1月20日の大統領就任式で就任宣誓をしてポーズをとるトランプ米大統領 [ロイター=聯合ニュース]
トランプという人物が2度も大統領に選出されたということが、すでに米国という国が変わったことを意味する。トランプ時代に入りながら、もはや米国は信頼と尊敬を受ける超強大国でなく、依然として力が強いものの自国の利益を追求する過程で同盟や隣人を不安にして脅かす国に変わっている。製造業の競争力を失って中産層が崩壊しながら、二極化による政治的分裂が今日の米国のリーダーシップをこのような姿に変貌させた。対内的にはさらに低い所得階層に落ちるかもしれないという中間階層の不安が、対外的には中国の浮上でグローバルヘゲモニーが脅かされるという2重の「地位不安」が、米国の政治と世界での役割を変えてしまったのだ。
トランプ就任から80日余り、世界は衝撃の中でさまよっている。連日出してすぐに言葉が変わる関税政策は混乱を招いている。時代が変わったのは確実だが、いったい世界はどこに向かうのか。世界経済はどうなるのか。80日余り衝撃の中で、今は真摯に振り返ってみる時だ。
米国は依然として世界超強国、最大経済ではあるが、米国の相対的国力、経済的影響力は縮小している。世界の商品輸入全体で米国が占める比率は過去20年間に20%から13%に減少した。トランプが課すという関税を言葉通りすべて課し、他国が報復関税を課すとしても、世界貿易量は最大で10%ほどの減少にとどまると、研究機関は分析している。世界貿易量はこれまで増えてきたし、最近までの増加傾向なら4年後には現在の貿易量を十分に回復すると推算される。過去20年間の世界貿易量増加に対する寄与度で見ても、欧州と中国の寄与度に比べて米国は1/4程度にしかならない。そして関税を賦課できないサービス貿易の増加率は過去30年間で商品貿易増加率の倍を超える。また最近の米ケイトー研究所のアンケート調査によると、米国の有権者が懸念するのは自由貿易(1%)よりインフレ(40%)という回答が圧倒的に多かった。ビジネスマン出身のトランプが災難的インフレと景気萎縮を招くことはないと見るのが合理的であろう。
このように見ると、過去2、3カ月に世界を揺るがした米国の関税の脅威は、長い目で見るとその波紋が現在の恐怖ほど大きくないかもしれない。もちろんその影響を軽視することはできないが、情報化、デジタル革命、人工知能発達で世界経済の統合はすでに逆えないところに入り、結局、各国経済の成敗は依然として革新能力と技術競争力に左右されるだろう。したがって我々に重要なのは技術革新、構造調整、人材養成であり、国内産業の国際競争力を維持して輸出を多角化することだ。そしてそれが立ち上がることのできる国内政治、経済、社会的環境を築くことだ。
さらに重大で永久的な変化は国際秩序で起きている。世界はすでに大転換の時代、混乱期に入った。政府樹立以降、我々の外交安保政策の軸となった韓米同盟関係は依然として重要だが、これに対する依存一辺倒を徐々に調整していくことが必要になった。結局、世界は多極時代に入るはずで、我々の外交も実質的な多角化を追求し、自主国防能力を強化しなければならないということを時代の変化は要求している。このような外交安保戦略の転換は、長期的な視点を持って徐々に、しかし一貫して推進されなければいけない。そのためにも我々の政治、社会環境が今とは大きく変わらなければいけない。
大転換期の生存のために要求される経済、外交安保の政策的転換は国民間の包容、和解、政党間の協力と合意なしには不可能だ。いま我々が政治革新、国家支配構造の改編、国民的和解と包容、社会気風の刷新を成し遂げることができなければ、この難局の時代を乗り越えていくことはできない。いま始まった大統領選挙は、こうした時代的課題に応答する契機をつくる競争の場にならなければいけない。
趙潤済(チョ・ユンジェ)/延世大経済大学院特任教授
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