トランプ米大統領がロシアと終戦交渉を進めている。しかしこの交渉からは欧州のNATO(北大西洋条約機構)国と戦争当事国ウクライナが抜けている。報道によると、米国はウクライナの鉱物資源収益を戦争支援の代価として要求した。ロシアが占領した領土をロシアに譲渡するだけでなく、ウクライナのNATO加盟も認めないという。これを歓迎するロシアは欧州NATO軍のウクライナ駐留にも反対する。ウクライナの涙ぐましい犠牲にもかかわらず、米国は戦争の終結をなぜこのように急ぐのか。韓半島(朝鮮半島)にはどのような影響を及ぼすのか。
トランプ大統領は利益と戦略という観点で動いている。経済的利益を重視して米国を中心に判断するトランプ大統領は、米国の税金が大規模に投入される戦争を迅速に終わらせることに成功したとして自らの業績を有権者に誇示しようとする。さらに戦争を終結してこそ中国との覇権競争に集中できるという戦略的な考慮をしている。戦争のために西側とロシアの関係が遠ざかり、その結果、中国に圧力を加えることがはるかに難しくなったと判断し、中ロを分離しようとする。そのような雰囲気を見せる会議に出席したことがあった。米国の代表的な学者とシンクタンク代表が発表する会議だった。ある発表者が今はウクライナと中東から米国が迅速に抜け出して中国への対応に全力を注ぐべき時だと強調すると、別の専門家はそうすれば世界の秩序が揺らぐと批判した。このように世界秩序維持派と米中競争重視派のうちトランプ大統領は後者に属する。
こうした形の戦争終結が米国の中国対応に役立つかは未知数だ。中ロの密着をある程度制御できるという点ではそうかもしれない。しかし同盟国の対米信頼度が弱まるという点ではマイナスだ。欧州のNATO国は戦争がロシアの勝利で終わればプーチン大統領の次の侵攻対象は自分たちの中の一つだと信じている。中国攻略に米国が参加を要求しても欧州は中国との経済関係が重要だとして消極的に臨む可能性がある。米国と欧州の葛藤が深まれば、米国の中国牽制に大きな障害が生じる。下手するとNATOの弱化で世界秩序を支えてきた民主主義陣営が自ら分裂することも考えられる。中国はこうした状況を台湾統一の好機として利用するかもしれない。
韓半島にはどのような影響を及ぼすだろうか。我々と友邦にとって最善のシナリオは、戦争が早期に終結しながらもロシアの完勝で終わらないことだ。そうしてこそ朝ロ関係が密着から分離に転換する可能性が高まり、北朝鮮が非核化交渉に出てくるよう圧力を加えることができる。戦争の早期終結は追加の北朝鮮軍派遣とロシアの対北朝鮮経済支援および先端軍事技術提供を防ぐことができる。しかしロシアの完勝で終結するならば問題が残る。朝ロを切り離すのが難しくなるからだ。ロシアが北朝鮮勤労者を大挙雇用して戦後の再建に動員すれば、対北朝鮮制裁の効果は消える。したがって終戦交渉で米国はロシアが従来の国連決議を遵守するという条項を必ず挿入し、これを防がなければいけない。米国が北朝鮮問題をどれほど重視しているのか、そしてこうした詳細内容をどれほど把握しているのかは今後表れてくるだろう。これによって韓半島状況は大きな影響を受けるはずだ。
今はもう地政学が北朝鮮非核化の勝負どころとなった。北朝鮮は経済制裁を地政学で受け返した。我々は友好国と共に地政学と北朝鮮問題を連立方程式で解かなければいけない。北朝鮮にだけ集中する戦略の有効期間は過ぎた。世界が不安定で米国も信頼できないため独自の核武装を推進すべきという主張も洞窟の中の思考だ。洞窟の外で起きる地震が洞窟を容易に崩壊させることもある時代だ。世界秩序をさらに広く眺め、我々の影響力を最大化する戦略が韓半島の発展だけでなく、北朝鮮問題の解決にも有効だ。
韓国の力は先端製造業の生産力量にある。中国を除けばこの力量が最も強い国が韓国だ。これを基盤に世界秩序の安定と米国の戦略に寄与することで、北朝鮮問題を包括的、動的に解いていく必要がある。物質的利益に集中するトランプ大統領に先端製造業と先端技術分野の韓米協力がどれほど米国に役立つかを説明することが求められる。この分野が覇権競争の核心だが、韓国なしに米国の力量だけで中国に対応するのは容易ではない。おそらくこのためにトランプ大統領の口から我々を驚かせる文言がまだ出ていないのかもしれない。特に地政学的な利害関係が重なる韓国・日本が共に米国と協力すれば、北朝鮮問題を解決できる可能性が高まる。さらに米中対立が深まらないよう韓日が空間を作れば、北朝鮮核問題の解決に中国の役割も期待することができる。
