トランプ米大統領が2日、ホワイトハウスで相互関税措置について発表している。[写真 ロイター=聯合ニュース]
「世界がどのように変わるのかに対する深い無知の産物」(スタンフォード大学ダニエル・スナイダー教授)
「米国の核心戦略資産である『同盟』の価値無視」(ドン・グレイブス元商務副長官)
トランプ米大統領が2日に発表した相互関税措置に対し、米国の代表的な通商・安全保障専門家は一斉に深い懸念とともに酷評一色の診断を出した。4~5日に実施した今回の関税政策の意味と見通しを聞く中央日報の緊急インタビューでだ。
彼らは声をそろえて、今回の関税が報復と再報復の悪循環を呼び、第2次世界大戦以降に米国が80年間構築してきた規則基盤の世界的貿易秩序の崩壊をもたらしかねないと懸念する。敵国と同盟国を区別しない無差別関税は米国が堅持してきた戦略的目標とも合わず、韓国をはじめ米国が結んだ大切な同盟関係が根本から揺らぐ可能性があると予想した。トランプ大統領をめぐり「世界秩序の敵」「(牽制を受けない)狂った王」という表現まで出てきた。以下は発言要旨。
◇ドン・グレイブス「関税、米国の戦略に反する」
関税は世界貿易力学だけでなく国内産業と労働者、米国と同盟国の関係に及ぼす影響まで慎重に考慮し限定的に使うべき。しかしトランプ政権は関税を供給網、産業競争力、地政学的武器・安全保障体系などあらゆる事案を解決する手段と考えている。
無差別的な関税に米国の中小企業は最も大きな圧迫を受け、供給網の不確実性が拡大するだろう。トランプ政権が投票者の気持ちの変化を敏感に考える農業従事者は外国の報復性障壁でもっと大きな困難に陥るだろう。これは歴史的に証明された事実だ。関税は国内物価上昇、相互報復、米国企業の市場アクセス性縮小につながる。
米国が堅持してきた世界戦略の核心であり戦略的目標は同盟とパートナーを中心に強固に維持してきた国際的連合関係など世界的提携が土台になってきた。「トランプ関税」が懸念される最大の理由は、米国と協力してきた同盟国に及ぼす影響が考慮されていない点だ。これは米国の根本的戦略目標とも相反する可能性がある。
韓国はもう米国の立場では単純に親しい友人ではない。韓国は米国の戦略的目標達成に寄与できる核心技術分野の世界的リーダーになった。同時にインド太平洋地域の安全保障に責任を負うべき核心軸でもある。そんな韓国との関係を緊張に追いやる時ではなく、むしろもっと近付かなければならない時期だ。
◇マイケル・ビーマン「規則基盤秩序に亀裂」
今回発表された関税措置は第1次トランプ政権当時に内部的に水面下で議論されたものなどだ。そこである程度は予想したことだが、当時検討したものよりはるかに急進的な処理方式を選んだ点で驚いた。
今回の関税は100年前の米国の関税政策だった「保護関税」の概念を呼び起こしたものであり、貿易の構図を根本的に再設定する転換点になりかねない。1945年の第2次大戦終戦後に米国が作った規則基盤の世界貿易秩序に対する米国の約束を完全に断絶し、韓国など個別の国と結んだ自由貿易協定(FTA)論理も押し崩す危険がある。
少なくとも今後数カ月は米国が決めた「基本関税10%」が維持されるものであり、鉄鋼やアルミニウムと自動車など品目別関税も当分現行通り維持される可能性が大きい。いくつかの国は報復措置を取るだろうし、世界的関税戦争は全面的な形態に拡大すると考える。
米国の企業と消費者にも広範囲で深刻な影響を及ぼすことは明らかだ。商品価格が上がる点は疑いの余地がない。通商環境の持続的な変化により不確実性がいつになく大きい状況で、「米国製造業の復活」を叫ぶトランプ大統領の目標がまともに達成されるかは懐疑的だ。
◇ダニエル・スナイダー「トランプは狂った王」
世界貿易と経済に関するトランプ大統領の認識は1980年代の米日貿易戦争の最中だった時期に形成された。貿易相手国の不公正慣行、閉鎖的市場、非関税障壁、これによって米国の製造業が破壊されたという彼の見解はいずれもその時期に遡る。そうした意味でトランプ大統領が新しい話をしているのではない。だが今回見るように彼がはるかに急進的で極端に変貌したのは彼の誤った信念を牽制する理性の声がインナーサークルにないためだ。
19世紀的な孤立主義国家観と1980年の貿易戦争イデオロギーが結びついたトランプ大統領の観点は、世界経済が資本、労働、商品・サービスの流れをベースに世界化された構造になったという現実を無視している。この世界的貿易システムが崩れれば回復するのに数年、数十年かかるかもしれない。
同盟国に焦点を合わせたトランプ大統領の今回の攻撃は米国が作り主導してきた戦後秩序に対する広範囲な解体の試みのひとつだ。トランプ大統領個人の利害関係とイデオロギー、そして世界が実際にどのように作動するのかに対する深い無知の結果だ。トランプ大統領は米国が構築した世界秩序の敵だ。だれも狂った王に間違っていると話す意志がないようだ。米国経済、世界経済が大きな苦痛を味わって「トランプ統治」に終焉を告げるまでこの狂気を止めることができるものはなさそうだ。
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