韓国映画監督ポン・ジュノ氏「夫婦が独裁を行う時、おかしな相乗効果」…海外では「未来を見る水晶玉があるのか」と聞かれた
ⓒ 中央日報/中央日報日本語版
2025.02.21 13:03
ハリウッド映画『ミッキー17』で6年ぶりに復帰した韓国のポン・ジュノ監督と19日、ソウル汝矣島(ヨイド)コンラッドホテルで会った。英国ロンドン、独ベルリン映画祭、仏パリを経て帰国したばかりのポン監督は時差に適応するために「今日だけエスプレッソ7杯を飲んだ」と話したが、映画に関する話をするときは喜びを含んだ語調を隠しきれない様子だった。[写真 ワーナー・ブラザース・コリア]
ポン・ジュノ監督(56)にとって、ハリウッドSF『ミッキー17』(韓国で28日公開)は、「もうすぐやってくる現実」を先取りして描いた作品だ。主人公は宇宙の植民地開拓船の唯一の消耗品(エクスパンダブル)労働者のミッキー(ロバート・パティンソン扮)。宇宙の放射能に露出すると、どれだけ早く死ぬのか、氷の惑星の空気に毒性があるのかなどを調べる危険な任務を担い、死んだら体を再プリントアウトする。記憶だけそのまま保存した状態で。タイトルの数字「17」がまさに彼が再プリントアウトされた回数だ。
◇2054年に雇用契約に追い込まれた青年
文字通り「死の雇用契約」に同意した立場だから、誰も彼の苦痛を気にしない。現実社会のリスクの外注化を露骨に連想させる設定だ。ポン監督が自ら脚本を手掛け、米国原作の小説の背景を「より近い現実に導いてきた」。
だが、全般的な映画のトーンは寓話的ユーモアが漂う。青春の男女のロマンス(しかも四角関係)を展開したのもポン監督の映画では異例のこと。何より結末まで政治・社会に向けた楽観論を提示した。先立ってベルリン国際映画祭(ガラ・スペシャル部門)公開後、ハリウッドで作ったSF前作『スノーピアサー』(2013)と『オクジャ』(2017)を合わせたようだという評価が出るほどポン・ジュノ印が明確な映画だが、「前作より希望的」(ニューヨークマガジン)という反応が共存する。
◇「これまで映画の主人公に過酷…原作の中の恋に泣いた」
1980年代の軍事政権時代像を刻んだ刑事物(『殺人の追憶』)、386世代と韓米関係を隠喩した怪獣アクション(『グエムルー漢江の怪物ー』)、辛辣な階級風刺(『パラサイト 半地下の家族』)などを作ってきた社会派の巨匠にとって、どんな心境の変化だろうか。欧州(ロンドン・ベルリン・パリ)のPRの日程を終えて帰国したポン監督に19日、ソウル汝矣島(ヨイド)のホテルで会った。映画の終わりにミッキーが見る悪夢が、むしろこれまでポン・ジュノ監督の映画の中の現実的な結末らしく感じられたと言うと、「ハッピーエンドを見ても信じられなかったのか、ひどい」と冗談交じりに話を切り出したポン監督が本当の本音を打ち明けた。「これまで私の映画は現実の苦い姿を風刺していたから、主人公たちを苛酷に扱った。ミッキーにはそうしたくなかった」
損をしても笑ってばかりいるこの善良な青年がすでに17回も死んだのに、また死なせたくなかったという話だった。原作で人間の踏みにじられた尊厳を象徴する「ヒューマン・プリンティング」の概念と共に「絶対に変えたくなかった」のがまさにミッキーの愛の物語だった。最精鋭要員のガールフレンドのナーシャ(ナオミ・アッキー扮)がミッキーをどのように守るのか。これを描写した部分を読んでいる途中、涙まで流したという。
ミッキーの世界を救うのもナーシャの愛だ。「ナーシャの純粋で常識的な心と政治が食い違わないこと。そういうのが良い政治なのではないか」
◇「過去にも夫婦が独裁を行う時、おかしな相乗効果」
映画には世の中を駄目にする愛も出てくる。宇宙開拓船の独裁者マーシャル(マーク・ラファロ扮)とその妻のイルファ(トニー・コレット扮)だ。地球で失敗した政治家のマーシャルは華麗で自己顕示的だが、実は妻の操り人形に過ぎない。
