トランプ米大統領 [EPA=聯合ニュース]
実際、トランプ氏は政府方針に反発したハーバード大学など国内外のさまざまな機関を攻撃している。移民抑制のための過酷な措置を導入した。メキシコ湾を「アメリカ湾」と命名した。ウクライナ戦争終息のためにウォロディミル・ゼレンスキー大統領を圧迫して北大西洋条約機構(NATO)を威嚇した。公的開発援助(ODA)支援も凍結した。3%未満だった輸入関税を25%以上に引き上げた。
トランプ支持者はこのような「衝撃と恐怖」戦略で米国が全世界に提供した援助資金を米国内で利用することができるようになり、不法移民を根絶したと評価する。同盟国に圧力を加えて交易と防衛分野のタダ乗りをやめさせ、米国の進歩エリート勢力が一般国民に強要していた「woke」価値を打破できるだろうと主張する。
だが、世論調査によると一般国民の視線は異なる。大統領選挙直前まで有権者はインフレと不法移民問題を最大イシューに挙げたが、トランプ氏はこの当座の2つの課題で世論の否定的評価を受けた。就任以降、トランプ氏の関税政策はインフレを悪化させたばかりでなく、政策不確実性と気まぐれのせいで投資も種が絶えた。米国証券市場で時価総額7兆ドル(約1000兆円)が蒸発し、債券市場も迷走した。有権者は物価上昇と退職年金損失で被害を受けている。当選直前60%まで上昇したトランプ氏の経済政策支持率は30%へと大きく落ちた。関税と投資萎縮の余波はまだ実物経済に反映される前だというのにだ。
不法移民の流入を減らすことに成功したので、関連支持率が高まなければならないはずなのに現実はそうでない。トランプ氏の攻撃的措置に世論が歓呼するわけでもない。最近世論調査で、多数の米国人がトランプ氏が誤った部分に集中していると考えている。就任100日を迎えてトランプ氏は多くの部門で攻勢を和らげているようだ。トランプ氏は連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長を解任するつもりはなく、関税攻勢を多くの部分で中断して留学生ビザの制限措置をもとに戻すという。
だが、トランプ氏が戦略を変える可能性は低そうだ。最初から変えるに値するほどの戦略も持ってなさそうだ。政策立案過程で幅広い選択肢や影響を考慮する姿も見当たらなかった。トランプ第2期の政策決定過程は一見決断力があるように見えるかもしれないが、十分な熟考を経ていない様子だ。トランプ氏はこれまで4000件以上の訴訟に巻き込まれたが、ほとんどが敗訴か合意で解決しているという事実を思い出す必要がある。
トランプ式戦略とは数多くの終着地を定めて、どこに達しても所期の目的を達成しましたと主張することだ。関税政策だけ見てもそうだ。当初は減税のための資金確保と米国の国内製造基盤の拡充、外国の関税障壁撤廃を強要するためのものだった。ところでこの3つの目的は互いに相反する。
もし関税で外国が障壁を撤廃すれば交易は拡大するので、そうなればこれらの国々が米国に製造基盤をあえて移す理由がない。したがって関税による米国政府の収入増大もない。もしトランプ氏の目的が政府収入の創出ならもっと話にならない。関税によってかえって経済と製造業の投資に足かせをかけられるためだ。したがってこの3つの目的の一つくらいはもしかしたら成功するかもしれないが、すべてを同時に達成するのは不可能だ。短期的にはかなり良い広報戦略かもしれないが、成功するためにはトランプ氏の立場でははるかに多くのものをかけるよりほかない構造だ。このような不確実性は結局、長期的に米国経済の信頼度下落と政府の支持基盤を蝕むことになるだろう。
トランプ氏が短期的には市場に敏感に反応するように見えるかもしれないが、長期的に市場に確信を与える戦略を持っていなさそうだ。市場に予測の可能性を提供することが彼の政治的利益に符合するが、トランプスタイル上、それも難しそうだ。参謀たちが彼を説得できないならば。
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マイケル・グリーン/オーストラリア・シドニー大学米国学センター所長・米戦略国際問題研究所(CSIS)キッシンジャー碩座
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