ドナルド・トランプ米大統領が来月2日、主要国に相互関税を課すことにした。その後、トランプ氏は貿易相手国の為替レート調整を要求する可能性が高い。「関税戦争」が「為替戦争」に拡大する見通しだ。
トランプ大統領の対外政策の基本方針は「安保は会費を払い、貿易も関税を払わなければならない」ということにある。米国の対内外負債が持続できないほど増えたためだ。2024年、米連邦政府の負債は36兆2186億ドルで、国内総生産(GDP)の121.9%に達した。GDP比政府負債額が2020年に125.7%で史上最高値を記録した後に下がったが、依然として1946年(119.1%)以降で最も高い水準を記録している。さらに、2024年のGDP比対外純負債(対外資産-対外負債)も89.9%で最高値を記録した。
第1次トランプ1政権(2017~2021年)の関税は中国に集中した。中国の経済規模があまりにも急速に拡大した。2001年、中国がWTO(世界貿易機関)に加盟する際、中国の世界GDPの割合は3.9%だったが、2016年には14.7%へと急増した。同期間、米国の割合は31.2%から24.6%に減少した。2001~2016年に米国の対中貿易赤字が3兆9202億ドルに上るほど拡大した。
◇相互関税賦課で貿易戦争の加速化
米国は中国がさらに大きくなることを妨げ、対中貿易赤字を縮小するために中国から輸入する商品の関税率を大幅に引き上げた。ピーターソン国際経済研究所によると、2018年1月に3.1%だった対中関税率は、2018年9月には12.0%、2019年には21.0%に上昇した。中国を除く他国の関税率が同期間2.9%から3.0%に小幅上昇したことを考慮すれば、第1次トランプ政権の関税政策は中国に限定された。
中国も対米輸入商品に対する関税率の引き上げと人民元の切り下げで対応した。2018年1月は対米輸入商品の関税率が8.0%だったが、2019年9月には21.8%に急激に高まった。さらに、中国は2018年1月から2020年1月の間に人民元の価値を13.7%切り下げた。
その結果、米国の対中貿易赤字はむしろ拡大した。2017~2021年の米国の対中貿易赤字は年平均3597億ドルで、それ以前の5年間(3379億ドル)より218億ドル増えた。中国のGDPが世界で占める割合も2016年の14.7%から2021年には18.2%に増加した。関税は米国政府の負債を減らすことさえできなかった。2017年GDP比103.0%だった政府負債は2021年に119.9%に増加した。もちろん、2020年の新型コロナウイルス感染症で政府支出を増やさざるを得ない状況もあった。同期間、GDP比純対外債も39.9%から79.5%に急増した。
2017~2021年の年平均経済成長率は2.4%で、それ以前の5年(2012~2016年)の2.3%よりやや高くなった。一方、第1次トランプ政権の消費者物価上昇率は年平均2.3%で、その前の5年間の平均(1.3%)よりほぼ2倍程度に上がった。対中関税引き上げが貿易赤字と政府負債は減らせず物価上昇率だけを高めたということだ。
リチャード・ニクソン政権の国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏は「米国の敵になることは危険かもしれないが、米国の友人になることは致命的だ」という言葉を残した。第1次トランプ政権に米国は、敵の中国に主に高い関税を課した。しかし、第2次トランプ政権ではカナダやメキシコなどの友人に関税を課すことから始まった。
第1次トランプ政権の時に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が締結された。この協定で北米3カ国は商品・サービス・投資の自由な移動を保障しながら世界最大の自由貿易地帯を形成した。しかし、トランプ大統領は2期目の就任初日、メキシコとカナダに25%の一括関税を賦課することにした(後に適用留保)。続いて鉄鋼とアルミニウム、自動車輸入に25%の関税賦課を決定した。4月2日には相互関税措置まで拡大し、貿易戦争を加速させる見通しだ。
トランプ大統領の関税政策が米国の貿易赤字を減らし、経済の健全な成長を導くことができるのか。米国は慢性的な経常収支赤字国だ。1990~2024年の年平均経常収支赤字はGDPの3.4%だった。この3年間で3.7%とさらに増えた。米国の経常収支黒字の最も重要な理由は、貯蓄率が投資率より低いことにある。実際、2000~2024年の米国の年平均総貯蓄率は18.0%で、国内投資率21.4%より低かった。さらに、政府の財政赤字の拡大(2000~2024年、年平均4.6%)も経常収支赤字の主要要因として作用している。米国が経常収支の赤字を減らすためには、米国の家計が貯蓄を増やし、政府が支出を減らさなければならない。
◇関税賦課で消費心理が大きく萎縮
家計貯蓄率は低い水準に留まっている。1990~2021年の家計貯蓄率が年平均6.3%だったが、2020年には3.0%まで下がった。2023年と2024年にはそれぞれ4.7%と4.5%に上がったが、依然として過去の平均より低い水準だ。GDP比財政赤字比率もこの3年間は6.1%と大幅に増加した。関税だけで、米国の経常収支赤字を減らすことはできない。
このような側面で、イーロン・マスク氏が主導する政府効率化省(DOGE)の政府人材削減と構造調整は意味がある。スコット・ベッセント財務長官も「デトックス」という表現を使い、過去の政権の過度な財政支出で経済と市場が中毒になったので、その毒を中和する過程が必要だと述べた。今後、政府支出が減少し、経常収支の赤字が減少する可能性がある。
さらに、トランプ大統領の関税賦課の影響で消費心理が大きく萎縮し、期待インフレ率は高くなり、実際の消費支出が減る様相が現れている。1月の個人消費支出が前月より0.2%減少した。消費支出で69%を占めているサービス支出が増加しているが、これも雇用増加傾向鈍化と共に減る可能性が大きい。
