現代（ヒョンデ）自動車グループが米国に４年間で２１０億ドル（約３兆１６６７億円）を新たに投資する。現代自動車の鄭義宣（チョン・ウィソン）会長がきのう米ホワイトハウスでトランプ大統領と会ってこうした投資計画を発表した。現代自動車グループは米南部ルイジアナ州に現代製鉄の低炭素自動車鋼板製鉄所を建てる。２６日には現代自動車グループ・メタプラントアメリカ（ＨＭＧＭＡ）がジョージア州で竣工する。

この日紹介された製鉄所とジョージア電気自動車工場には合わせて１万件近い雇用が作られる。ルイジアナ製鉄所で１３００件、ジョージア工場で８５００件の雇用が創出されてだ。ジョージア工場は２０１９年にソウルで鄭会長と第１次政権当時のトランプ大統領が会った席で約束したもので、第２次トランプ政権に完工することになった。この日鄭会長はホワイトハウスで３分４０秒間にトランプ大統領と１６回にわたり目を合わせた。トランプ大統領は「米国に関税を出さなくても良い」「すごい企業だ」としながら現代自動車を称賛した。

現代自動車の相次ぐ米国行きはビジネス次元で仕方のない側面がある。現代自動車が「ポニー」で米国に進出してから３９年間に販売した自動車は３０００万台に迫る。米国内販売台数は年間１００万台に達する。このため現代自動車はジョージア工場の生産能力を２０万台増やして米国内での生産能力を年産１２０万台に拡大することにした。現代自動車の自動車販売に向けた戦略的投資だ。問題は絶えず韓国の雇用が海外に流出するという暗鬱な現実だ。


１週間先に迫った「２５％関税爆弾」施行を前面に出したトランプ大統領の一方的な「オンショオリング（米国内工場誘致）」政策は韓国の製造業空洞化をあおっている。現在富平（プピョン）と昌原（チャンウォン）で工場を運営するゼネラルモーターズ（ＧＭ）でさえ２５％の関税が現実化すれば工場撤退を検討するという話が出ている。懸念が現実になれば１万１０００人に達する労働者はどうなるのか。

こうした危機状況でも韓国は既存の雇用まで危うくなっている。現代製鉄は現代自動車水準に賃金を上げるよう求める労組のストに対抗して強硬策であるロックアウトまで断行した。軽自動車を生産する「光州（クァンジュ）型雇用」も無労組の約束を破り昨年従業員らが民主労総に加入し現代自動車の悩みが深まった。

これに加え巨大野党が週５２時間制、商法改正案、黄色い封筒法など反市場・反企業立法を浴びせており韓国はますます投資しにくい国になっている。政界はこうした規制の鎖から解かなければならない。きのうのフィナンシャル・タイムズの指摘のように米国への投資が企業の立場では必ずしも有利なだけではない。製造業基盤が弱いために熟練工確保が難しく賃金負担も大きい。韓国国内に投資環境さえしっかり作れば国内投資を増やす企業もあるだろう。政界が覚醒して腕をまくり上げる時だ。