めた」と明らかにした。

両国は実務陣が参加する追加の貿易協議を進める計画も明らかにした。両国の合意により追加議論は中国と米国、第三国で交互に進められる見通しだ。ベッセント長官は米国の対中貿易赤字を減らす購買協定を締結する可能性を示唆したりもした。

今回の合意は両国に雪解けムードを作り、トランプ大統領と中国の習近平国家主席の首脳会談への足がかりを用意した側面もある。ワシントン・ポストは専門家の話として「両首脳が会うそのタイミングで実質的な米中関税戦争終息が可能になるかもしれない」と予想する。

この日の米中合意をめぐり今後の韓米関税交渉にも肯定的影響を与えるだろうとの期待感も出ている。西江（ソガン）大学国際大学院の許允（ホ・ユン）教授は「米国が対中関税を大幅に下げたので自由貿易協定（ＦＴＡ）締結国の韓国の立場ではさらに低い関税を要求できる名分ができたもの。中国との交渉で見せた米国の柔軟性が今後の韓米交渉で有利に作用する余地がある」と説明した。


米「スーパーの陳列台空くかと」、中「工場遊ぶことになるかと」…トランプ・習近平、９０日関税休戦（１）