「イルファ」は原作になかったキャラクターをボン監督が新たに作り出したもの。PRのために訪問する国ごとに、自国の政治家夫婦が連想されるという人が多かった。韓国でも同じだ。ポン監督が非常戒厳後、弾劾支持声明に参加したのもこのような解釈を呼び起こした。
この日「大統領選挙以前の2021年にシナリオを脱稿して撮影を2022年に終えた」と繰り返し強調したポン監督は「独裁者のキャラクターが恐ろしくも滑稽で魅力がなければならなかった。過去に夫婦が独裁を行った時、おかしな相乗効果があった」として歴史的事例を挙げた。フィリピンのマルコス夫妻、ルーマニアのチャウシェスク夫妻などだ。
英米圏ではドナルド・トランプ米大統領を連想させる映画として注目された。劇中のマーシャルが銃殺されそうになって生き残る場面が昨年の大統領選挙遊説中のトランプ暗殺未遂事件を連想させたりした。「撮影当時、マーク・ラファロと韓国・米国の政治家たちを携帯電話で見せ合いながら多くの話をしたが、いずれも過去の政治家たちだった。昨年、その事件(トランプ狙撃未遂)があった後、私たちも不思議だと言った。英国では「ポン監督の家に未来を見る水晶玉があるのか」という質問まで受けた」とポン監督は振り返った。また、「イタリアではマーシャルにムッソリーニを見ていた」とし「各国の政治的ストレスを投射して見ているようだ」と解釈した。
◇映画会社がカットしようと言ったあの場面、繰り返す政治史の悪夢に包まれ
宇宙の氷惑星の原住民「クリーパー」たちの粘り強い同族愛も浮き彫りにした。人間たちはミッキーに死に値する任務を与え、誰も罪悪感を感じないが、クリーパーたちは人間に拉致された子供を助けようと皆一緒に出てきて平和的なデモを行う。人間社会の情けない姿に備えるための設定だ。
人類の政治史で繰り返されてきた悪循環を「ダークな短編映画のように強烈な」悪夢のシーンに盛り込んだのも、「この悪夢を克服できなければ、いつでも私たちが再び(情けない姿で)座り込むかもしれないという印象を確実に残したかったからだ。スタジオ(ワーナー・ブラザース)からカットしようという意見もあったが、私が断った」とポン監督は説明した。
実際、ポン監督の政治的観点とも関わる演出だ。前日放送されたMBC(文化放送)の時事番組『視線』で「12・12軍事反乱を小学校4年生の時に体験したが、私たちの世代が一生のうちにまた戒厳令を体験するとは想像できなかった。当惑した」と述べたポン監督は20日、マーク・ラファロ、ナオミ・アッキー、スティーブン・ユァンと共に出席した来韓懇談会では「幸い日常は続き、国民は戒厳を克服した。残ったのは法的・形式的手続き」という立場を再確認した。
「韓国で映画を作ると、地下鉄の駅から出て住宅街の路地を歩く時にどんな匂いがするのか、通行人のディテールまで頭に浮かぶ。他の言語圏の舞台の作品は、調査して想像しながら作る必要がある。だからSFのように寓話的な、ちょっと抽象化したりストレートな話をしてしまっても構わないジャンルにより頼りたくなる。それがSFの面白さでもある」
◇「2054年にもシナリオ書いていそう…おかしな監督として記憶されたい」
『パラサイト 半地下の家族』のアカデミー4冠王以降の世界的巨匠という名声についてポン監督は「世界制覇という表現は車範根(チャ・ボムグン)選手、プレミアリーグ得点王の孫興慜(ソン・フンミン)選手や防弾少年団(BTS)、ロゼのような方々の方がふさわしい」と謙遜して語った。次回作は深海魚を素材にしたポン監督初のアニメーション。ソウルを背景にした実写ホラーアクション映画も準備している。
『ミッキー17』の背景である2054年、85歳の老人になった自身をこのように想像した。「『銀河鉄道999』に登場する機械本体を装着し、シナリオ作業をし続けていると思う。もしかすると184番目の映画まで……。ちょっと変な映画を作る監督としてずっと記憶に残りたい」
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