トランプ大統領の対外政策の基本方針は「安保は会費を払い、貿易も関税を払わなければならない」ということにある。米国の対内外負債が持続できないほど増えたためだ。2024年、米連邦政府の負債は36兆2186億ドルで、国内総生産(GDP)の121.9%に達した。GDP比政府負債額が2020年に125.7%で史上最高値を記録した後に下がったが、依然として1946年(119.1%)以降で最も高い水準を記録している。さらに、2024年のGDP比対外純負債(対外資産-対外負債)も89.9%で最高値を記録した。
第1次トランプ1政権(2017~2021年)の関税は中国に集中した。中国の経済規模があまりにも急速に拡大した。2001年、中国がWTO(世界貿易機関)に加盟する際、中国の世界GDPの割合は3.9%だったが、2016年には14.7%へと急増した。同期間、米国の割合は31.2%から24.6%に減少した。2001~2016年に米国の対中貿易赤字が3兆9202億ドルに上るほど拡大した。
◇相互関税賦課で貿易戦争の加速化
米国は中国がさらに大きくなることを妨げ、対中貿易赤字を縮小するために中国から輸入する商品の関税率を大幅に引き上げた。ピーターソン国際経済研究所によると、2018年1月に3.1%だった対中関税率は、2018年9月には12.0%、2019年には21.0%に上昇した。中国を除く他国の関税率が同期間2.9%から3.0%に小幅上昇したことを考慮すれば、第1次トランプ政権の関税政策は中国に限定された。
中国も対米輸入商品に対する関税率の引き上げと人民元の切り下げで対応した。2018年1月は対米輸入商品の関税率が8.0%だったが、2019年9月には21.8%に急激に高まった。さらに、中国は2018年1月から2020年1月の間に人民元の価値を13.7%切り下げた。
その結果、米国の対中貿易赤字はむしろ拡大した。2017~2021年の米国の対中貿易赤字は年平均3597億ドルで、それ以前の5年間(3379億ドル)より218億ドル増えた。中国のGDPが世界で占める割合も2016年の14.7%から2021年には18.2%に増加した。関税は米国政府の負債を減らすことさえできなかった。2017年GDP比103.0%だった政府負債は2021年に119.9%に増加した。もちろん、2020年の新型コロナウイルス感染症で政府支出を増やさざるを得ない状況もあった。同期間、GDP比純対外債も39.9%から79.5%に急増した。
2017~2021年の年平均経済成長率は2.4%で、それ以前の5年(2012~2016年)の2.3%よりやや高くなった。一方、第1次トランプ政権の消費者物価上昇率は年平均2.3%で、その前の5年間の平均(1.3%)よりほぼ2倍程度に上がった。対中関税引き上げが貿易赤字と政府負債は減らせず物価上昇率だけを高めたということだ。
リチャード・ニクソン政権の国務長官を務めたヘンリー・キッシンジャー氏は「米国の敵になることは危険かもしれないが、米国の友人になることは致命的だ」という言葉を残した。第1次トランプ政権に米国は、敵の中国に主に高い関税を課した。しかし、第2次トランプ政権ではカナダやメキシコなどの友人に関税を課すことから始まった。
第1次トランプ政権の時に米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が締結された。この協定で北米3カ国は商品・サービス・投資の自由な移動を保障しながら世界最大の自由貿易地帯を形成した。しかし、トランプ大統領は2期目の就任初日、メキシコとカナダに25%の一括関税を賦課することにした(後に適用留保)。続いて鉄鋼とアルミニウム、自動車輸入に25%の関税賦課を決定した。4月2日には相互関税措置まで拡大し、貿易戦争を加速させる見通しだ。
トランプ大統領の関税政策が米国の貿易赤字を減らし、経済の健全な成長を導くことができるのか。米国は慢性的な経常収支赤字国だ。1990~2024年の年平均経常収支赤字はGDPの3.4%だった。この3年間で3.7%とさらに増えた。米国の経常収支黒字の最も重要な理由は、貯蓄率が投資率より低いことにある。実際、2000~2024年の米国の年平均総貯蓄率は18.0%で、国内投資率21.4%より低かった。さらに、政府の財政赤字の拡大(2000~2024年、年平均4.6%)も経常収支赤字の主要要因として作用している。米国が経常収支の赤字を減らすためには、米国の家計が貯蓄を増やし、政府が支出を減らさなければならない。
◇関税賦課で消費心理が大きく萎縮
家計貯蓄率は低い水準に留まっている。1990~2021年の家計貯蓄率が年平均6.3%だったが、2020年には3.0%まで下がった。2023年と2024年にはそれぞれ4.7%と4.5%に上がったが、依然として過去の平均より低い水準だ。GDP比財政赤字比率もこの3年間は6.1%と大幅に増加した。関税だけで、米国の経常収支赤字を減らすことはできない。
このような側面で、イーロン・マスク氏が主導する政府効率化省(DOGE)の政府人材削減と構造調整は意味がある。スコット・ベッセント財務長官も「デトックス」という表現を使い、過去の政権の過度な財政支出で経済と市場が中毒になったので、その毒を中和する過程が必要だと述べた。今後、政府支出が減少し、経常収支の赤字が減少する可能性がある。
さらに、トランプ大統領の関税賦課の影響で消費心理が大きく萎縮し、期待インフレ率は高くなり、実際の消費支出が減る様相が現れている。1月の個人消費支出が前月より0.2%減少した。消費支出で69%を占めているサービス支出が増加しているが、これも雇用増加傾向鈍化と共に減る可能性が大きい。
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