我々は先端製造業という経済的力量で地政学の波を越えなければいけない。ここで経済まで崩れれば終わりという切迫感で、与野党が共に経済を守って回復させるべきだ。北朝鮮と地政学、そして経済の連結構造を理解する複合的思考で韓半島の未来を切り開く必要がある。
キム・ビョンヨン/ソウル大経済学部教授
トランプ大統領は利益と戦略という観点で動いている。経済的利益を重視して米国を中心に判断するトランプ大統領は、米国の税金が大規模に投入される戦争を迅速に終わらせることに成功したとして自らの業績を有権者に誇示しようとする。さらに戦争を終結してこそ中国との覇権競争に集中できるという戦略的な考慮をしている。戦争のために西側とロシアの関係が遠ざかり、その結果、中国に圧力を加えることがはるかに難しくなったと判断し、中ロを分離しようとする。そのような雰囲気を見せる会議に出席したことがあった。米国の代表的な学者とシンクタンク代表が発表する会議だった。ある発表者が今はウクライナと中東から米国が迅速に抜け出して中国への対応に全力を注ぐべき時だと強調すると、別の専門家はそうすれば世界の秩序が揺らぐと批判した。このように世界秩序維持派と米中競争重視派のうちトランプ大統領は後者に属する。
こうした形の戦争終結が米国の中国対応に役立つかは未知数だ。中ロの密着をある程度制御できるという点ではそうかもしれない。しかし同盟国の対米信頼度が弱まるという点ではマイナスだ。欧州のNATO国は戦争がロシアの勝利で終わればプーチン大統領の次の侵攻対象は自分たちの中の一つだと信じている。中国攻略に米国が参加を要求しても欧州は中国との経済関係が重要だとして消極的に臨む可能性がある。米国と欧州の葛藤が深まれば、米国の中国牽制に大きな障害が生じる。下手するとNATOの弱化で世界秩序を支えてきた民主主義陣営が自ら分裂することも考えられる。中国はこうした状況を台湾統一の好機として利用するかもしれない。
韓半島にはどのような影響を及ぼすだろうか。我々と友邦にとって最善のシナリオは、戦争が早期に終結しながらもロシアの完勝で終わらないことだ。そうしてこそ朝ロ関係が密着から分離に転換する可能性が高まり、北朝鮮が非核化交渉に出てくるよう圧力を加えることができる。戦争の早期終結は追加の北朝鮮軍派遣とロシアの対北朝鮮経済支援および先端軍事技術提供を防ぐことができる。しかしロシアの完勝で終結するならば問題が残る。朝ロを切り離すのが難しくなるからだ。ロシアが北朝鮮勤労者を大挙雇用して戦後の再建に動員すれば、対北朝鮮制裁の効果は消える。したがって終戦交渉で米国はロシアが従来の国連決議を遵守するという条項を必ず挿入し、これを防がなければいけない。米国が北朝鮮問題をどれほど重視しているのか、そしてこうした詳細内容をどれほど把握しているのかは今後表れてくるだろう。これによって韓半島状況は大きな影響を受けるはずだ。
今はもう地政学が北朝鮮非核化の勝負どころとなった。北朝鮮は経済制裁を地政学で受け返した。我々は友好国と共に地政学と北朝鮮問題を連立方程式で解かなければいけない。北朝鮮にだけ集中する戦略の有効期間は過ぎた。世界が不安定で米国も信頼できないため独自の核武装を推進すべきという主張も洞窟の中の思考だ。洞窟の外で起きる地震が洞窟を容易に崩壊させることもある時代だ。世界秩序をさらに広く眺め、我々の影響力を最大化する戦略が韓半島の発展だけでなく、北朝鮮問題の解決にも有効だ。
韓国の力は先端製造業の生産力量にある。中国を除けばこの力量が最も強い国が韓国だ。これを基盤に世界秩序の安定と米国の戦略に寄与することで、北朝鮮問題を包括的、動的に解いていく必要がある。物質的利益に集中するトランプ大統領に先端製造業と先端技術分野の韓米協力がどれほど米国に役立つかを説明することが求められる。この分野が覇権競争の核心だが、韓国なしに米国の力量だけで中国に対応するのは容易ではない。おそらくこのためにトランプ大統領の口から我々を驚かせる文言がまだ出ていないのかもしれない。特に地政学的な利害関係が重なる韓国・日本が共に米国と協力すれば、北朝鮮問題を解決できる可能性が高まる。さらに米中対立が深まらないよう韓日が空間を作れば、北朝鮮核問題の解決に中国の役割も期待することができる。
我々は先端製造業という経済的力量で地政学の波を越えなければいけない。ここで経済まで崩れれば終わりという切迫感で、与野党が共に経済を守って回復させるべきだ。北朝鮮と地政学、そして経済の連結構造を理解する複合的思考で韓半島の未来を切り開く必要がある。
キム・ビョンヨン/ソウル大経済学部教授
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