イ・ナクジュン氏(40)
視聴者満足度も82点と高かったが、生命に直結する必須医療現場の重要性と苦悩をリアルに描いたためという評価が出ている。これは原作小説『重症外傷センター:ゴールデンアワー』に負うところが大きい。原作者のイ・ナクジュン氏(40)本人が医師のうえ、ドラマ執筆前の取材にも6カ月以上かけた。イ・ナクジュン氏は幼い頃、ドラマ『白い巨塔』を見て外科医を夢見て医学部に入学した。卒業後は外科ではなく耳鼻咽喉科専門医の道を選んだが、その事情にも必須医療現場の涙がにじんでいる。
イ・ナクジュン氏は同僚医師らと共にユーチューブチャンネル「ドクターフレンズ」を運営する人気ユーチューバーでもある。25日、イ・ナクジュン氏のスタジオの一角にはフォロワー100万人を突破したユーチューバーだけがもらえる金の盾が輝いていた。なかなか解決の糸口を見つけられずにいる医療・政治の対立のためか、イ・ナクジュン氏の表情は明るくはなかった。
――ドラマと小説で重症外傷センターの苦悩とともに医師の本領が何かを喚起させたと評価されているが。
「あまりにも苦労している現場の医療陣に少しでも力になれてうれしい。バイタル(vital=生命)を扱うというその厳しさの重さを知らせたかった。私は今、商業作家になっているが、私の作品がこのように貢献できることはうれしいことだ」
イ・ナクジュン氏は医学部入学後も外科を羨望したが、断念したという。レジデント時代に目撃した「テーブル・デス(death on the table=手術中の死亡)」の衝撃のためだ。忘れ物を取りに手術室に夜遅く行ったところ、帰宅できずにテーブル・デスを自責している執刀医の後ろ姿を見たそうだ。「その日、感じた。ああ、私はバイタルを直接扱う科はできない」。それでも外科に対する負債意識は心の片隅に残り、『重症外傷センター:ゴールデンアワー』執筆の原動力となった。
――重症外傷センターのような必須医療現場の現実はどうか。
「(しばらく沈黙してから)とても大変だ。まず、みんな法的訴訟の一つや二つはされているが、どこも保護してくれずにいる。重症外傷センターの特性上、大変だが、今のような状況では(改善が)難しいのではないかと思う」
――なぜか。
「まず、(政府と政界が医療界の)現場の声にあまりにも関心がない。政府の立場では、あえて必須(医療)をもっと生かそうとはしないような雰囲気だ。重症外傷センターに来られる患者さんの予後で最も重要なのは移送速度だ。予算が後押しされなければならない部分なのに皆、関心があまりない。対話もできないし、予算は削減されるばかりだ」
――一部の場合、医療訴訟につながる。
「私がレジデントの時は、訴訟は教授が受けるものだったが、最近は力のない契約職のレジデントも同じようにされるそうだ。どうしても現場離脱率が高くならざるを得ず、後輩たちも必須医療を選択するにあたって一層迷うほかない。法的保護が必ず必要だと思ってきたが、幸い最近そういう動きがある。重症の場合なら、意図的なケースではないということを医療スタッフの過失判断に含めるなどの特別法改正発議の動きだ。急がずに医療スタッフだけでなく、社会のすべての構成員の声をじっくり聞いて意思疎通し、法制化されることを願う思いだ。急に何か啓示でも受けたかのように、ブルドーザーで一度に片付けようとせず、ゆっくり話し合わなければならない」
――皮膚科と整形外科に集中するのは事実ではないか。
「それでも必須課を選択する人は今もいる。しかし、この医師たちはお金を稼ごうと思って必須科を選ぶのではない。個人的には必須課という言葉は好きではなく、すべてが必須医療だと思うが、とにかく必須課というところに医師が行かない理由について、多くの人が金銭的なことではないかと言うではないか。それは違う。特定病院を志願しない理由は、お金に目がくらんでいるからではない」
――それでは、なぜなのか。
「必須科を選んだ人たちは『自分がただ平凡な人間として生きていける程度』ならば、そのままやる人だ。医師がいないという病院の実情を見れば、一人で24時間の当直を1週間に数日以上、時には連続して担当しなければならないなど、勤務環境が劣悪な場合がほとんどだ。人間的な生活が不可能な状況の病院なのだ。むしろ、その隣のもっと給料が少なくても、より人間的に勤務できる病院には医師が行く。現場の声をもっと聞いていただき、認識改善されればと思う。『なぜやらないのか』と問うことも必要だが、『なぜやらないのだろうか』と考えることも必要だ」
イ・ナクジュン氏は、医師の立場だけで話すのではないという点を強調した。作家として働きすぎたせいか、網膜剥離の手術を受けた患者でもあった。失明まで心配しなければならない状況を経験したイ・ナクジュン氏は「患者の立場では本人が経験している状況が最も急を要すると思うしかないという点もよく分かっている」と語った。
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