韓国の黄浚局(ファン・ジュングク)国連大使 [国連ウェブTVキャプチャー]
◆米主導の決議案、結局採択
この日、安保理は米国が提案したウクライナ戦争関連の決議案の表決を実施し、賛成10票、反対0票、棄権5票で可決処理した。安保理がウクライナ戦争関連の決議を採択したのは今回が初めてだ。トランプ政権2期目が発足すると、米国が主導する決議案に中ロが手を挙げる異例の状況が演出された。
これは米国が決議案からロシアのウクライナ侵略に責任を問う部分を除いたために可能だった。ロシアと直接交渉をして早期終戦を推進するトランプ政権がロシアの立場を十分に考慮した結果だ。
欧州国家は反発した。英国・フランスなど欧州理事国は「ウクライナの主権と独立、領土保全を支持する」という内容が追加された修正案を提出した。韓国もこれに賛成したが、常任理事国ロシアの拒否権行使で否決された。
結局、ロシアの侵略を黙認する内容の米国が提出した決議案が最終採択されると、英国代表は「ロシアとウクライナを同一線上で扱ってはいけない」と反発した。フランス代表も「侵略された国(ウクライナ)が降伏することと平和が同一視されてはならない」と声を高めた。
賛成票を投じた韓国代表も発言の機会を借りて遺憾を表した。黄浚局(ファン・ジュングク)国連大使は「韓国は米国が提案した決議案に賛成票を投じたが、安保理常任理事国のロシアによる主権国家相手の侵攻を反映しなかったのは遺憾」と述べた。続いて「今回の決議採択を通じて、関連当事国が正しく、包括的に平和と安定を実現するための外交的努力をさらに加速させることを望む」と話した。決議案がロシアの侵略を黙認したのは遺憾だが、早期終戦など「平和」という大義のために賛成票を投じたという趣旨と解釈される。
◆「北朝鮮の南侵」公認した国連安保理
しかし政府が英国やフランスのように棄権したのではなく賛成したことをめぐり、今後の韓国の外交的行動半径に影響を及ぼすという懸念の声が出ている。特に韓国は北朝鮮の南侵という似た痛みを経験したことがあるという点でなおさらだ。
実際、1950年の韓国戦争(朝鮮戦争)勃発直後、国連安保理は決議82号、83号、84号などで北朝鮮の武力攻撃を「平和に対する破壊行為」と規定した。同時に北朝鮮に向けて即刻敵対行為中断と北朝鮮軍の38度線北側撤収を促した。当時、国連安保理をはじめとする国際社会が韓国戦争は北朝鮮の不法「南侵」で勃発したと公認していなければ、国連軍組織、多国籍軍事介入など国際的な支援の継続は難しかったとみられる。
昨年韓国が11年ぶりに復帰した安保理で責任ある声を出すべきという指摘が出る理由だ。安保理決議案が可決されるには9票が必要だが、今回の決議案が10票の賛成で通過したという点を考慮すると、韓国をはじめとする各理事国はキャスティングボートの役割をすることも可能だった。
また韓国は北朝鮮の対ロシア武器支援と派兵でウクライナ戦争の準当事国となった。ロシアの侵略戦争が韓国に対する直接的な安保上の脅威となり得るが、これに対する責任追及を度外視したという指摘が出ている。
◆北朝鮮問題での連携を重視したというが…
これに関して韓国外交部はこの日、「米国側の決議案は国際社会の主要懸案であるウクライナ戦争の早期終息を要求(implore)している点など我々の立場に反しない」と賛成の理由を説明した。続いて「戦争終息のための国際社会の支持と意志を集めるべき時点ということを考慮して支持した」と明らかにした。また「韓米関係と北朝鮮問題関連の韓米間の緊密な連携の重要性なども総合的に考慮した」と明らかにした。
しかし北朝鮮問題を考慮する場合、韓国がこの機会に外交的一貫性を示すべきだったという反論もある。
就任直後から北朝鮮に関心を見せてきたトランプ大統領は、今後の朝米関係の推移によっては国連舞台で北朝鮮の不法挑発にも融和的な態度を示す可能性がある。原則よりも実利に基づいて「ならず者国家」に免罪符を与えるトランプ式外交に歩調を合わせれば、韓国の安保を脅かす北朝鮮の不法行為に米国が目を閉じる場合、自らを防御する論理が貧弱になるという指摘だ。
たとえ権限代行体制とはいえ、韓国が現政権が前面に出した価値外交基調に外れる動きを見せることに対する懸念も提起される。この日の国連総会ではロシアの侵略の責任を問う決議案2件が採択されたが、韓国はここにすべて賛成票を投じた。韓国が総会で堅持した立場を安保理では表明できなかったのは遺憾という声が出ている部分だ。
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