昨年9月に死去したMBCのお天気キャスター、オ・ヨアンナさんが職場内でいじめにあっていたという疑惑がふくらんだ。[インスタグラム キャプチャー]
MBCのお天気キャスターのオ・ヨアンナさんが生前に職場内いじめを訴えていたという事実が伝えられ、放送界の非正規職労働権議論に再び火が付いた。放送界は非正規職の割合が高く、非正規職の中でも雇用形態が多様な代表的な産業群だ。同様の悲劇を防ぐためには構造的な差別と無限競争体制を変えなければならないという声が出ている。
◇「法上の労働者ではない」…いじめ死角地帯の非正規職
オさんのようにフリーランスなどの地位にある非正規職労働者は職場内いじめにあっても法的に救済を受けにくいと口をそろえる。アシスタントディレクター(AD)として働いたソンさん(27)もそうだ。先輩が字幕のミスをしながら夜遅くに電話してきて「おまえのせいで間違えた」と怒ったり、夜遅くまで仕事をさせることも頻繁にあった。ADと作家を集めて他の同僚の評価をしながら「将来うまくやるには身の振り方をしっかりやるべきだ」と話したりもした。彼は「あしたから来なくていいと言われることもある状況で早退すらくびになるかと思って言えなかった。私の前でだれかをひどく怒鳴るのを日常的に見て会社に目を付けられないよう自らを律することになった」と話した。
2019年に制定された職場内いじめ禁止法は「勤労基準法上の労働者」にだけ適用される。フリーランス、期間制、派遣、請負、短期職などの割合が高い放送界では被害を受けて法的死角地帯に置かれる格好だ。フリーランスの場合、使用者(会社側)の指揮と統制を受け実質的な労働者として働いた点を立証しなければならないが、条件が難しい上に通常数カ月以上かかり断念することが多い。
2022年の放送通信委員会報告書によると、主要地上波放送局13社の非正規職構成員は9199人に達した。全勤労者数1万3827人の66%に達する数値だ。これら放送局が前年に新規補充した製作人材の64%が非正規職だった。雇用類型別ではフリーランスが32.1%で最も多く、派遣が19.2%、日雇いが15.3%、子会社が14.5%、契約職が12.5%などと続いた。
コスト削減に向け必須業務にも非正規職を拡散する慣行が続いているという指摘が出る理由だ。フリー10年目の作家キムさん(35)は「フリーランスは自由に働いて能力分だけ稼ぐことを意味するが、放送界は同じように働いてお金はもらえない。放送局の構造上、非正規職がいなくては回らないのに待遇は非正常という状況」と話した。
◇契約延長のための差別と競争…「乙」の戦場
雇用安定性が低下し契約延長など生き残りに向け差別と競争を当然視する風土ができたとの指摘が出る。フリー3年目の放送作家ユさん(26)は「業界で最も重要なのが評判だがその評判を同僚が作る。結局だれかが悪口を言われ脱落しなければ自分の食い扶持が保証されない構造で、あらゆる粗さがしとうわさが絶えない」と打ち明けた。
放送界の労働団体は、オ・ヨアンナさん事件の本質は「非正規職問題」にあると指摘した。メディア労働団体エンディングクレジットのチン・ジェヨン執行委員長は「MBCだけでなく他の放送局でも重要な業務をフリーランスに任せるケースが多いが、実質的な労働者である点が明確な場合、正規職として直接雇用したり、就業規則に申告対象範囲を拡大するなどの変化が必要だ」と話した。
働く市民研究所のキム・ジョンジン所長は「オ・ヨアンナさん1人のことを調査して終わらせるのではなく、関係官庁が合同で放送界のフリーランスの勤務環境を調査し、それにともなう勧告措置をする必要がある。これとともに非正規職も苦情処理を要求できる窓口がなければならない。放送局を評価する時に雇用実態を含む必要がある」と付け加えた。
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