１７８７年、米フィラデルフィアで開かれた制憲議会で各州代表が憲法に署名した。その過程は容易でなかった。特に植民地時代に各州は自治政府を運営したため中央政府の必要性を感じることができなかった。

独立軍司令官ジョージ・ワシントンを補佐したアレクサンダー・ハミルトンは強力で効率的な連邦政府の必要性を力説した。軍隊組織と外交遂行に行政府が必須だと熱弁した。

躊躇する植民地の住民に独立革命を「常識」と認識させたトマス・ペインの『コモン・センス』（１７７６）のように、連邦政府を常識にした文献が『連邦主義者論集（Ｔｈｅ　Ｆｅｄｅｒａｌｉｓｔ　Ｐａｐｅｒｓ）』（１７８７ー８８）だ。ハミルトンは全体８５件のエッセイのうち５１件を作成して憲法賛成世論を形成した。ジェームズ・マディソンは２９件のエッセイで分裂の危険性を警告し、各州が協力する連邦共和国の必要性を強調した。


ハミルトンは初代財務長官（１７８９－９５）となり、米国を設計した。「強い産業基盤の上に連邦政府を中心に統合された国家」というビジョンを達成するために中央銀行を創設した。税収拡充のために特別消費税を導入し、関税引き上げも推進した。

ハミルトンの「連邦党」に対抗して地方自治を好む「民主共和党」が反発した。民主共和党の指導者トーマス・ジェファーソンはエリートが中央銀行を通じて貨幣権力を掌握する可能性を懸念した。ジェファーソンは１８０１年に大統領に就任すると、特別消費税をなくして関税引き上げも廃案にした。

民主共和党の創設に加わったマディソンはジェファーソンの国務長官となり、ナポレオンからルイジアナを買収する交渉を支援した。第４代大統領に就任したマディソンはジェファーソンの統治哲学を受け継いだ。関税も政府の税収を満たすほどであればよいと考えた。マディソンは米英戦争（１８１２ー１５）の過程で関税に対する認識が変わった。戦争が産業基盤を破壊すると、国内産業保護のための関税の必要性を認識した。輸入製品に２５％を超える関税を課して「保護関税」の歴史を開いた。

多くの経済学者に保護関税は悪いというのが常識だが、保護関税は景気沈滞で国内の産業が厳しくなるたびに亡霊のようによみがえった。２１世紀に復活したトランプの保護関税も米国製造業が直面した困難を逆説的に見せている。保護関税は保護する産業がある時に効果的だ。産業化初期の幼稚産業（ｉｎｆａｎｔ　ｉｎｄｕｓｔｒｙ）が代表的な例だ。１９世紀、米国の産業の競争力は初歩段階だった。２１世紀、米国の産業は完熟した段階のサービスとデジタル経済に進入した。トランプはまず関税でどんな産業を保護するのかから話さなければいけない。

キム・ソンジェ／米ァーマン大経営学教授／『ＦＥＤシグナル』著者